ちょっと前に下記の記事を書きました。
右手のタッチに関するパラメータをまとめる。
実はこの記事は、本当に書きたかった内容ではございません。
本当に書きたかった内容は、今回の記事のタイトルである「クラシックギター演奏で右手の指が弦をリリースする速度について」です。
(以下、リリース速度とします)
本番の際に「緊張すると音が硬くなるのは何故」と考えた際に、このパラメータが浮上しました。
当初、「所詮は数あるパラメータのひとつ」と思いましたが、上記のマルシン・ディラの動画を見て「単独で取り上げねばならぬ」と考え直しました。
現代クラシックギターの奏法において重要な要素です。
音色が変わる
指が弦をリリースする速度が変わると、当然ですが音色が変わります。
リリースする速度が速ければ硬い、はっきりした音
リリースする速度が遅ければ柔らかい、太い音
になります。
ピアノの場合でも打鍵の速度というパラメータはありますが、打鍵の速度が音量とリンクしてしまうので、ピアノは純粋に音色だけに影響するということではないです。
ギターの場合ですと、弦をたわませた量で音量が決定します。
そのため、リリース速度は音量とは別に決定することが出来ます。
また、タッチの角度に依存しないのもメリットです。
(ノーモーションで繰り出せる)
ゆっくりで良いと思えば、楽になる
「曲の最後の音を美しく出したいけれど、すごく気を使う」という方は「指が弦をリリースする速度を遅くする」で即解決です。
分かってしまえばごく簡単なことなのですが、私にとっては盲点でした。
「リリース速度」を変化させるのはかなり難しい技術で、出来ない方も多いかもしれません。
「曲の最後の音だけゆっくり弦をリリースする」は誰でも出来るのではないかと思います。
テンポの速い曲を遅い動きで弾く
「どうして上手な人は速い曲でも取り乱さずに弾けるのだろう」
そう思ったことは無いでしょうか。
その答えのひとつが、「動きは一見速く見えても、リリース速度はそれほど速くない」
だと思います。
これも、私にとって盲点でした。
「充分余裕を持って動き、等速で弾く」
か「弦に接した際に減速し、リリース速度は遅い」
のどちらかによって、極端に速く弾いているという感覚がないのではないかと思います。
勿論、これを行うためには無駄な動きがなくテンポに対して動きが先回り出来ることが必要になります。
訓練が必要
重ねて言いますが、リリース速度の変化は上級者であっても難しい技術と思います。
意図的に練習していなければ、パッと出来るものでは無いでしょう。
なぜなら、「リリースの瞬間は一瞬」だからです。
「出来た」と思っていても、そうではないことが多いです。
ゆっくりリリースしていると思いきや、弦を離す瞬間にしっかり弦を掴みすぎていると
弦は瞬間的に指から離れます。
また、リリース速度の違いによる音の変化の微細な違いを感じ取ることも難易度が高いです。
弦をリリースする速度を変えた際に「音色や音量がどう変わるか」を「身体の感覚とリンクさせることが出来た」時点で始めて会得したと言えます。
楽器にも影響される
「リリース速度の変化」は楽器の違いでやりやすさが変わるように思います。
(出来ないことは無いですが)
マルシン・ディラのように、反応が鋭敏な楽器や軽めの入力で音が出る楽器の方が
リリース速度変更の技術は使いやすいでしょう。
私も、楽器の反応の良さを保つためにもう少し頻繁に弦を替えようと思いました。
楽器の要素もあって、全ての奏者が大袈裟に使っている訳ではないかもしれませんが
動画の通りマルシン・ディラは大々的に取り入れています。
今回の記事は以上となります。
必須のスキルとまでは言いませんが、この意識が演奏に変化をもたらしてくれるのは事実です。
(完璧に習得出来なかったとしても)
音色以外の要素にも応用出来るという点が最高です。
追記)続きの記事です。
右手の指が弦をリリースする速度について。その2|クラシックギターの世界
最後までご覧いただき、誠に有難うございました。