多声部の聴音を考える。

PR〈景品表示法に基づく表記〉

クラシックギターのレッスンを受けていて、改めて自分には「複数の声部が聴こえていない」と思い、習っている先生との能力の差を感じました。

私自身の多声部の聴音に関して、アマチュアギターコンクールの課題曲でF.ソルのOp.31-10カンタービレを弾いていた際にはっきりと音の聴こえ方が変わったことを覚えています。

その前から、2声は聴き取れると自分では思っていたのですが、意識、努力しなくても2声が聞き取れるようになり、結果として意識すれば3声が聴こえるレベルになりました。(それでもしょぼい)

多声部を聴き取ることをこの記事で整理します。

この記事でわかること

クラシックギターにおける声部の聴音

クラシックギターは、鍵盤楽器に比べて複数の弦を同じ力で弾くことが難しく、同じ力で弾いたとしても楽器のバランスにより同じ大きさの音が出ない楽器です。

ピアノ等の鍵盤楽器であれば、鍵盤を押せば全ての声部がある程度鳴ってくれますので、初心者の頃から鳴った音を意識しやすく、耳も育ちやすいと思います。

ギターは特定の指のタッチが弱ければ、弱いor殆ど鳴っていない状態になり、そもそも聴き取ることが出来ません。

私は過去にトップレベルのアマチュアプレイヤーの演奏を聴いていて、演奏は大変素晴らしいのですが、指を怪我しており「和音の特定の声部(iで弾いた音)が全く聴こえなかった」のを目にしたことがあります。

クラシックギターは演奏において右手の小指をあまり使わないため、その他の4本の指により発音される4声まで聴き取ることが出来れば、演奏における実用性としては充分なレベルの聴音能力と言えます。

また、ギターは和音の中の声部を強弱や音色を変えて発音出来るため、案外捨てたものでない楽器と思っています。

声部を聴き取るメリット

音数に対して、最大の表現を引き出せる

音を聴いて、歌う(適切な強弱を付ける、バロックなら語る)ことにより、演奏した音の数に対して最大の表現を引き出すことが出来ます。

逆に言えば、音が聴こえていないのであればポリフォニー(多声表現)としてはその音を弾く意味はありません。
音数が多い曲を耳が未熟なプレイヤーが弾いたとしても、魅力を引き出しきれないため無駄になります。

前半で鍵盤楽器奏者は多声部の聴音が出来る耳に育ちやすいと書きました。私が見たピアノ経験のあるクラシックギター奏者は、音を聴き取って繋げて弾ける方がほとんどですが、和音の内声まで強弱を付けようという意識は薄いように思います。

和音を弾いた際に、各音ごとに強弱を付けると発音のタイミングがズレやすいというピアノの特性が理由になっていると思います。

和声感が増す

ある連続した2つの和音があったとして、それを構成する声部のひとつひとつに強弱をつけることにより、前後の和音に適切な関係が生まれます。

レッスンで教えていただいたことですが、横の動きを意識しただけで和声の表情まで磨くことができるというのは大きなメリットです。

冷静に演奏できる

多声部を聴き取るには、冷静さが必要と思います。

仮に、4声を余裕で聴き取れる方であれば、冷静でなくても聴き取りは問題ないと思いますが、クラシックギターで4声の和音を連続して弾き、完璧にコントロールするには冷静なコントロールが求められます。

声部が分離する

人前での演奏が終わった後、「どうやったら声部が独立・分離して聴こえますか?」と聴かれたことがあります。

音量や音色を変えることでも声部は分離するのですが、分離させたい声部を良く聴き、強弱を付けることでそれだけで充分にメロディは際立って聴こえます。

声部が独立して聴こえない人は、聴いていない・コントロールしていない・消音していないの何れかが該当します。

プロ奏者に近い耳で演奏できる

私は大学生でクラシックギターを始めましたが、「指さえ回ればプロと同じ演奏が出来る」と思っていました。(そう信じたかったのです)

「音程と多声部を聴きとる耳」が無ければプロと同じ演奏は出来ません。

耳を鍛えなければ、アマチュアはずっとアマチュアのままです。音楽を長く続けていて指は回るけれど、やっぱりプロ奏者とは違うという結果になってしまいます。

余談「BWV998 プレリュード」は声部を聴く能力が丸わかり

J.S.バッハの楽曲「BWV998 プレリュード」はクラシックギターで頻繁に演奏されています。左手は少し難しいですが、テンポはあまり速くなく、根性があれば初心者でも弾ける曲です。

弾きやすく美しい名曲ですが、「耳の良い・悪いが全てバレてしまう曲」だと感じています。(小暮さんは流石の演奏です)

バスの上で奏でられる旋律は楽譜上は1本ですが、複数の声部として捉えたり、和声音としてあえて音を残し、豊かな演奏にする必要があります。

耳の悪い奏者は、音の残し方が汚いです。声部つながっていたとしても、メロディとしての強弱が意識されていなければ「たまたま音が並んでいる」という印象になります。

技術がある奏者ほど「テクニック上は弾けるが、聴こえないので音を処理できていない」という印象が増します。残酷な曲です。

「多声部の聴音能力を鍛える」まとめ

相対音感は年齢に関係なく会得できる音感であることを踏まえると、多声部を聴音する能力も年齢によらず鍛えることが出来ます。

何十年も楽器を弾いていてこの能力がないのは、今まで聴音に関する努力をしていなかったからです。(私です)
今からでも、音を意識して聴くようにしましょう。

下記の方法で多声部の聴音能力は鍛えられます。
(近道は無いと思いますし、自分の無能さと向き合うのは苦痛です!)

  • 1声ずつ抜き出して弾く
  • 1声ずつ意識する声部を変える
  • 裏技として、放っておいても聴こえる声部は後回しにする
  • 同じ音の連続は丁寧に弾く(雑に扱うと、本当に意味が無くなってしまう)

今回の記事は以上となります。

私は10年ちょっとギターを弾いてきましたが、正しい努力を積み重ねていれば、その年数でギターに必要な4声の聴音は出来るようになっていた筈と思います。

人生、遅すぎるということはありませんので、今でも多声部を聴き取るよう意識します。

多声部の聴音は、別記事にて再度触れています。

あわせて読みたい
(続き①)多声部の聴音を考える。 プロの演奏を久々に生で聴く機会がありました。自分の演奏との違いを考えると、やはり「耳」の差が大きいと感じます。 「音を聴き取る耳」の重要性について、改めて書き...

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

この記事を貼る・送る際はこちら
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事でわかること