楽器

「試奏の印象」アントニオ・マリンを購入致しました。

私は長いこと大病を患っており、20代からその症状に悩む日々が続いています。
近年は闘病の甲斐もあり、その症状を抑え込むことに何とか成功していました。
それでも完治には至っておらず、今週に発作が起きました。

ギター欲しい病の発症により1983年製のアントニオ・マリンを購入しましたので、この記事でレビューします。

実は、まだ楽器は手元にありません。
購入した山野楽器の規定上、支払いが完了していないと商品の引き渡しが出来ないとのことでした。
日曜日に楽器店で購入を決めたのですが、財布にあった現金は2万円を切っていました。
ネットバンクからの振込は平日でないと出来ないため、入金完了は週明けになってしまいます。

今回のレビューは「購入前の印象」ということで見て頂ければと思います。

購入の目的

コンクールで使える音量のある楽器を探していました。
私がダブルトップを使うと、楽器が持つ本来の音より細く出てしまいます。
つまり、タッチが合っていません。
ラティス等の松の大音量系はそれなりに弾けますが、使っている内に音色に飽きそうで不安でした。
伝統的なファンブレーシングで音量の大きい楽器も沢山ありますが、それらは「音量は大きいけれど伸びが無い」ケースが多く二の足を踏んでいました。
(お値段も結構します)

松の楽器を使うのであれば伸びが欲しいので、残るジャンルとしてはイタリアかグラナダの製作家の楽器です。
純粋なグラナダの楽器の中では、やはりアントニオ・マリンの音質が良いです。
(ジョン・レイやベルンド・マルティンも音質が良いです)
しかし、私は過去にアントニオ・マリンを使い、音質の面で不満があり手放しました。

マリンを手放してから、「なるべく音質の良いマリン」をずっと探していました。
古い年代のマリンをずっと探していたので、「購入したのは仕方のないことなんだ!」と自分に言い聞かせています。

厳しいチェックをした

以下の理由から、それなりに厳しい目線で楽器をチェックしました。

  • 以前、所持して手放した製作家である
  • ギター欲しい病の壮絶な闘病生活の最中であった
  • 過去に弾いた最高峰のブーシェの印象が残っていた
  • 半年以内に最高峰のロマニリョスを弾いており、それも基準になっていた

この観点から楽器をチェックをしていたため、購入の感動が非常に薄かったです。
「大きな欠点は無いし、音質も良いから買うしかないか・・・」という心情でした。
「ブーシェやロマニリョスの最良品に比べれば、まあ普通だな」とドライに見ていました。

あくまでブーシェやロマニリョスの最良品と比べた場合の感想であり、並のブーシェやロマニリョスよりも良いかと思います。
この記事のレビューもかなり冷静な目線で書いています。

アントニオ・マリンのレビュー

基本的な骨格はマリンそのもの

この1983年マリンは、音の骨格やバランスは他の年代のモデルBのアントニオ・マリンと変わりません。

1弦がやや細くて、2弦3弦が太いです。
芯がありつつも少し膨らみのある低音を持っています。

このマリンは、私が他のグラナダ系(マリンと名の付く楽器)に感じている以下の欠点がありませんでした。

  • 音質がスペイン的で明るく、やや粗野に感じる
    (私が荒い音を制御しきれないだけで、この方が力強いと感じる人もいると思います)
  • 高音の伸びに対して、低音の伸びに欠ける

高音の印象

通常のモデルBのマリンよりも音が太く、音は極端に明るくはありません。
暖かみのある太い音です。
2弦、3弦の音は非常に魅力的で、ギターらしい太い音で良く伸びます。
文句の付けようがないです。
1弦の伸びは2弦3弦に比べるとそうでもないように聴こえましたが、これから鳴ってくるかもしれません。
1弦の音は元より良く通るので、極端に伸びなくとも困ることは無さそうです。

音質がかなり明るい楽器は音が伸びているかどうかがすぐに分かるのですが、このマリンのように刺さる成分の少ない高音は注意して聴かないと伸びているかどうかを判断しにくいです。
(ジョン・レイもそうでした)

1弦はグラナダ的な荒さも僅かに感じますが、この楽器以上に1弦がクラシカルな個体を探すのは難しいと思います。
「ブーシェの1弦とは違うけれど、これ以上は本家ブーシェかマゼでないと厳しい」と思って試奏していました。
(その分、マゼよりもパワーがありそうです)
冷静に判断し過ぎて、全然楽しめていません。

試奏した直後は、高音は剛直なところがありました。
しかし、30分程弾いていると音が開いてきました。
店を出る直前はかなりしなやかになっていたので、タッチに苦労することは無さそうです。

低音の印象

このマリンは低音も伸びます。
以前のマリンのレビューでも書いたのですが、岡本拓也氏のマリンは低音も爽やか且つパワフルに伸びていました。
今回購入したマリンは、暖かみのある音質で低音が伸びます。
低音が伸びるのが、弾いている本人にもはっきりと分かります。
近年の作品とは音の伸び方が全く異なります。
【追記】暖かみのある伸びはオーガスチン赤の個性でした。

近年のマリン系の楽器の低音は、「そもそも低音が伸びない」か、「広いホールで客席で聴くとしっかり伸びていることが分かる」か、のどちらかです。

ハウザー等のドイツ系の楽器は低音の形が崩れずにそのまま明瞭に飛ぶのですが、このマリンは強く弾くと低音が膨らんで暖かさを伴ってブーストします。
元々がしっかり締まった楽器ですので、膨らみすぎることはありません。
余計な倍音もないため、音の分離を悪くすることもありません。
低音が伸びる楽器はタッチの強さが必要なケースが多いので、扱いやすさ・モニタリングのしやすさを兼ね備えた低音はかなりなレアケースと思います。

6弦は弦高が低かった

上記で書いた伸びは主に5弦までの話です。
6弦は弦高が低かったので、強く弾いたときにどこまで伸びるかは判断出来ませんでした。
メゾフォルテ位までは良い鳴り方をしていましたし、「5弦がここまで伸びるなら6弦も多分伸びるだろう」と判断しています。

名器と同じプルサシオン

このマリンはいわゆる名器と同じプルサシオンを持っています。
弦を押し込んで、押し返される感触をプルサシオンと言うのだそうです。
(知りませんでした)

現代の良く鳴る楽器でも音量は出ますが、「弦の押し込み量」が大きくなります。
名器であれば、作りや材料の良さによる程良い弾力がありますので、同じ力加減でも「弦の押し込み量」は小さくて済みます。

弦の押し込み量の大きい・小さいについて、どちらが好きかは人それぞれです。
私はギターの音色の好みが年齢換算で75歳位なので、古い楽器が好きです。
振幅が小さければ、弦高も低く済むでしょう。

ネックの状態

この楽器はしばらく弾かれずに保管されていた楽器とのことです。
そのため、ネックは順反りしており、出品するにあたってアイロンでの修正を行ったようです。
(弾かれていないと駄目ですね)
低音側がストレート、高音側が少しの順反りです。

楽器の素性が非常に良いので、今後もし使ってみて不都合があるようであればフレット打ち替え等のあらゆる手段を考えようと思います。

暖かみのある音質

今回のマリンは、音域全体で暖かみのある音質をまとっていました。
暖かみを超えて、情熱的な力強さと言えるかもしれません。
私が弾いた中で一番良かったブーシェは、虹色のシャボン玉のような魅力を音に閉じ込めていたので、かなり印象が異なります。
アントニオ・マリン氏の独自の方向性でブーシェ的な音色を追求した結果、人間味のある暖かさが付帯したのではないかと推測します。
「どうしてもブーシェ的でないと嫌だ」という人以外は、この音質で充分過ぎる程満足出来ると思います。

店内が騒がしく、音質のはっきりとした判断が出来なかったため、詳細は楽器が届き次第検証します。

アントニオ・マリンの試奏の印象まとめ

今回のアントニオ・マリンは「通常のマリンと骨格やバランスでありながら、音色は明るすぎず暖かみがあり、低音までよく伸びる」という感想です。

私は明るい音がNGで、古い音でないとタッチが合わないタイプです。
現代的な機能を求めるのであれば、こういった古い楽器にこだわらずともホセ・マリンやパコ・マリンで何の問題も無いと思います。

手元に楽器が届いたら、サドルの作成・詳細の検証(粗探し)をしてみます。

この楽器については、私が購入する前にギター仲間のおうどんさんが試奏してレビューを投稿していました。
ギター試奏 アントニオ・マリン・モンテロ 1983 ブーシェ・マリーン | クラシックギターマニア おうどん

おうどんさんが弾いた時点では、長期保管から楽器が目覚めようとしていたところだったと思うので、その点がレビューの違いに現れているように思います。

マヌエル・ベラスケスを手放しました

この楽器の購入で資金難に陥ったため、所有していたマヌエル・ベラスケス(エル・クラシコ)を委託に出しました。
売りに出す前の日に弾きましたが、「私を手放すのか!」と非常に良い音で泣き(鳴り)ました。
沢山のハウザーモデルの楽器を所有しましたが、低音の鳴り方は過去に所有した楽器の中でも最高です。
(ハウザーモデルでは無いと思いますが)
6弦まで全くブレずに大音量で鳴り、ステージ向けです。
ベラスケス本人の作品を含めても、非常に良い部類に入ります。
ドイツ系の楽器を弾きこなせる方は是非試奏してみて欲しいです。
所有するギター「マヌエル・ベラスケス エル・クラシコ」をレビューする。|クラシックギターの世界

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。