クラシックギターの楽器に関して、「この製作家のこの年代は当たり年だ」という話をよく聴きます。
河野ギターはこの時代が良いとか、サントスは・・・、アグアドは・・・、ハウザーは・・・ベラスケスは・・・という内容です。
これについて、思うことを書きます。
情報が一人歩きする
ネット上の情報が以前より重要視される社会になりました。
実際に楽器を弾いてみたり、詳しい店員に聴いてみるよりも、ネット上の情報が参考にされる時代です。
店員さんについては、商売のためのセールストークがどうしても入りますので、ある程度の関係性が無い状態では情報の信頼度が落ちます。
ネットの情報が重要になることについて、「最後には楽器を弾いて判断するから良い」と思うかもしれません。
しかし、人は思い込み・先入観を完全には払拭できません。
楽器の良し悪しを判断出来ない人にとっては、思い込みは特に有害になります。
当たり年の楽器の印象「振れ幅が大きい」
結論を言います。
当たり年と言われる年代の楽器の私の印象は、個体毎の振れ幅が非常に大きいです。
それほど良くない個体は、全くもって普通です。
原因は分かりません。
製作家として試行錯誤をする中で、良いのが生まれやすかったのかもしれません。
また、海外の名器は特別作りが良いわけではありません。
手作業により品質が安定しないので、完成した楽器の個体差も大きくなるのでしょうか。
当たり年の楽器が全て良いという製作家はレアケースだと思います。
情報に振り回されるとカモになる
当たり年の楽器は個体差が大きいので、「この年の楽器はあたり年!」という思い込みで楽器を買わない方が良いです。
とんでもない高値掴みになります。
正に「裸の王様」のようで、水戸黄門が効果の無い印籠をかざすような状態になってしまいます。
ネット上で沢山情報を調べたり、時間とお金をかけて楽器を弾きに行くとサンクコスト効果が働きます。
それ程良く無い楽器なのに、「ここまでして辿り着いたのだから良いものの筈だ!」と思い込んでしまう訳です。
ネームバリューに囚われない
当たり年以外にも、ネームバリューに振り回されてはいけません。
最近、200万円位の銘器を使っていた方が、より音の良い60万円位の値段の楽器を買って満足しているという話を聞きました。
その銘器は全ての個体が素晴らしい訳ではないので、非常に納得できる話でした。
偏見なしで探せば、50〜100万円位の範囲であっても、200〜300万円クラスに匹敵する音楽性を持った楽器が見つかります。
楽器選びにおいては思い込みは邪魔になります。
ごく最近も、ネット上で絶賛されている日本の製作家の楽器がJギターに掲載されてすぐに売れていました。
その製作家の楽器は大変素晴らしいのですが、かなり楽器としての活力が落ちている個体でした。
レビューが良いものが売れるという情報化社会の闇を見ました。
当たり年の楽器まとめ
ネームバリューや当たり年といった思い込みに囚われないように楽器を見極めましょう。
楽器を判断する耳に自信が無い場合は特に注意です。
私も東京を離れて楽器店に行くこともめっきり減ったので、勝手な妄想には気をつけようと思います。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。