ギター製作家ホセ・ルイス・ロマニリョス氏が逝去されました。

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ギター製作家のホセ・ルイス・ロマニリョス氏が逝去されました。
日付が正確かどうかは分かりませんが、シグエンサ市のフェイスブックページによると2022年2月12日に報じられております。

私がギター製作家ホセ・ルイス・ロマニリョス氏に思うことをまとめます。

この記事でわかること

過小評価されている?

ギター製作家として、ホセ・ルイス・ロマニリョス氏は絶大な評価を受けております。
しかし、製作家として彼が最も活躍した時代のギターを弾いたことがあるという方は、それほど多くないのではと思います。
ギター歴がかなり長い人、熱心にギター専門店に通った人、プロが所有するロマニリョスを見せてもらえるような交友関係がある人でないと、傑作と呼べる作品に出会うことは難しい印象です。

お目にかかる機会の多いロマニリョスは「特上」とまで呼べるものは数が少ないです。
ハイレベルな個体を見たことが無い人には製作家ホセ・ルイス・ロマニリョス氏はむしろ過小評価されているように思えます。
逆に言いますと、市場価格は知名度や妄想により過大評価されているでしょう。

この記事をどのように書くか、非常に迷いました。
製作家としてのホセ・ルイス・ロマニリョス氏が、最上の作品が見られる機会が少ないことにより低い評価を受けているのは不服です。
しかし、私が偏った意見を書くことによって、「この年代が必ず良いんだ!」というギターの音から乖離した決めつけや偏見が生まれるのも本意ではありません。
(多方面に迷惑がかかりそうです)

作ったのは本人なのか、息子なのか。

ロマニリョス(アンドサンを含む)と呼ばれるギターは以下のパターンに分類されます。

  • ホセ・ルイス・ロマニリョス氏本人が製作したもの
  • ホセ・ルイス・ロマニリョス氏とリアム・ロマニリョスの分業で製作したもの
  • リアム・ロマニリョス氏が製作したもの
    (ホセ・ルイス・ロマニリョス氏は監修のみ?)

確実にホセ・ルイス・ロマニリョス氏本人が作ったであろう1970年代前半の固体はギター専門店にたまに並んでいる印象があります。
木の音が生きている純粋にギターらしい音色の楽器という印象です。
それ以降の年代のホセ・ルイス本人が1人で作ったギターを弾いたことがある人は、それほど多くないでしょう。

私は最初にギター習った先生から、「ホセ・ルイス・ロマニリョス氏は、同じギターを作らない(1本毎に異なる工夫をする)」という話を伺っておりました。
仮に同じ構造に見えるものであっても、違う意図があるケースもあるようです。
私が弾いた中でも、本人が作ったであろう年代の特上の個体にはそれぞれに明確な特徴・個性を感じました。
(となると、最近良く見かけるロマニリョスコピーのオリジナルは何なのかが気になります)

現在も店頭に並ぶようなホセ・ルイス・ロマニリョスアンドサンのギターに、私はそういった印象は受けません。
ホセ・ルイス・ロマニリョス名義の晩年の楽器も、あくまで同じような構造で作った範囲でのバラつき具合に感じます。
本人作とされている楽器の中でも、「ごく最近の傾向と似ている」と言えるようなものは息子リアム氏の作業比率が多いのではないでしょうか。

私はとある楽器店の方から「どの期間のロマニリョスが良いか」伺ったことがあります。
具体的な年代を聞きましたが、様々な固体を見ると明確に線引き出来るようなものではなさそうです。

私も詳しくない

ここまでべらべらと書いておきながら白状しますが、私も経験不足です。
ホセ・ルイス・ロマニリョス氏の本領発揮と呼べるギターを沢山見てきたとは言えません。

思い出せる範囲で、ロマニリョス氏本人の作品で7本程、ロマニリョスアンドサン名義を加えると15本以上を弾きました。
「これがロマニリョス本人のやりたかったことなのだ」と明確に感じたのは、そのうち2~3本位です。
(本人作の中にも、リアム氏との共作が含まれる)

ギター製作は属人化

私はギター製作(楽器製作)は属人化したものであると思っています。
作業のマニュアル化が不可能で、個人の能力に依存するということです。
芸術の要素を含むあらゆる活動は、本人でないと再現不可でしょう。
(本人であっても難しい?)

私はロマニリョスご本人にお会いしたことはありませんが、頑固・変わり者と思えるような情報があります。
孤高の人 ロマニリョス | アウラギターサロン
ギター製作に関する講習会を開催しており、ギターとその製作への愛情が相当に深かったことは間違いないでしょう。
素晴らしいギターを作ることは属人化したものであるため、ギター製作の講習会には相当の苦労・苦悩・葛藤があったのではないかと推測しています。

ギター製作において、木工技術や効率の良い振動等の指導は可能だと思いますが、音楽性を受け継ぐことは出来ないと私は考えています。
それが出来るのであれば、ホセ・ルイス氏と同一傾向の楽器を息子のリアム氏が作っているはずです。
講習会で指導したとしても、製作家本人が持っているアイデア・イマジネーションを最大限引き出すような製作方法を伝えるのが限界と思います。

ロマニリョスの講習会に参加した日本の製作家であっても、ギターに音楽的な負荷要素がほとんど無いと感じる場合もあります。
また別の方で、「ロマニリョスの講習等によるスペインの伝統的なギター製作に関するノウハウが無ければ、良いギターは作れない」と考える製作家もいるようです。
その方の作品を見ると、そもそも充分な音楽性があるような気もします。
「結局は独学でも良いギターを作ったのでは?」と邪推してしまいます。
(最後は個人の能力に依存する)
日本のギター製作家は指物師でしかない?? – 腱鞘炎(ジストニア)日記

音楽が濃い

一般的な印象であれば、トーレス、サントス、エステソ、シンプリシオ等が音楽的に濃い楽器と思います。
私の経験の中では、それらの楽器を上回って最も音楽性の深さに圧倒されたのがブーシェです。
それに次いでロマニリョスが濃厚だと思いました。

スペインの古名器は現存する個体が少ないため、比較する条件としてはフェアでないでしょう。
1940~1970年頃にギターを弾いていれば、また違う意見になるかもしれません。

1930年前後の楽器はギターとしての自然な音の立ち上がり・減衰が美しいです。
ロマニリョスやブーシェ等の1970年前後のギターは、充分な濃厚さを保ちつつ、機能面の強化がなされています。

やはり、ホセ・ルイス・ロマニリョス氏の楽器を1度は持ってみたいですね。
これが今回の結論です。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

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この記事でわかること