所有するギター「マヌエル・ベラスケス エル・クラシコ」をレビューする。

PR〈景品表示法に基づく表記〉

ここ2~3年はマヌエル・ベラスケスのエル・クラシコをメインに弾いております。
本人の作品でなく、ベラスケス工房の職人が作ったモデルです。
手持ちの中で1番良い楽器、とまではいかないのですが、まだ音色に成熟の余地がありそうです。
弾き込みの効果がありそうなので、もっとも頻繁に弾いております。

この記事でわかること

外観


飾り気は皆無です。
装飾性という意味では魅力はありません。
しかし、余計な飾りが無いことにより、振動が邪魔されていないと言えます。

ヘッド

虚飾のない朴訥な形をしております。
「削ってハウザータイプのシェイプにしたい」と思ってしまいます。

糸巻きはライシェルの前身であるランズドーファーが使われております。
私が購入した時点ではすこし動きが悪かったのですが、弦交換等で使っているとギアの動きが良くなり、通常使用出来る範囲になりました。
ハウザー1世もこの糸巻きですので、糸巻き自体は非常に良いものと思います。
楽器店の店主からも、「この糸巻きが使われているということはかなり良いグレードなのでは」という話がありました。

ロゼッタ

こちらも飾り気のない模様のロゼッタです。
音が良ければ、細かいデザインに文句はありません。

ブリッジ

ブリッジにも牛骨は貼られていません。
乱暴に弦を変える人ですと、木が削れてしまうかもしれません。
(現時点では全く減っていません)
機能的には欠点にも感じますが、音色の紹介でこちらについて詳しく書きます。

裏板、横板

これぞハカランダという木目の材料が使われています。
当時としてはそれ程グレードの高い楽器ではなかったと思いますが、それでもそこそこの良材が使われています。
材料が豊富にあったと推察されます。

ヒール周り

ボディとの継ぎ目が段になっており、工芸品として綺麗とは言い難いです。
音が良ければ、別にそれでかまいません。

音について

いわゆるドイツ系の少しきらびやかな音です。
ハウザー2世のような極太ではなく、純粋なハウザー1世モデルと同じくらいの音です。
私はメキシコのアベル・ガルシアが持っているような中南米的な粘りをほんの僅かに感じます。
(この楽器を弾いて、それを感じる人は少ないかもしれません)
これによって音にコシと艶が生まれ、強いタッチにも耐えるように思います。

購入した楽器店の店主は「ドイツで作られた楽器では」と仰っていました。
当時のドイツ(東だか西だか忘れました)は人件費が安く、現代ではギターマニアの間だけで名前が記憶されているような製作家が作った可能性があるようです。
上記に書いた、中南米的な要素を私は感じているので、事実は分かりません。

塗装がラッカーからセラックに塗り替えられており、ラッカーに比べれば音に柔軟性はありますが、まだまだ弾き込みの余地を感じる音がします。
(塗り替えすると、楽器は弾き込みし直しになります)
購入してから、ナットとサドルを調整して、1年程度弾いたところ大分しなやかで抜けの良い音に変わりました。
長期スパンで弾き込むことでもう少し変化があると見込んでいます。

それほど重くありませんが、ボディ本体からはかなり剛性を感じます。
(音から来る印象です)
もしラッカー塗装そのままだったとしたら、かなり強いタッチが必要と思います。
ブリッジに装飾の牛骨が貼られていないことも、音が硬すぎないことに貢献しているかもしれません。
この剛性にもし装飾が加わっていたら、更にソリッドな音で扱いが難しくなりそうです。

低音の音は、6弦の1番低い音まで重厚な音です。
ホールでは明瞭な音が客席の奥まで届くでしょう。
5弦と同じような重さのある鳴り方が、6弦においても達成されています。
これが出来ていないハウザーコピーは多いです。
ハウザーモデルですと、この特徴がないと私は買うのを躊躇してしまいます。
曲を弾く中で、鐘を鳴らしたような芯のある強靭な低音が鳴ってくれるのは、
非常に心強いです。
これまで使った楽器の中で、最も低音が鳴る楽器です。

ドイツ系とはいえ、ハウザー1世のような要素を持っていますので、音色は充分に変化します。
しかし、音色を変化させても音の形が変わるだけで、スペイン系の要素がある楽器のように音の色まで変わるわけではありません。

本番で使ってみましたが、木質的な温かみがあり、タッチが力んでしまった際も楽器が助けてくれました。
ストイックと思っていたので、意外です。

欠点

コンディションの波がある

塗装がラッカーからセラックに塗り替えられておりますので、
50年以上経過しているにも関わらず、音は若いです。
300万円以上するような銘器の中で、優秀な個体は目覚めるまでには時間がかかりますが、起きた後は安定しています。
このエル・クラシコは、その領域までは到達していません。

但し、楽器に元気が無いと感じるときは、むしろ目覚めきっていないときが多く、簡単には弾き潰れなさそうな様子です。
この点において、新作の200万円の楽器との違いを感じます。
新作の200万円クラスの楽器は良く鳴りますが、タッチが飽和してフォルテからフォルテッシモの変化が分からなかったり、簡単に鳴りすぎて腰が弱くなるものがあります。

コンディションの波を欠点と書きましたが、あくまで300万円以上の銘器の優秀な個体と比べた場合です。
200万円以下の新作の楽器と比べると、遥かに芯の強さと安定感があります。

高音にスパニッシュな荒さがある

他のドイツ系の楽器と比較すると、高音にスパニッシュな荒さがあります。
しかし、ドイツ系ギターの音質であるからこそ気になるのであって、ちまたに出回っている通常のギターと比べると遥かに凝縮された音です。
(その分、生命力があります)

今回の記事は以上となります。

この楽器は、最初は手強さもありました。
もしラッカーからセラックに塗り替えられていなければ、購入していなかったと思います。
鈍さと紙一重の粘り・腰の強さは、近年の新作の楽器ではあまり感じられません。

最近、楽器の弾き比べをする機会があり、200万円、400万円レベルの楽器と比べても
明らかに劣る程ではありませんでした。
価格を踏まえると、中々に良い楽器と感じています。

追記)現在、委託に出しておりますので、宜しければ御覧下さい。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

この記事を貼る・送る際はこちら
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事でわかること