楽器を演奏する際、姿勢は非常に重要です。
それは周知の事実ではありますが、姿勢に対する思い込みや誤解があり、
演奏に対して悪影響を及ぼしているケースが見受けられます。
私も当初はクラシックギターを弾く姿勢が悪かったのですが、
演奏を向上させようと工夫した結果、僅かづつ改善してきました。
私の姿勢に対する考え方を解説致します。
フォーム(構え)と姿勢の概念は境界が曖昧であるため、
2つの説明が跨ってしまうことをご了承ください。
姿勢は「疲れずに」「大きな力を生む」ための手段
姿勢は最小限の労力で最大の力を発揮するための手段です。
適切な指導者がいない軟式テニスの部活等で、
不必要に走りながらボールを打つプレイヤーがいます。
本来強いショットを打ちたければ、早めに準備して体制を整えるべきです。
楽器演奏でも、同じことが言えると思います。
クラシックギターにおいて正しい姿勢で弦を弾くと、弦の手応えは軽くなります。
しかし、人は「手応えがあり」「努力している」と感じられる状態が好きなので、
姿勢の悪さにより次第に演奏が難しくなって、やっと問題に気が付きます。
スポーツや格闘技に比べて、楽器演奏は必要とされる力が小さいため
疎かになりがちなのですが、
なるべく少ない労力で大きなエネルギーを生むことにこだわるべきです。
「何となく姿勢が悪いから直したい」と考えている方も多いと思いますが、
演奏において「どのような悪影響が生じているか」を見つけましょう。
筋肉が固まらないこと、力が淀みなく流れていること
上で述べたように、姿勢はあくまで最大の効率で大きな力を生む手段です。
クラシックギター奏者のリカルド・ガジェンは足を組んで演奏しますが、
力の伝達の点から考えると足を組むのは
「悪いフォームである」と言い切って良いと思います。
しかし、彼の演奏技術は素晴らしく、力みは感じられません。
筋肉を柔軟な状態に保ち、力が伝えられることを目的とすべきです。
見かけの姿勢の良さ「だけ」に拘らない
姿勢はあくまで手段であるため、
見かけの姿勢の良さに拘っていても意味はありません。
ギター演奏の左手に着目すると、
指をしっかり開いてあるポジションでフレットの上に待機させた状態は
基礎が出来ていて手が大きく見えて綺麗なのですが、
この状態を保つことに既に大きなエネルギーを使っています。
傍から見て手が小さく、頼りなく見えても、
左手は柔軟性がある状態を基本として演奏した方が良いです。
(指を開く訓練はすべきですが)
話を戻しまして、姿勢が良かったとしても、
あまり楽器にエネルギーを伝えきれていない方も見かけますので、
姿勢そのものが目的になってはいけません。
但し、姿勢さえ直してしまえば8割の問題は解決すると思います。
姿勢が良くない状態を「悪い」と判断しない
日常生活においても、楽器演奏においても、
姿勢が良くない状態を「悪い」と思い込んではいけません。
足を組むリカルド・ガジェンの例が正にそれだと思います。
彼にとって足を組むというのは何でも無いことです。
私も、演奏の際に足台の高さを間違えることがありますが、
その際は、身体を傾けて演奏するか、どちらかの足をつま先立ちにします。
それは「なんでもないこと」「身体や演奏に問題を及ばさないこと」と判断しています。
そうすると、1~2曲は平気で演奏出来ます。
演奏以外でも、これは非常に役に立ちます。
足や腰を怪我したとして、それを庇って歩き方がおかしくなり、
更に別の部分の状態が悪くなってしまうケースがあります。
怪我により、歩き方が変になったとしても、
「自分が望んでやっていること」で「特に悪影響は無い」と思うことで、
筋肉が固まったり、張ってしまうことを極力避けることが出来ます。
これは一種のリフレーミングです。
家事や掃除を「運動である」と捉えるかどうかで、身体への影響は全く変わります。
これは科学的に証明されており、
仕事で沢山動いたとしても、本人の考え方によって痩せられない人がいます。
フォームのチェックに細かく拘るのは、練習だけにしましょう。
本番でのチェックのしすぎは筋肉の硬直を招く可能性があります。
(アマチュアプレイヤーで、本番も練習の一環なら良いですが)
今回の記事は以上となります。
上記全てのことを踏まえますと、
「真面目で、自分の姿勢の悪さを自覚しているのに、直さない」が
最悪のケースです。
姿勢の悪さを強く自覚することにより、筋肉が硬直し、
演奏への悪影響が最大化されます。
私も、弦に指が弾かれないように姿勢に気をつけて練習しようと思います。
本来、弾くのは「指」でなく「弦」なので。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。