昨日、喫茶店での発表会に参加しました。
演奏時間30分の中で難しい曲ばかり選んでしまい、
1ヶ月ちょっとの準備期間で曲が満足に仕上がらず、
今回ばかりは「ステージに上がりたくない!」と思いました。
しかし、蓋を開けるとアンコールを頂く位には良い演奏が出来ました。
事前の仕上がり具合の悪さにも関わらず、
演奏がそこそこ上手くいった理由が2つあり、そのうち1つは
「テンポ・ルバート」だと思います。
今回の記事で私の考えを書きます。
ちなみに、もう1つの演奏が上手くいった理由は「意地」です。
演奏者が「上手く弾けた」と思っても、聴く側には関係ありません。
今回の発表会で初めてギターを聴くお客様がいたかもしれませんし、
「ギターってこんなものなのね」と思われない演奏をせねばと思いました。
「テンポ・ルバート」とは
フレーズに合わせてテンポを柔軟に揺らすことを
「テンポ・ルバート」と言います。
本来の「テンポ・ルバート」は、遅くした部分をどこかで速くし、
小節の長さの帳尻を合わせるものです。
可能なら、本来の意味での「テンポ・ルバート」をすべきですが、
それは今回の記事では議論しません。
テンポ・ルバートの効能
①音楽に躍動感や生命力、波をもたらす
テンポを揺らすことで、音楽に躍動感や生命が宿ります。
楽譜は単に演奏してほしい音程とリズムを記号で示したものなので、
実際に演奏する音は均等である必要はないと私は思います。
(楽譜通りに弾く、とは何でしょうか)
どこかの音が詰まって、その分他の部分が押し出されていくことで、
音楽が前に進む推進力やパルス・波が生じます。
リズム楽器においても、テンポは一定でも強弱の位置が変わることで
グルーブが発生します。
均一でない、ということは重要です。
音型によってルバートの方法を変えることは非常に重要で、
音楽修辞学におけるフィグーラを捉えて演奏出来ているかと同義です。
②音量に依存しない表現が可能
不協和な音や強調したい音の時間を長く取ることで、
音量が無くとも「音が大きい」と感じさせることが出来ます。
アルペジオを使ったり、発音のタイミングを遅らせたりすることもあります。
強弱を付けられないチェンバロでは当たり前の方法ですし、
音量の幅が小さいギターもこれを行わなければなりません。
アンサンブルでは、あまり大げさに出来ませんが、
独奏なら他人に迷惑をかけませんし、そもそもの音量が小さいので
最大限に活用すべきと思います。
③技術的に楽することが出来る
今回の記事で特に伝えたいことなのですが、
テンポ・ルバートをすることで技術的に楽をすることが出来ます。
違和感無く、音楽的にルバートするには良いセンスが必要です。
和音においては「難しい和音=登場頻度が低い押さえ方=不協和音」
であることが多いので、
充分に時間を取ることが許される、若しくはそれが効果的に働きます。
適度に時間を取ってプランティングをすると、
ごく僅かな休憩が出来ますし、効率良く大きな音を出すことが出来ます。
スケールを弾くにしても、音楽の流れを妨げない範囲で
冒頭部分を溜め、後半で加速させることにより
いきなり突っ込んでもつれたという事態を避けることが出来ます。
JBで育った
個人的な話ですが、
今回の発表会では独奏の曲に加えて、二重奏もあり、
合わせをする中で自分のテンポのゆらぎ幅が大きいと気が付きました。
(勿論、拍は合わせています)
二重奏を行ったことによりテンポ・ルバートを意識し、
ソロでももっと大げさにテンポを揺らして(楽をして)も良いのでは
と思いました。
その結果、難所を何とか切り抜けることが出来ました。
(ぐらんぐらんにテンポを揺らして弾きました、
ミスで流れが滞るよりはマシと思い。)
ジュリアン・ブリームの演奏は、
「難しい部分で時間を取って弾いているが、音楽的なので違和感を感じさせない」
と聴いたことがあります。
私は1番好きな演奏家がジュリアン・ブリームですので、
憧れから無意識に真似をしているのかもしれません。
R.I.P.ジュリアン・ブリーム!
今回の記事は以上となります。
「本番でのミスを減らせたので、紹介しよう」位の気持ちで書き始めましたが、
むしろ、充実した音楽を行う上で必ずやらなければいけないことでした。
ただ、私自身リズムが緩いところもありますので、区別して練習します。
また、本当に弾きたいテンポで弾けるよう、技術を磨きます。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。