演奏中に「右手がぶれる、動いてしまう」ことの対策・原因を考える。

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演奏中に「右手がぶれる、動いてしまう」ことはクラシックギター奏者にとって大きな悩みの種です。
本番の演奏での緊張下では尚更手が震えてしまうでしょう。

私もこの症状に長年(10年以上!)悩み続けています。

この記事を書く過程で自分なりの対応策が見つかりました。
もしかしたら常識かもしれませんが、私は今まで聞いたことが無い内容もあります。

今回は右手が「ぶれる、動いてしまう」ことへの9つの対策・原因を解説します。
右手のぶれ、動きに悩む方の助けになれば幸いです。
更に新しい方法が思いついたら、都度追記するつもりです。

この記事でわかること

①右手の基本の動作が出来ていない

右手の基本の使い方は「指の付け根の関節から動かす」ことです。
卵くらいの大きさのものを握るように弾くことが重要です。

マリア・エステル・グスマン氏もマスタークラスでこの点を指導しておりました。

pの指の場合は「手首の付け根にある関節から動かす」ことです。
腕から動かして行うpのアポヤンドは常用しません。

初心者の場合に右手がぶれてしまうのは、ほとんどこれが出来ていないからだと思います。

右手が動いている例の動画です。
痙攣するような動きで弾いている人は、手を故障する可能性が高いです。

私の経験談ですが、速いアルペジオ(pimi)を手や腕の動きで誤魔化して処理していたため、コンクールの本番で指が動かずほとんど止まってしまったことがあります。
練習のときは問題なく弾けていたと思い込んでいた部分でした。
「自分では出来ている」と思っていてもそうではない場合が多いので、基本はおろそかにしないようにします。

②緊張で手が震える

私は長年「弦を捉える右手がぶれるのは緊張で手が震えるからだ」と思っていました。
この症状の原因は緊張にあって「緊張することを直すべきだ」と考えていました。

今はそうではないと思っています。

練習のときから右手はぶれていて、緊張による手の震えによってそれが大きくなるだけと思います。

「緊張」に対して出来ることは限界があり、手は「震えて当たり前」です。

練習によって右手のぶれを限りなく小さく出来れば、多少右手が震えても演奏への影響は最小限に押さえられるでしょう。

本番では練習ほど上手くは出来ませんので、技術面を改善し右手は全くぶれないレベルを目指したいところです。

③「4、5、6弦にpを置く」 or 「1弦にaを置く」

使わないp(親指)やa(薬指)の指を使わない弦に置いておくという方法です。

一定の効果はあると思いますが、これによって右手が動かないようになるわけではありません。

根本的な解決方法ではないので、この方法に依存するべきではないと思います。
過去のレッスンで、私自身が先生から「pを置いているけど、結局右手は動いているよ」と指摘されたことがありました。

pの指を置くこと

pの指を置く方法は、低音弦の倍音を鳴らしてレガートに弾きたい場合に使えないことがあります。
無駄な音が消えるから良い」という意見もありますが、私は「倍音は有効に使うべき」と思っています。
楽譜を良く読んだ上で「どの弦にpを置くべきか」「pを置かずに弾くべきか」決定しましょう。

aの指を置くこと

aの指を置く方法は、aを置くことによってmの動きに少なからず影響があるのではと思っています。
(あくまで個人的意見です)
ピアノ関連の情報を参照すると、中指を伸ばすと薬指と小指の筋肉も活動することが分かっています。
この3本の指は筋肉同士が繋がっているだけでなく、脳の細胞同士も独立していないようです。

テンポの速い曲ではaの指を置く余裕が無いですし、置く余裕があるほど遅い曲であればしっかりプランティングして弾くことでそもそも右手のぶれはあまり気になりません。

これは賛否が分かれる話題だと思います。
リカルド・ガジェン氏は置く派(現代ギターのインタビューを参照)、マリア・エステル・グスマン氏は置かない派でした。

状況に応じて使い分けるべきと思いますが、この方法に依存しない状態を目指すべきです。

(追記)
薬指(a)を置くことのデメリットを別の記事に書きました。
バスケットボールのドリブルがギターの弦を弾く動きに似ていました。

④爪の抵抗が大きい

爪の形が悪く「抵抗が大きい」「指の抜けが悪い」状態であれば、手は動いてしまいます。

本来は指が弦から離れるところでも指が抜けず、抵抗が強くなった弦を押し込み続けることで指が跳ね返されるからです。
(厳密に言うと「強い抵抗を感じた時に自然に手を動かしてしまう」のだと思います)

ある程度は爪に柔軟性が合ったほうが弦をいくらか「いなせる」ため、抵抗の面で有利かもしれません。

⑤弦に指を深く掛け過ぎている

音量を決定するのは弦の振幅であって「どれだけ弦に深く指をかけたか」ではありません。
弓に例えると、引き絞った量が音量に繋がります。

極端に弦に指を深くかけると、どうしても指が弦を避ける動きが生まれ、手は上下します。
指を深くかけすぎることで、抜けを良くするために右手を動かして力を逃がすことが普通になってしまいます。

とある先生のレッスンでより音量を要求された際に「もっと指を深く弦にかけて」という指導があり、納得できずにその先生に習うのをやめてしまったことがあります。

⑥右手が力んでいる

右手が力んでしまうと、筋肉が硬直し本来の柔軟性が発揮されず、弦に跳ね返されて手が動いてしまいます。
筋肉は硬くしているけれど、弦にあまり力が加えられていない状態です。

右手が動くからといって力で固定しようとするのは逆効果です。

右手が動く方は音が綺麗?(仮説)

私が出会ったプレイヤーの皆さんを振り返ってみますと、上級者で右手が良く動いてしまう方は音が綺麗な方が多い印象です。

これにも原因があると思っています。
表面板に対して垂直方向に弦を振動させようという意識が強い」からです。

別の言い方をしますと、音が綺麗で右手が良く動く方は
アルアイレでもアポヤンドのような音を出す」という正しい筈の音への理想が、
演奏の妨げになる「右手のぶれ、動き」に繋がっている場合があります。

具体的には「指で弦にのしかかる弾き方(表面板方向に対して)」になっているのではないでしょうか。

弦を弾く際に何が起きているのか、もう少し詳しく考えてみます。

指が弦に加える力のベクトルを考える

物理の考え方を使って、指が弦に加える力のベクトルを分解してみます。
(小~中学生レベルの話なので、難しくありません)

(1)通常の弾き方

まず、プランティング(弦に指をセット)し、力を加えて弦をたわませ、静止した状態を想定します。
生じる力は下記の写真のようになると思います。赤い矢印が「指から弦に伝える力」、緑の矢印が「弦が指を押し返す力」です。
この2つの力が釣り合っているので、この状態で静止しています。

ここから弦を弾いた瞬間(直後)の状態を考えます。
指が弦を瞬間的にすり抜けると、緑の「弦が指を押し返す力」が無くなります。
すると、赤の力(指の付け根の関節から伝えていた力)が指を動かします。
この場合、指は動いても手や腕はほとんど動きません。
(厳密に言えばモーメントですが、細かい話はしません)

(2)アルアイレでアポヤンドのような音を出したい人の場合
(弦を表面板に対して垂直に振動させたい)

通常のフォームと同じようにプランティングし、力を加えて弦をたわませ、静止した状態を想定します。
この場合は、弦に表面板に対し垂直の振動を生じさせるように、表面板に対して弦を斜めに押すこととなります。
白い矢印の力が加わることで、弦に作用するのはオレンジの矢印になっています。
指から生まれる赤い矢印は変わりません。
白い矢印の力の正体は、手の甲や腕から生じる力です。
手を表面板に押し付けることにより発生します。

弦を弾いたあとは、通常のフォームと同様に緑の矢印が無くなります。

赤い矢印の力は先程と同様に指だけを動かします。
白い矢印の力は手の甲を表面板側に動かします。
これにより「手が動く」という状態になるわけです。

ですが、この白い矢印の力(腕や手の甲から発生)を使っていても基本の右手の使い方が出来ていれば表面板側に少し動くだけです。

この動きを避けようとして手を元の位置に戻すと、余計に手は動いてしまいます。

指が弦をすり抜けるのが遅い人の場合は、発生させた緑の矢印(弦の反力)により手が押し返されます。
指と弦が触れている時間が増える分、音量のコントロールが出来るかもしれません。
しかし、弦からの反力で手は動きますし、一度発生させた力を打ち消して調整しているので、効率の悪い弾き方です。

⑦手や腕の重みをかけるタッチを常用しない

長々と書いてきた考察に関する結論が「過剰に弦を垂直に振動させようとするアルアイレ」「手や腕の重みをかけていくタッチ」を通常使うものにはしないということです。

これらは独特の素晴らしい音を出すことが出来ますが、常にこれを使っていては変化がつきません。
場面を考えてタッチを切り替えるようにしたいところです。

過去のレッスンで「セゴビアは右手が動くことはあるが、腕の重みを上手く使ってそれでしか得られない音を出している」と説明を受けたことがあります。

良い音を出せる方で右手が動いてしまう症状は、この⑦による要因と他の問題が同時に起きていることが多いと思います。

指を上に抜くのではなく、アポヤンドにならないぎりぎりで隣の弦の横を通過するとこのタッチでもあまり手が動かず弾けます。

⑧弾く弦に対する右手の位置を調整する

右手の位置が弾く弦に対して低音弦側により過ぎていると、基本に忠実な右手の動かし方をしたときにアポヤンドになってしまいます。

そこで、弾いた隣の弦に指が当たるのを避けるために、自然に手が表面板に対して上方向に逃げてしまうのです。

アルペジオやスケール等の速いパッセージでは、右手の弦上での位置を気にしつつ演奏することが重要です。

⑨指の付け根より先の関節も自然に動かす

⑧で述べた右手の位置は重要ですが、ある程度のずれは許容出来るものと思っています。

その許容を可能にするのが、指の付け根のより先の関節の屈伸です。
基本が出来ていない方に対して指導する際に「指の付け根の関節から動かす」ことが強調されます。
実際は「ものを握る動き」の表現が正しく、指の付け根の関節以外も「自然に曲がる」こととなります。

この「指の関節が自然に曲がる動き」によって、弦に対する指の位置がベストでなかったとしても、弦に加わる力が表面板に対して横方向に補正されます。
(上に引っかきあげることとは違います)

隣の芝は青い(言い訳)

私が今悩んでいる右手のぶれは「ギターの表面板に対して垂直」の方向です。
この方向の動きは観客から見て奥行き方向になります。

私の場合、右手のぶれは1cm以下、5mmくらいだと思うのですが「他人から見るとこの方向にその大きさでぶれても正直それ程分からない」のではないかと思います。

Youtubeで目にする一流プレイヤー達もごく僅かなら動いているのかもしれません。

また、右手が動いても平気で素晴らしい演奏をするプレイヤーも沢山います。

とはいえ、自分を慰めてばかりでは技術の向上は見込めませんので、少しでも改善を目指して努力したいところです。

今回の記事は以上となります。

どの原因・対策が合うかはその人の症状次第ですが、本記事の内容を全てチェックすればきっと右手がぶれない・動かない状態になる筈です。
細かく観察して練習することで間違いなく良い結果が得られます。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

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