今回の記事は、タイトルが当たり前過ぎてあまり読まれない
のではないかと思います。
しかし、私は本番の演奏で自分の音を聴けていませんでした。
下記に該当する場合は、自分が出した音を聴くことが出来ていません。
- 本番で音量が大きすぎる
- 練習と同じように小さい音を出す(会場の音響が悪くても)
- 本番でタッチが強すぎて音を潰してしまう
- 狙ったテンポに対して走るorもたつく
緊張しないための方法は「今に集中すること」です。
自分がどうにか出来るのは「今」だけです。
下記の場合、集中出来ていません。
「もう少し先に難しい部分がある」
「この演奏なら賞をもらえるかも」
「早く演奏を終えたい」
「さっきのフレーズでミスをしてしまった」
私のケースでは「身体の感覚」において、
「今に集中すること」は出来るようになっていたと思います。
しかし、「音」においては全くそうではありませんでした。
つまり「自分の音が聴けていなかった」のです。
重奏では緊張しないけれど、独奏では緊張する
というケースに心当たりはありますでしょうか。
この理由は「独奏では音を良く聴いていないから」が
大部分を占めるかも、と思っています。
当てはまるなら「音を正確に聴いていない」かもしれません。
2つのパターンで、音が聴こえていないことを考えます。
①練習の感覚にこだわって音を聴かない
環境が変われば、演奏も変わる
バロックや古典の演奏を考える際によく言われることですが、
会場の響きが変われば、アーティキュレーションを変化させなければなりません。
標準的なホールなら自宅と同じ弾き方でかまいませんが、
響きの良い教会なら、音を鋭く切っても丁度良く聴こえます。
演奏の際に毎回気を付けていますが、
エアコンの音がうるさい会場で、
聴こえないようなピアニッシモを使っても無意味です。
「練習で用意してきたことをしたい」だけ
練習で準備してきた演奏にこだわってしまう人は、
手元の音までは聴けていたとしても、
会場全体へ広がる音は聴けていません。
完成度が高くても、自己満足の演奏になります。
本来、空間に対して演奏の内容を微調整しなくてはなりません。
本番でテンポが走ってしまう人は、
練習のときに感じた指の感覚で弾きたいだけで、
緊張下で音がどのように並んでいるかを聴いていません。
(練習でテンポが走る人は、練習の時点で音が聴こえていません)
②緊張や気持ちが先走ることで音を聴かない
音が大きすぎる、音を潰してしまう人
会場に音を伝えたいという気持ちが先走ったりして、
音が強すぎる、音を潰してしまう人も音を聴けていません。
(私です)
どんなに上手い人でも、本人が音を聴けているつもりでも、
下記のケースに該当するなら、音は完全には聴けていません。
- 音が大きすぎる、音を潰す
- タッチが強すぎて楽器が過剰にヘタる
- 練習に比べて音量の範囲が狭くなる
結論「音がもたらす効果を聴くべき」
作曲家が書いた音には全て意味があります。
そのため、自分の出した音が空間にどのような効果をもたらしたか
を正しく捉える必要があります。
響きや音色、音量を聴く努力をしましょう。
(パラメータに幅がある程、演奏者自身の耳も引き寄せられる)
もし演奏者が音を聴けていたとしても、音による効果を意識しないで弾くのは
無意味に音を出しているのと同じです。
楽器によって演奏者に音が聴こえやすいかどうかは違いますが、
演奏において、聴く側と演奏者の印象が大きく異なる場合は、
どんなに良い演奏であっても自分の音は聴けていません。
逆に言いますと
「自分の音が聴く側にどのように聴こえているか」の感覚があること
が最も自分の音が聴こえている状態です。
「広い会場では、そんな感覚は無い!」と思いますし、
勿論私もその領域に到達出来ていないのですが、
要は練習の時と同じ感覚になれば良いわけです。
若しくは二重奏の相手の音を聴く感覚で自分の音を聴きましょう。
「音は前に飛ぶから~」と言い訳をしてしまいますが、
そもそも全て音が前に飛んだら奏者に全く聴こえないので
出来る範囲で聴こえる音を捉えなければなりません。
「今に集中すること」が1番の緊張対策でして、
「身体の感覚」も重要なのですが、
我々がやっているのはスポーツでなく音楽ですので、
「今どんな音が鳴っているか」が最重要です。
(身体の感覚は、練習と同じでなく音によって変えなければいけない)
そのためにも、自分が弾く音の意味を練習で明らかにしておく必要があります。
今回の記事は以上となります。
音を正しく捉えて自在に操れる状態が音楽家の理想ですので、
技術以前に、まずは聴く方を磨くべきです。
大袈裟かもしれませんが、音を正確に聴き取れるようにして
自分の身体感覚とリンクさせることが出来たら、
全く緊張していない状態と同じ演奏が出来ると感じています。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。