【人気はない】クラシックギター業界の現状と未来を考える。

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クラシックギターはあまり人気のない楽器です。ピアノ・エレキギター・アコースティックギターと比べるとはるかに知名度・人気は劣ります。

私はクラシックギターを愛しておりますが、同時にクラシックギター業界の未来を憂いています。

この記事では、クラシックギター業界が置かれている状況を考えます。私は普段は前向きな人間ですが、クラシックギター業界を盛り上げる答えは見つかりません。少々ネガティブな記事になってしまうことを了承下さい。

私が情報を整理することによって、誰かが活路を見い出すきっかけになれば幸いです。

この記事でわかること

セゴビアから始まったクラシックギターのブームも落ち着いていく

アンドレス・セゴビア
アンドレス・セゴビア

ギターは楽器の長い歴史の中で、その存在感を強く示した時代があります。

19世紀(1800年代)、古典からロマン派の時代には沢山のギタリスト・作曲家が活躍しました。

  • F.ソル
  • D.アグアド
  • M.ジュリアーニ
  • F.カルリ
  • J.レゴンディ
  • W.T.マティーカ
  • N.コスト

20世紀に入り、J.アルカス、F.タレガ、M.リョベート、A.セゴビアへとギターの伝統が受け継がれていきます。セゴビアのために、多くの作曲家が曲を書きました。クラシックギターの黄金時代です。

  • J.ロドリーゴ
  • M.C.テデスコ
  • M.M.ポンセ
  • A.タンスマン
  • H.ヴィラ・ロボス
  • F.M.トローバ

セゴビアの後、D.ラッセルやM.バルエコ、現代ではM.ディラ等の演奏家が活躍しています。セゴビア無きクラシックギター界を支える存在です。

しかし、クラシックギターという分野・業界への影響力を考えると、この現状ですらもセゴビアが生んだムーブメントの一部に過ぎないのかもしれません。後続の演奏家が業界構造を変えるほどの変化をもたらしていないということです。(もちろん皆、素晴らしい演奏家です)

セゴビアによるギターブームで楽器を始めた世代の高齢化によりクラシックギター業界の熱量はどうしても落ち着いていくと思います。更に業界を盛り上げるための「新しいエネルギーをどうやって作っていくか」が誰も答えを見つけられていない大きな問題です。

「美男美女が」「高い技術で」「流行の曲を」弾いてもウケない

クラシックギター人気の低下に対し、以下の意見があります。

  • 見栄えの良いスターがいないから
  • クラシックギターのレパートリーに拘っているから
  • 営業が下手だから

こういった状況を踏まえて、現代のプロ奏者達がギター業界を盛り上げるためにYouTube等のメディアを活用しています。しかし、日本のクラシックギターに関するYouTubeチャンネルは内容が良くてもそれほど再生されないように思います。

見た目が良い奏者達が高い技術で流行の曲を弾いても、期待する程の反響が得られていません。

「YouTubeで流行らない = 今後、衰退する」ではないのですが、行く末を暗示しているようで心配です。

派手でノーミスの流行曲が簡単に聴ける時代

現在は、パソコンで曲を作るDTM(デスクトップミュージック)が全盛です。DTMで作曲された楽曲は、ノーミスで沢山の楽器が派手に鳴っています。

これと比べるとクラシックギターは地味です。よほど演奏に魅力がない限り、クラシックギターでなく流行りの曲を聴くのは当然だと思います。

「魅力的で流行っている曲を自分も演奏したい」と思うのは自然なことで、エレキギターやキーボードが流行るのには理由があります。

昭和歌謡はクラシックギターよりも魅力がない

私はよくサウナに行くのですが、部屋の中で昭和歌謡がよく流れます。

世代の方には大変申し訳ないのですが、昭和歌謡は「曲も歌もレベルが低い」です。童謡以下の楽曲や、音程が取れず表現に乏しい歌手が溢れています。西洋で生まれた文化や楽器を模倣して、日本国内で音楽を作ろうとした黎明期であるため、品質が低いのは仕方ないことと思います。

流行曲に魅力がない時代であれば、文化と歴史の積み重ねがあるクラシックギターに人気がある理由も分かります。

現在はJーポップの「作曲・歌」のレベルは非常に高くなっています。ネットにより情報が受け継がれ、多くの人が参加するためです。この状況では、クラシックギターは分が悪いです。

「リスナー」を批判するのは間違い

クラシックギターの人気が衰えていく中で、「聴衆は派手な曲ばかり聴いて耳が衰えている」「生音の魅力を忘れている」とリスナーを批判する意見もあります。

お客様を批判する姿勢は「楽器を弾く側」としては失格です。

「流行りの音楽の方が派手で、それは今後も変わらない」のは既に分かりきっていることです。また、競技人口の多いポップスの最前線に立つ音楽家達のレベルは極めて高いです。リスナーの音楽の判断力も磨かれています。

演奏する立場としては、現代の状況でも「ギター1本でも、聴く価値がある」と感じさせる音楽をする必要があります。

クラシックギターの生音・生演奏には魅力がある

クラシックギターの生演奏の魅力は他の楽器に比べて全く見劣りしません。

生演奏では演奏者ごとの音の差も非常に大きく、楽器の音の広がり方、鳴り方がそれぞれ全く違います。(悪い部分もはっきりでますが)条件が合えば、生でスポーツを観ているような臨場感があります。

しかし、録音され、一般家庭の機材で再生されるとどの演奏家の音も同じように聴こえ、魅力が半減してしまいます。音色で奏者が誰か分かるのは、癖が強い音が多かった時代の演奏家だけです。

テレビ番組やCMで流れているクラシックギターの演奏を聴いて、「もっと聴きたい」「自分も弾いてみたい」と思う人は少ないのではないでしょうか。ピアノやヴァイオリンの音は充分ブライトで音量があり、録音でもその魅力を伝えてくれます。

刺激的な音がありふれた社会において、清楚なギターの音はどうしても霞んでしまいます。

クラシックギターは「聴く」よりも「弾く」楽器になるかも

録音では魅力が伝わりにくいクラシックギターですが、一度弾いていただければ音色の魅力は充分に伝わります。入門レベルなら楽器も非常に安価であるため、手軽に始めることが出来ます。

クラシックギターに触れたことがあれば「プレイヤー」は増えていきますが、「リスナー」は増えにくいかもしれません。

わざわざクラシックギターのコンサートに行く人に「プレイヤー」が多い理由がこの点にあると思います。

リスナーにギターの音色の魅力をどうやってつたえるか

クラシックギター業界の一番の課題は、「音の魅力をどうやって伝えるか」です。(当たり前なんですが)

他の楽器に比べてリスナーに対するプレイヤーの割合が多く、身内ばかりの狭い世界になっています。

クラシックギターのYouTubeチャンネルを観ても、「弾き方」に関する情報が多いと感じます。視聴者を「リスナー」でなく「プレイヤー」として認識している証拠です。(このブログも完全にそうなのですが)

マイクを通したり、エレガットを使ったり、どんな手段を使ってもいいので、ギターの魅力を伝える方法を見つけることが重要です。ただし、それによって他の楽器の劣化版となっては意味がありません。

音量や音色は今後もギター業界の大きな課題です。音量を求めてマイクやピックアップを使うのは、ジョン・ウィリアムズ等の多くのギタリストが試してきました。楽器そのものが抱える課題のため、技術に優れたスターが生まれたとしても何も状況は変わりません。

人気がなくても、プレイヤーがいなくなることはない

様々な入り口でクラシックギターのプレイヤーは増えます。全くいなくなってしまうことはないでしょう。

その例を考えます。

他のギターを弾いていたプレイヤーがクラシックギターを弾く

エレキギターやスチール弦のアコースティックギターを弾いていたプレイヤーがクラシックギターを弾くパターンは多いように思います。

クラシックギターには歴史によって成熟したメソッドやテクニックが積み上がっています。その他のギターを弾いている方からすると魅力があります。また、クラシック音楽を通じて、体系的に音楽理論を学べます。

エレキギターやアコースティックギターも歴史を積み重ねて技術が発達し、クラシックギターの優位性が薄れるかもしれません。しかし、ナイロン弦の音楽の表現力は極めて優れています。

私はクラシックギターの魅力は「ポリフォニー」と「ビブラート」にあると考えています。

ギターの音色の幅は素晴らしいのですが、クラシックの演奏に使われる楽器はどの楽器も音色の幅を持っていることを主張しています。差別化できるような要素とは思っていません。

ストロークやラスゲアード等の弾き方も見栄えは良いのですが、クラシックギターの独自性とは思えません。フラメンコギターやスチール弦でも可能な奏法です。

早期教育としてクラシックギターを弾く

親や祖父・祖母がクラシックギターに触れたことがあり、「子供にギターを習わせたい」と思う方は一定数います。

クラシックギターはピアノやヴァイオリン程は競争が激しくないため、良い先生に習って全力で努力すればコンクール等で入賞できる可能性があります。

「競技人口が減れば勝てる確率も上がる」ということで、完全に奏者がいなくなることはないでしょう。(コンクールのレベル自体は、奏者が減っても上がっています)

大学・高校の部活・サークルでギターを弾く

大学・高校の部活やサークルからクラシックギターを始める人もいます。(私もそうです)

学生ギターコンクールは、子供の頃からギターを弾いている天才少年・少女が多くレベルが高いです。大学や高校からギターを弾き始めた人を対象としたコンクールがあっても良いかもしれません。

他のコンクールで上位入賞歴がない人のみが出られるアマチュアギターコンクールという大会があります。こういったアマチュア向けの催しなら「コンクール参加経験無し、音大の学生でない」場合は学生が参加しても良いのではと思ったりもします。

大学・高校でギターを始めた人が、やめない仕組みづくりは重要と考えています。

重奏やマンドリンアンサンブルからクラシックギターを弾く

学生や社会人が、重奏やマンドリンアンサンブルからギターを始める人も多いでしょう。私は、この状況は永遠に続くとは思いません。

クラシックギターと奏法が似た楽器にリュートというものがあります。リュートは独奏楽器としてだけでなく、ルネサンスやバロック時代にアンサンブルの重要な構成員としての地位を築いており、これが無くなることはないでしょう。リュートに比べると、ギターは他の楽器との重奏の歴史は短いです。(19世紀のレパートリーはある)

ギターだけのアンサンブルが今後も続くことを私はあまり期待していません。良い文化ですが、人数の減少によりサークルが無くなってしまえば、そこで途絶えてしまうように思います。

今回の記事は以上となります。

私はギターが好きなので、自分が死ぬまで楽しめればそれで良いとは思えません。リスナーの層を増やし、開かれた業界を作る必要があると考えます。私ができることは微力ですが、今後もクラシックギター業界が盛り上がることを祈っております。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

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