ギターの神様とされるアンドレアス・セゴビアは大変素晴らしい演奏家です。
ただ、あまりにセゴビアを崇拝し過ぎる先生のほとんどに対して、私は良い印象がありません。
もちろん、セゴビア奏法の先生にも素晴らしい方は沢山います。
例えば、田口秀一先生は非常に優れた先生と思っています。
(テクニックはセゴビア奏法ですが、音楽の内容はセゴビアのスタイルに縛られたものではありません)
音楽工房グランソノリテ ピアノ&ギター教室
セゴビアを取り巻く意見や、セゴビア信者の先生について書きます。
誰もがセゴビアの音楽を通る
私は、例に漏れずセゴビアからクラシックギターの音楽を聴き始めました。
「クラシックギター 有名 演奏家」のようなキーワードで調べると、やはり「ギターの神様」であるアンドレアス・セゴビアの名前が真っ先に出てきます。
ギターを始めた当初、セゴビアが弾くI.アルベニスのアストリアスにハマりました。
アストリアスはジョン・ウィリアムズが弾く音源も聴いていましたが、がさつ・無機質に聴こえました。
アストリアスに関しては、私はセゴビアの演奏の方が上品で好みでした。
人の好みはそれぞれなのですが、正直「ギターの神様」というラベルに引っ張られた部分も少なからずあると思います。
「神様なのだから、理解できなければ自分が悪いのかも」ということです。
今であれば、「セゴビアの録音は全てが素晴らしいものではない」ということが分かります。
初心者が「セゴビアの良質な録音」にたどり着くことも難しいと思います。
神様だからといって、無理して褒める必要はありません。
(ただし、全盛期の前後のセゴビアは天下無双です)
あまりにセゴビア信者すぎる先生に気をつける
ギターの神様と称されるアンドレアス・セゴビアは大変素晴らしい演奏家です。
個性的な音色やテンポが印象に残りがちなのですが、それ以上に演奏家としてあらゆる項目に秀でた奏者であると私は思います。
でなければ、同じ時代を生きた作曲家・音楽家・愛好家達の心をこれほど捉えることは無かったでしょう。
セゴビアが用いた音色など、独自の技術ばかりに重きを置く先生には要注意です。
このようなセゴビアが使った奏法は、セゴビア以前の古典・バロック・ルネサンス音楽には不適切であることがほとんどです。
また、「セゴビアの技術」を優先するあまり、音楽家として本来伸ばすべき他の要素への指導が足りない印象が強いです。
(セゴビア自身はオールマイティなのに)
「セゴビアの真似をして、セゴビアとはかけ離れた演奏家になる」と聞いたことがあります。
実績のある先生もいますが、極端にセゴビア信者の先生は指導者としては「はずれ」の割合が多いように感じます。
(この記事を書こうと思ったきっかけの方も、演奏は下手では無かったです)
「音楽の常識」と「セゴビアの音楽」の違いに苦しむ
過去にセゴビア奏法の先生に習っていた有識者の友人から話を聴きました。
ピアノや他の楽器の経験・素養がある方ですと、セゴビアに由来する音楽の指導内容に違和感を持つ人が多いそうです。
また、指導者を別の先生に変えた場合に、セゴビア崇拝の先生と全く違う奏法や音楽表現に悩む方が多くいるそうです。
(一時的にギターを弾けなくなったプロ奏者もいるそうです)
上達できるセンスのある人は、間違った理屈よりも目の前のギターから返ってくる情報を優先して練習します。
そのため、誤った指導を受けながらであっても、いずれは結果を出すことが出来ます。
しかし、違和感のある指導をわざわざ受ける必要はないでしょう。
テクニックは天才1人では完成しない
野球やテニスのフォームに関して、テレビが白黒だった時代と今を比べると印象が違います。
スポーツにおいて、今になって昔のフォームを推奨する人はいないでしょう。
ギターにおいても、あまりに古い指導方法は合理的ではないと思います。
(ただし、セゴビアが腕の重みをうまく使っているのは事実です)
セゴビアが天才であり、F.タレガ、M.リョベートの技術を受け継いだことも、全く事実と思います。
しかし、セゴビアの時点でギターの技術が完全に完成していたとは私は思っていません。
余談ですが、リュートにおいては絵画に描かれているフォームを研究することがあります。
長い歴史を通じて作られたスタイルが描写されているからです。
このように現代よりも娯楽の少ない当時の奏者によって、技術が成熟しきっている例もあります。
(歴史から学ばないのもまた愚かです)
神様というブランドを使う
話を伺っていると、神様であるセゴビアと指導者本人を如何に関連付けるかが重要だったようです。
「私はセゴビアという神様に近い存在だ」ということです。
高級車やブランドを身に付けてお金を持っているように見せかけ、情報商材を売ったり、マルチ商法に勧誘するのとあまり変わらない方法のように思います。
セゴビア信者の先生に関して、その方に演奏能力があれば聴く分には良います。
指導を受けるかどうかは慎重に考えた方が良いでしょう。
今回の記事は以上となります。
最後までご覧いただき、誠に有難うございました。