天才ギタリスト「ジョン・ウィリアムス」について。

PR〈景品表示法に基づく表記〉

セゴビアがギターの貴公子(プリンス)と称したオーストラリア出身の1941年生まれのギタリスト「ジョン・ウィリアムス」について、この記事でまとめます。

余談です。
日本語表記について、Wikipediaより下記の内容が書かれていました。
映画音楽で有名なアメリカの作曲家ジョン・ウィリアムズとの重複回避のためかもしれませんね。

「Williams」は「ウィリアムズ」と表記するのが一般的だが、専属契約先であるソニー・クラシカルでは、すべてのCDで姓の表記を「ウィリアムス」としている。

この記事でわかること

ジョン・ウィリアムスの音楽について

テンポを大きく揺らすセゴビアやブリームに比べると、ジョン・ウィリアムスは端正な演奏です。
(セゴビアやブリームがやり過ぎでしょうが)

強靭なタッチを持っており、楽器の能力を最大限に引き出したパフォーマンスを聴くことができます。
ギターの魅力である音色を楽しめる演奏で、現代的なデジタルな音楽とは全く異なります。

セゴビアの影響?

ジョン・ウィリアムスはギターの神様アンドレアス・セゴビアに見初められ、直接の指導を受けていました。
しかし、セゴビアの死後は師匠であるセゴビアに対しての否定的な発言も目立ちます。

ジョンの演奏を聴くと、師匠であるセゴビアに由来するようなテンポの溜めを聴くことができます。
(ソルのエチュード等の古典の曲であっても)
ジョンの音楽の中には、間違いなくセゴビアの音楽性があるでしょう。

しかし、この年代のギタリスト達はすべからくセゴビアの影響を受けたでしょうから、「セゴビアの指導の賜物!」と一概に言い切ることは出来ないかもしれません。

バリオスを多数録音している

ジョン・ウィリアムスは南米のパラグアイのギタリスト兼作曲家のアグスティン・バリオスの楽曲を多数録音しています。

師匠であるアンドレアス・セゴビアはバリオスと仲が悪かったようです。
セゴビアと異なる、バリオスの音楽への姿勢が伺えます。

録音の演奏について、ジョンはバリオスの楽曲の一部分を自ら改編しています。
セゴビアがA.バリオスに対して「クラシックでなく南米音楽だ」と判断したような部分について、ジョン・ウィリアムスも同様に感じ編曲したと私は勝手に解釈しています。
(セゴビアの指導なのか、ロンドンの音楽院の教育なのか分かりません)

ジョン・ウィリアムスの楽器について

ジョンは下記の楽器を使用したとされています。

  1.  イグナシオ・フレタ 1961 松/ローズウッド
  2.  エルナンデス・イ・アグアド 196?
  3.  イグナシオ・フレタ 197? 杉/ローズウッド
  4.  マーチン・フリーソン
  5.  グレッグ・スモールマン

特に印象の強い楽器に言及します。

エルナンデス・イ・アグアド

ジョン・ウィリアムスと言えば、個人的には初期のアグアドを使っていた時代の音が最も好きです。

スペインの製作家であるアグアドは美しさと強靭な芯がある楽器です。
ジョンが弾くと火花が散り、触れると切れてしまいそうな輪郭です。
下記のM.M.ポンセ作曲のスケルツィーノ・メヒカーノの演奏では、かなり刺激的な表現を聴くことができます。
若さ故なのか、聴くものを圧倒するような密度のある演奏です。
(「インテンポで端正」とは全く違いますね)

現代よりも「良い音を出してなんぼ」の時代だったでしょうから、こんな演奏が出来ていたジョンはまさに並ぶものが無い無双だったと思います。
とにかくエネルギッシュです。

ジョンが使用していたアグアドはブリームが欲しがったと言われています。
(ブリームにアグアドが弾けるかどうかは怪しい気がします)

下記の2重奏では、ジョンがアグアド、ブリームがハウザー1世を使っています。
世紀のギターデュオの名の通りビッグネーム同士の2重奏です。(楽器も奏者も)
個性が強い2人の演奏になっております。
通常時はジョンが淡々と弾き、それにブリームが合わせているように聴こえます。
感情が高ぶるとブリームが暴走します。

イグナシオ・フレタ

アグアドと比べると音の明瞭さや密度は落ちますが、杉のイグナシオ・フレタでもジョンは多くの録音を残しています。
フレタはスペイン、バルセロナの製作家です。
(スペイン国内で楽器の個性が異なります)

アグアドとフレタの音のバランス・骨格は似ているため、どうしてもアグアドと比べてしまいますが、フレタ独自の美しい世界観を形成しています。
また、フレタはこの後に言及するスモールマンとアグアドの丁度中間と言えるギターかもしれません。

私もフレタで録音したバッハの演奏を探し回ったことがあります。

グレッグ・スモールマン

ジョン・ウィリアムスは最終的にオーストラリアのギター製作家であるグレッグ・スモールマンの楽器を使い続けます。
グレッグ・スモールマンはラティス・ブレーシングを採用した爆音のギターです。
表面板以外の部分は振動しないように、重量が重く作られています。

音質に関しては往年のギターファン(マニア)からの評判は悪いです。
ブログに載せてはいけない言葉で、その音質を例えた話も聞いたことがあります。
(ドストエフスキーや坂口安吾の小説タイトルです)

いざ聴いてみると、ダブルトップの楽器の鳴り方よりはスモールマンは自然に聴こえます。
ジョン・ウィリアムスもスモールマンと同じオーストラリア出身です。
母国が同じであることにより、音楽性やタッチが合うのだと思います。
耳に刺さる割れ方はあまりなく、生命力と荒さのあるリュートや19世紀ギターのような音がしています。
(あまり良い例えではないですが)
ジョン本人の音楽の成熟と共に、フレタやアグアドのような楽器をねじ伏せて弾くよりも自然に弾ける楽器を選んだのではないでしょうか。

CDの音質で聴くと嫌な音がすることもあるので、私はスモールマンを使った演奏はほとんど聴きません。

ジョン・ウィリアムスのテクニックについて

演奏を聴くと一目瞭然ですが、ジョンは抜群のテクニックを誇っています。
初見で何でも弾けると言われています。
あまりにもすぐに弾けてしまうため、「曲を深めることが出来ずに悩んだ」という話も聴いたことがあります。

天才という名が相応しい人物です。

ギターを弾く技術の本質がある(気がする)

下記の動画は77歳の演奏です。
ここまで衰えを知らない演奏家もいないのではないでしょうか。
(この年では既に引退していると思いますので、間違いがあるかもしれません。)

現代では「弦に指を置いておけばブレない」「プランティングすれば右手のミスは発生しない」等、様々な演奏のコツが掘り下げられています。
しかし、「ミスを減らしてより自然にギターを弾きたい」という点を突き詰めたときに、細かな各種の技術は枝葉に思います。
(私は「親指を弦に置いているけれど、手がブレているよ」と指摘されたことがあります)

落ち着いてからのジョンの演奏にはクラシックギター演奏の技術の本質が表現されているように思います。

  • 美しい姿勢
  • 美しい右手・左手
  • 脱力
  • 力任せにならない
  • 演奏に影響しない動作が少ない

この言葉にしにくい「ギター演奏の本質」に関して、現代の巨匠よりもジョン・ウィリアムスの方がむき出しに見えている気がします。
自分の演奏に足りない部分で、これを盗めないかと試行錯誤しています。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

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この記事でわかること