クラシックギターを弾いていて、1弦は「他の弦に比べて細い音が耳障りだ、キンキンしている」と感じたことがある人は多いのではないでしょうか。
私は大学生からクラシックギターを始めましたが、当時はずっと1弦の音がささくれていると感じていました。
この「1弦の音が耳障りであること」とは人よりも長年向き合ってきた、というか、悩んでいたと思います。
その結果自分なりの答えを見つけることが出来、現在は1弦の音がキンキンしていると感じることは少なくなりました。
(少なくとも自分の楽器で弾いているときは1弦の音が耳障りと感じることはありません)
今回の記事では、1弦の音がキンキンしていると感じることの原因と対策を書きたいと思います。
私の主観が強い、感覚的な結論になりますことをご了承下さい。
前提条件として
「1弦の音質が耳障り」問題を考える際の前提条件として、
きちんと爪を整えていて、技術的に正しい弾き方をしていること
は問題なく出来ている、とします。
爪がざらざらしていたり、弦に爪が引っかかっていては耳障りな音が出るのは当たり前です。
「1弦の音質が耳障り」問題がやっかいなのは、こういった基本的なことをクリアしていてもそういった音が出てしまうことです。
「1弦の音質が耳障り」な原因
1弦の音質が耳障りな原因は、
「音の芯が細く、密度が低いこと」
「音に肉感がなく、かつ音の芯も痩せていること」が原因だと考えています。
単純に音が細ければキンキンしやすいという訳ではありません。
音が細かったとしても、音の芯が太く密度がありしっかりしていれば、キンキンしているとは感じません。
ドイツ系のギターにこういったものがあります。
杉のギターは、音の芯の部分の密度が低いものも多いですが、音の芯となる部分に肉感が付いていれば、耳障りとは感じません。
また、音をコントロールしきれていない時に耳障りな音が出ることが多いです。
根本的な対策「ギターを替える」
最も推奨される対策はギターを替えることです。
充分に練習しているにも関わらず、1弦の音質が耳障りになってしまう理由は、
ギターが「今のあなたのタッチに合っていないから」「相性が悪いから」です。
これは、練習量や技術の問題ではありません。
(技術で解決することもありますが)
「○万払って買ったギターを買い替えしなければならないの?」と思うでしょうが、
残念ながらギターを変更することが最も合理的で近道な方法です。
どうしても相性が存在する
私の場合は、杉のギターと相性があまり良くありませんでした。
太い音を出そうとしているつもりでも、むしろ音が凝縮されて、逆に細い音になります。
その結果、杉の楽器が持つふくよかさを出せず、1弦の音が細くて刺々しい音質になってしまいました。
これは、ギタリスト朴 葵姫(パク・キュヒ) さんが使っているギター製作家ダニエル・フレドリッシュの杉の楽器を弾いたときも同様です。
大変高額な楽器で、周囲の友人・知人はフレドリッシュを絶賛していたのですが、私には合いませんでした。
逆に、松の楽器であるハウザーやブーシェの系統の楽器は自分のタッチに良く合っていました。
良い音を出そうとすると音の太さ、密度、遠達性が上がっているのが良くわかりました。
ふくよかな音を出すタッチの方は、杉の楽器が合う場合もあるでしょう。
小学生で好きになった人と結婚するか
ギターを弾き始めて経験は浅いけれど、自分にとっては高額な楽器を買った!
私はこれを死ぬまで使い続ける!
そう思う方は多いと思います。
(みんなそうですね)
乱暴な例えですが、小学校の低学年で好きになった異性と一生添い遂げることを、その時の年齢で決められるでしょうか。
その人が本当に自分に合う人なのか、小学生には分からないため、無理だと思います。
子供の感覚で一緒にいたいと思っても、大人になって住む世界が違っていた、とか
成長の中で自分なりの基準が生まれるでしょう。
楽器選びも同じだと思います。
楽器演奏が上達して音楽的な欲求(こんな音が欲しい)が生まれ、
色々な楽器を見て本当に自分に合う楽器が分かります。
経験(比較の対象)が無いと分からないことです。
本当に相性が合う相手であれば、会話が弾んだり、長い時間一緒にいられるでしょうし、
楽器の場合でも、すぐに仲良くなって良い音が出せたり、飽きずに弾き続けることが出来るでしょう。
相性が良くない楽器と仲良くなれないのか
楽器との相性が良くないというのは、
楽器の本来の音が好きではなくて、それを無意識に抑えようとして楽器のポテンシャルを引き出せない状態です。
当初は弾きこなせなかった楽器を、弾きこなせるようになるのは可能です。
弾きこなせるようになる、というのは「コツを掴んで、あまり苦労せずに良い音が出せるようになる」ということです。
どういった弾き方をすれば良い音が出るのか、感覚を駆使して楽器に順応するわけです。
ただ、これには時間がかかります。
海外の製作家の楽器ですと、外国語の発音に含まれる成分(日本語に無い成分)が楽器の音にも含まれています。
外国語の聞き取りが出来るようになるのと同じように、楽器に慣れるのにも時間がかかります。
また、楽器そのものが良い個体でない場合もあり、そのことに初心者が気が付くことが難しいケースもあります。
必死に仲良くなろうとしたけれど、そもそもの性格に難があったということです。
私は今は色々な楽器を弾けるようになってきた(良い音を出せる楽器が増えた)と感じていて、
その理由は、楽器店等で「沢山の種類のギターを弾かせてもらった経験がある」からだと思います。
相性が合わない1本と格闘し続けるよりも、色々な楽器にふれることで自分の感覚が育まれていくように思います。
(それが物理的に難しい方もいるでしょう)
「嫌な音を恐れながら」では良い音楽は作れない
音をコントロールしきれていない時に耳障りな音が出ると冒頭で書きました。
それなら技術的に「完璧にコントロールすれば問題ないのでは」と思うかもしれません。
しかし、「悪い音が出てしまうのでは」と恐れがあると、良い音楽は出来ません。
深くタッチして耳障りな音が一層大きく出てしまうのでは、と思っていると、タッチはどんどん貧弱になってしまいます。
(あなたにとって相性の)良い楽器は、あまり気を使わなくても耳障りな音質になり難く、良く鳴ってくれます。
銘器と呼ばれる楽器は、タッチに対しておおらかなのに、変化も付けることが出来るという相反するバランスを持っています。
対策その2「弦を替える」
上記に書いたことは正論なのですが、新しい楽器を手に入れるのは簡単ではありません。
1弦の音がキンキンするのであれば、音質が太い弦やマイルドな弦を使ってみるのも良いと思います。
具体的には、以下の通りです。
プロアルテやハナバッハは、張りの弱いノーマルテンション以下のものを選ぶと良いでしょう。
- オーガスチンのリーガル(太い)
- プロアルテ(柔らかくてクリア)
- ハナバッハ(柔らかくて気品がある)
「1弦がキンキンする」ということに悩んでいるのであれば、3弦だけカーボン弦を使用するのはやめた方が良いです。
1本でもカーボン弦が入ると、他の弦の音質も明るくなります。
音質を柔らかくするアプローチも良いですが、楽器によっては相性が良い弦を張ることでマイナス面が消えることもあります。
今回の記事は以上となります。
「沢山練習しても、音がどうしても気に入らないなら、楽器を変えてしまおう」という乱暴な記事なのですが、
「自分で一度選んだものは最後まで使うべき」ということに縛られてはいけないと思います。
配偶者と離婚することは、社会的に色々なしがらみがありますが、楽器はお金の問題がメインです。
自分の先生が良い音を出した楽器が、自分に合っているとは限らないものです。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。