クラシックギターのスケールやアルペジオは誰もが安定して速く出来るようになりたい技術だと思います。
私はこの速度がべらぼうに遅く、今まで苦労してきました。
苦労してきた割にはあまり工夫した練習が出来ておらず、この機会に改めて考え直してみました。
今回の記事では8つの練習方法と意識すべきコツを紹介します。
スケールやアルペジオは、右手の最小の単位で見ればim(人差し指と中指)やma(中指と薬指)がメインで成り立っています。
左手とのシンクロも大事なのですが、そもそも右手が動かなければ話になりません。
まず、ある程度の右手の速度を獲得することが重要だと思います。
「私は右手の速度には困っていません」という人は、今回の記事は読まなくても良いでしょう。
今回、有識者の友人と意見を交わすことで練習方法の見通しが立ったので、ここにまとめます。
友人はこの練習方法の一部を3年間行うことで、1拍に4つ入れて2拍+1音、16部音符の9連でBPM200まで弾けるようになったそうです。
この記事の内容は「同一の弦上においてimで弾く速度の向上」を目的としていますが、結果として複数弦にまたがるアルペジオの速度も伸びると考えています。
練習のパターン
行うべき8種類の練習パターンを優先順位ごとに並べました。
複数組み合わせて行うことも重要です。
① imの他、ma、iaで弾く。
im、mi、ma、am、ia、aiの6通りで練習します。
目的
- maとiaの速度が上がればそれに付随してimの速度も上がります。
それによりimの練習では速度が頭打ちになる状況を回避出来ます。 - maとiaの速度が上がることでアルペジオの際にも役立ちます。
- 左手を付けて行う場合は、逆指の練習にもなります。
② 弦を変えて弾く、移動して弾く
6弦にpを置いておき、1弦から5弦までを移動して弾く練習をします。
pを6弦に置く場合でも、右手の位置の調整は忘れないようにします。
また、pを置かずに同様の練習をします。
弦を移動する際は、連続してやってもかまいませんし、間を空けても良いでしょう。
目的によりどちらを選ぶかは異なります。
弦を飛ばした移動(1弦から3弦など)も良い練習になると思います。
目的
- 各弦によって音の立ち上がりや反応が違いますので、様々な弦で速度が出せるようにします。
同一の弦でばかり練習していると、他の弦に移ったとたんに安定感が無くなります。 - 実際の演奏では単一の弦をひたすら弾き続けることはありませんので、この練習で弦の移動があっても速度を維持出来るようにします。
弾く弦の位置に合わせて細かく右手の位置を調整するようにしましょう。
③ リズムや拍を変更する
付点のリズムにする
音階やメロディを弾く場合の例です。
下記の2つの例のように付点のリズムにして練習します。
最大速度がBPM100の方であればBPM115などのより速いテンポに変更して練習します。
数を増やす
音階
下記の2つ例のように弾く音の数を1つずつ増やしていきます。
これも、自分の限界のテンポよりは少し速い位に設定すると良いでしょう。
私は上の付点にする練習と数を増やす練習を組み合わせてリズム遊びのようにパターンを作っています。
目的
- im等の最小単位を、短いリズムの部分でなるべく速く動かす練習です。
- 数を増やしてスタミナを鍛えます。
④ 親指pで低音を入れて弾く
拍の頭やその他の部分に親指pの指で低音を入れます。
pで弾く弦を2弦~6弦で移動したり、その他の指(ima)で弾く弦を1弦~5弦で移動させます。
目的
- pの動きにその他の指(i、m、a)が影響されないようにします。
曲で必ず出てきますので、必須の練習です。
⑤ imの連続の間に和音を入れ、切り替えの練習
④と似ていますが、速弾きの間に和音やラスゲアードを入れます。
これも弦を移動させながら行うと良いでしょう。
目的
- 曲を弾く感覚に近い、奏法の切り替えのある状態で練習します。
imばかり動かして、「実際の演奏とは異なった感覚の動きばかり練習してしまった」とならないように、他の動きを混ぜて現実に引き戻してあげましょう。
⑥ あえて遅いテンポで弾く
速く弾くばかりでなく、時折遅く弾いて動きを見直すことが重要です。
遅いテンポの無駄のない動きを速く弾く際にも出来るようにします。
また、速く弾いていた動きを遅いテンポでも再現し、不具合を見つけられると良いです。
⑦ 強弱を変える
極端に強弱を切替えて練習します。
目的
- ピアノで弾く場合、脱力や無駄のない動きの練習になります。
- フォルテで弾く場合、確実に弦を捉える練習になり、苦手な箇所があぶり出されます。
⑧ 音色を変える
スルタスト、スルポンティチェロをしたり、タッチの角度によって音色を変更して練習します。
目的
- 実際の演奏でもただ弾くだけではなく音楽的な表現が求められますので、そのための練習です。
- 同じ弾き方ばかりにならないことで成長のための良い刺激になります。
練習において注意すべきポイント
無駄のない動きを心掛ける
速くすることはスピードを上げることよりも無駄のない動きをすることが重要です。
自分の行っている動きに徹底的に集中しましょう。
(余計に指を振りかぶっていないか)
他の記事でも述べましたが、自分の限界に到達した時点で既に指は頑張っています。
手に緊張がある状態では弾き続けない
手に緊張が残った状態で弾き続けるのは、負荷を放置した状態で弾くための練習をしていることと同じです。
緊張を感じたらすぐに休憩を取るようにします。
理想は、音と音の間の僅かな時間で休めることです。
耳で音を聴く
スケールを弾くに当たって、右手の動きと左手をリンクさせなければなりません。
速弾きは単なる運動ではないので、右手で出した音を「脳が処理する」必要があります。
右手単独で弾いた音を脳が処理出来ないなら、左手が伴った場合にもっと処理出来ないでしょう。
音を聴くことで「指の運動」と「脳の処理速度」の両方を伸ばしていくようにします。
感覚を研ぎ澄ます
速弾きとはいえ、僅かなプランティングの時間は発生します。
毎回、指の同じ場所で確実に弦を捉えるようにしましょう。
弾く弦を変える等、様々な刺激のある動作を行うことで「脳の処理速度」も向上します。
色々と練習方法を試し、上手くいかないことで「こんなはずではない」と思うかもしれませんが、それを直すことで先に進むことが出来ます。
音をリズム通り「正確」に並べる
耳で音を聴き、リズム通り正確に音を並べる事が重要です。
速弾きだから乱れたり音が潰れたりしても良いと思っていないでしょうか。
例えば、imの連続で練習をした場合に、「im」「mi」のどちらかに苦手があればリズムは偏ります。
これを放置していたら苦手はそのままですし、細かい乱れを聴き取れないリズムの感覚が身に付いてしまいます。
目先の結果(速度)ではなく、将来の成長を目標に細かい部分に気を配りましょう。
番外編「反応の良い弦を使ってみる」
サバレスのカンティーガのように、鳴らしやすく反応の早い弦を使ってみるのも手です。
速弾きをする際は、ハナバッハのような弦では少し鈍さを意識してしまいます。
今回の記事は以上となります。
私が「imの速度」問題を考え始めた時は、1弦だけで練習していました。
(あほです)
そこでpを拍の頭で弾いたり、弦を移動して練習してみたところ、ストレスで最高速はガクッと落ちました。
本番では様々な条件が想定されますので、様々なアプローチで負荷を掛けなければなりません。
脳に色々な種類の刺激が入れば、学習の効果も高まるはずです。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。