ルカ・ワルドナーを譲っていただきました。

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腱鞘炎日記の著者、サンチョさんからルカ・ワルドナーをお安く譲って頂きました。
(サンチョさん、大変良いお話を有難うございました)

譲っていただいた10日後にアマチュアギターコンクールで使用しまして、演奏後に楽器のことについて沢山質問を受けまして、よく音が通っていたようです。
自分の演奏は良くなかったからか、さほど触れられませんでした(笑)

この記事でわかること

譲っていただいた経緯

最近、コンクールで使いやすい音量のある楽器を探していました。
手持ちのドイツ系の楽器でもしっかり音は通るのですが、人によっては成分が聴き取りにくいようで、あまり良い評価を頂けないこともありました。

また、音質が最高でかなり音量がある部類の名器を使っても、コンクールのようなせわしない状況で比べられると優位性は薄れるように思いました。
ここ数年で更に安価で音量のある楽器やサバレス系の鳴りやすい弦が普及して、音量だけなら誰でも出せるようになったと感じています。

過去には2000年代後半に製作されたアントニオ・マリンも持っていたのですが、それでも明るすぎて制御できませんでした。(演奏技術が未熟です)
私自身がどうしても落ち着いた音色が好きで、コントロールしきれていない明るい音色が全てミスタッチに感じることが不満でした。

同じ音量と伸びがある楽器でも、歌を感じさせるイタリアの作品は明るさが私の好みだったので、ずっと良いものが無いか探しておりました。

そこで、サンチョさんがアマチュアの発表会でルカを使っていたのを聴いて「もし手放すことがあればお話を頂けませんか」と伝えていた次第です。

以下、詳細にレビューしていきます。

外観

表面板

色の濃い塗装が美しいです。
しかし、イタリアンスプルースが焼けるとこういった色になるので、塗装の濃さなのか、焼けなのか断定は出来ません。
ボディシェイプはオーソドックスなトーレスモデルです。
私はトーレスモデルはタッチが喧嘩してしまうのですが、イタリア系のトーレスモデルだけは普通に弾けます。

ロゼッタもそうなのですが、バインディングとパーフリングがイタリアンカラーになっています。
これはお国柄を感じるようで、好きなセンスです。

横板、裏板

裏板、横板に綺麗な柾目のハカランダを使っているのに、ローズウッドを使用しているものと比べてもとても軽い楽器です。
ハカランダは比重0.85、ローズウッドは0.75~0.85とのことです。
(参照 木材の比重リスト

表面板は極端に膨らんだりはしていないので、横板と裏板が薄いのだと思います。
椅子の上に仰向けで置くと、ちょっとした弾みでネック側に倒れそうになるくらいボディ側が軽い楽器です。ラッカーでピカピカなので、照明の反射が入るのは仕方ないと諦めました。

ヘッド

ヘッドは正直なところラッカーの艶で質感が安っぽく感じます。
シンプルなシェイプはトーレスらしくて良いですね。
ハカランダの突板が貼られています。

糸巻きはゴトーの高雅・KO-GAです。
スローンからこちらに変更しているようで、サンチョさんの御厚意でスローンに糸巻きを戻さずに譲っていただきました。(腱鞘炎日記参照
初めてゴトーのホームページでこれを見た時はあまりの格好悪さに驚きましたが、まさか所有する日が来るとは夢にも思いませんでした(笑)
付けてしまえば、以外と違和感はないです。(黒くて地味なので)
最近、ゴトーの河野ギター用糸巻きを触って程良く重いトルク感に感動しましたが、これはそれよりは動きが軽いです。
同じ軽いアクションでも、他のゴトーの糸巻きよりはワンランク上の操作感があります。
4弦のペグの動きに遊びがあるので、締め直したいところです。
(専用のスパナがあるんでしょうか)

ヒール、ネック

ネックも薄く弾きやすいです。
でも、ラッカー塗装が厚いのは感じます。
ヒールが丸いのは、ルイジ・ロカットのときと同じです。
機能美だと思うのですが、イタリアンカラーと合わせてみると何だか可愛く見えてきます。

音について

先に結論を述べますと、元々張られていた弦を変更し、ナットとサドルを自分で調整した結果、大まかに3段階で変化しました。

レビューもそれぞれの状態を書きたいと思います。

  1. ラティスブレーシングのような輝かしい音
    (爆音だがコントロールが難しい)
  2. イタリア版ポール・フィッシャー的トーレスモデル
    (ラッカーの音という意味でポール・フィッシャーっぽくなりました)
  3. トーレスモデルの古名器
    (自分が好きな段階)

ちなみに、ルカ・ワルドナーのオリジナルモデルと思しき楽器も過去に弾いたことがあるのですが、それほどイタリアらしさを感じず、食指は動きませんでした。

初めの印象(ラティスブレーシングっぽい)

譲り受けた状態では、音はかなり軽く弾いても出るのですが、張りはそれなりに強い状態でした。
レスポンスはトーレスっぽさを感じるのですが、音質はトーレス+ラティスブレーシングのようです。
イタリア的要素も感じるのですが、歌う感じもありながら単純に音質が明るいです。

ウルフがE付近にあってボワンと聴こえるところははっきりとトーレスモデルでした。
低音の細かいバランスにこだわる人はこういう楽器は選ばないと思います。

こういった音質の低音は、膨らむだけであまり飛ばないと思っていたのですが、コンクールで低音が凄いという声も頂いたので、考えを改める必要がありそうです。
(奏者のタッチとの相性も大きい気がします)

また、ウルフが低いことにより低音の音が良く立ってくれて、6弦の連打でもとても効果的に機能します。
グランソロや

大序曲でも良さそうです。

張りの強さの原因は、セラックでなくラッカー塗装であるからだと思います。
グロンドーナが製作に監修しておりオーセンティックな楽器だと思っていたので、ラッカー塗装だったことはとても意外でした。(てっきりセラックと思っていました)
海外で売られている個体を探してみると、通常はセラック塗装のようです。

当初、弦は1-3弦ニュークリスタル、4-6弦コラム?が張られていました。
(4-6弦はカンティーガとお聞きしたのですが、重量感が無くレスポンスが良いので、コラムかもしれないと思っています)

ニュークリスタルやコラムのような鋭く明るい成分の音質を、ラッカー塗装に引っ掛けることで大音量を実現していると思いました。
音質が好みでなくサバレスを避けてきたのですが、この楽器(この状態の)にはかなり合いそうです。

ラッカー塗装の場合、普通はある程度の硬さが音質に現れるのですが、イタリア人が作っているからか、硬い音質の成分が伸びや明るさに変換されています。
音の太さはそれなりなのですが、イタリア的な倍音成分の多さによって、堂々とした音に聴こえます。

音の分離は普通だと思うのですが、それぞれの音が伸びて「私はここにいます!」と主張しているような状態なので、声部は非常に聴き取りやすいです。

ヴァイオリンがイタリア製の楽器で何でも弾いてしまうことを考えると、それなりに広いレパートリーにマッチするように思います。

タッチへの反応に関しては、量産ギター位の音の粗さがあり、繊細ではないです。
サンチョさんも、弱音で弾きたいときに音が出すぎてしまうので手放すことを決めたようです。
私は当初、ステージに上がったときに緊張で細部までは仕上げられないことを考えると、これくらい音量があって大雑把なギターも悪くないかと思いました。
(反応に関する印象は、調整した結果全く変わってしまいました)

調整してからの印象(ポール・フィッシャーっぽい)

ナット側の弦高を少し下げ、サドルもそれなり下げました。

弦は3弦だけニュークリスタルのまま、1-2弦をオーガスチンリーガル、4-6をオーガスチン赤にしました。
弦のチョイスも、何度も変えたり戻したりを繰り返して決めました。
(コンクール直前に何をやっているのでしょうか)

 

その結果、ピーキーさが消え、ポール・フィッシャーのような(ラッカーっぽい)反応と音を持ったトーレスモデルになりました。

最初の状態に比べると大分コントロールし易いです。

「弦高が高い+明るい音質の弦」の状態では、爆音なのですが弱音の繊細なコントロールが効きません。
ニュークリスタルを1~3弦まで全て使うのは、私には音が明るすぎて無理でした。
コラムはしなやかで楽器も良く鳴ってくれるのですが、コラム自体の低音の音の細さが高音にも反映されているような感覚があり、低音は重量感による魅力がありませんでした

他のイタリアの楽器を使っていた際に、リーガルのような太い弦を張って歌わせるのが一番と感じていました。

しかし、この楽器は太すぎる弦ではラッカー塗装のせいで高音が詰まってしまいます。
高音の抜けの悪さは、弦高を下げてテンションを落とすことでかなり改善しました。

ラッカー塗装は悪い面ばかりではなくて、音にエッジを持たせて適度に引き締めるという意味で良い塗装だと思っています。
思い通りの材料は中々手に入りにくいでしょうから、弾き込み過ぎによって音が熟れすぎ(柔らかすぎ)ないよう塗装で保護するのも方法のひとつなのかもしれません。

部屋で調整している段階では、ナットとサドルを調整したことにより楽器が落ちついていき音量もだいぶ無くなったように感じ、「この判断はどうなんだろう」と自問していました。
弦高が高い方が「音が鋭い」ので、その分コントロールは難しいのですが音量はありました。

音優先で調整したいとは思うのですが、あまりに弾きにくいのでは人前で使えないという結論になりました。

コンクール前後の印象(トーレス系古名器っぽい)

アマコンで弾いたときはトーレスモデル+ポール・フィッシャーっぽいラッカーの音だったのですが、それでも「1弦の音の細さや明るさ、コントロールしにくさ」が気になっていました。
他の方に弾いてもらうと、かなり落ち着いていて既に古名器っぽいのですが、自分で弾くとまだ耳に痛い明るさを感じるので、もう少しサドル(1弦と2弦)を下げようと思っています。

セラック塗装よりも、ラッカー塗装の方が調整した内容が音に反映されるまで時間がかかるので、コンクール後も微妙に変化しています。

自宅の部屋で調整していたときは、落ち着きすぎてパワーが落ちることでこの楽器らしさが無くなってしまうことを心配していました。
しかし、アマコンの大きいホールであれだけ音が通るのであれば全く問題なさそうです。

弦高を下げると、イタリア的な明るさが歌わせやすさに変化していくのが良く分かりました。

調整前の戦闘能力が高い音が好きな方も多いと思うのですが、落ち着いた音質で張りが弱く歌わせやすい今の状態が大変気に入っております。
個性的で癖も強いですが、中々かわいい子です。

会場の大きさや選曲に合わせて楽器を使い分けていきたいと思っています。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

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