第62回弦楽器フェアに行ってきましたので、感想を書きます!
私はほぼ毎年行っており、沢山の良い楽器を見て幸せな気持ちで帰宅します。
参加を検討されている方の参考になれば幸いです。
場所
会場は最寄駅が竹橋駅の科学技術館です。
会場に行くまでの坂を登る時、毎回わくわくします!
入場費
1000円で金曜日から日曜日までの3日間入場することが出来ます。
フェイスブックでいいね!をしたページを提示するか、割引画面を印刷して提示すると、800円に値引きされました。
以前はページの印刷が必須だったので、フェイスブックの画面を見せるだけで良いのは楽です。
展示楽器を使用したコンサート
ギターだけでなくヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、マンドリン等の展示楽器を使用したコンサートが行われます。
演奏するのは各楽器の名手達で、ほとんどフルコンサートに近いボリュームです。
これらが1000円で聴けるのは大変お得です!
ギターでは下記の奏者が演奏しています。
- 金曜日→レオナルド・ブラーボ
- 土曜日→岡本拓也
- 日曜日→猪居亜美
おすすめの時間帯
弦楽器フェアに行くなら、10時の受付開始直後がオススメです。
特に金曜日の開場直後はお客さんが少なく、周りの音が比較的静かなうちに沢山試奏することが出来ます。
ギターのコンサート中も、試奏がメインの目的であれば人が少ないためオススメです。
しかし、コンサートに展示楽器を使用するため、一部の楽器は弾くことが出来ません。
コンサートが終わった後はコンサートを聴いていたお客さんが出てくるため、展示ブースは混み始めます。
国内製作家の楽器
今回、恐らく全ての国内製作家の楽器を弾きましたので、感想を書きます。(敬称略)
写真を撮る際は、ぐずぐずして他の方を待たせないようとても気を使いました。
先にお気に入りの上位3本を紹介、その後は五十音順となります。
お名前の漢字の間違いがありましたら、お知らせいただきたく存じます。
製作家の皆様が魂を込めて作った楽器ですので、私も責任を持って感想を書いております。
ただ、私は手が小さく、音も細いため、ガッチリした楽器やスペイン系の楽器は弾きこなせないことがあります。
奏者と楽器の相性はどうしてもありますので、あくまで個人の意見としてご覧下さい。
私が気に入った3本
矢木聡明
この楽器が私は1番気に入りました。
ロゼッタやヘッドの外観から判断して、恐らく完全なブーシェコピーです。
新しい楽器のため、1弦の音は完全には抜けきっていない感じはありました。
それは弾きこめば解消されるでしょうし、むしろ適度な締まりで好印象です。
音が抜けきらないのは、傷防止のシートが貼ってある影響もあるでしょう。
現代的な明るさは皆無で、タッチにより音がハッキリと変わる素晴らしい楽器でした。
尾野薫さんのブーシェモデルとも似ていますが、矢木さんの楽器の方がすこし重くない気がします。
禰寝 碧海
私のタッチではこの楽器の良さを引き出し切れていないのですが、音量等の楽器としての基本性能と音楽性のバランスに優れた素晴らしいギターです。
伝統的な音の芯の周りに、師事していたアントニオ・マリンのような倍音成分があります。
倍音成分は非常に適度なもので、音楽表現の邪魔にはなりません。
非常に高いセンスを感じました。
井内耕二
奏者が扱う感覚としてはとてもしなやかなのですが、音は密度が高い感覚があるギターでした。
私は柔らかい音よりもクリスタルな音が好きでして、そういった楽器はいくつかあったのですが、その中で1番扱い易かったです。
出展楽器の中から選んでいきなり演奏しなければならないとしたら、この楽器になるかもしれません。
後から知りましたが、徳永真一郎さんの使用ギターもこちらのようです。
以下、五十音順に紹介
井上保人
裏板、横板がメイプルの楽器で、横板に穴が空いておりました。
音自体はメイプルの優雅さがあり伝統的なものと思います。
とても弾きやすくかったのですが、5弦と6弦の音のバランスを調整し、もう一つ何か音楽的な要素を加えられれば飛び抜けた楽器になると思いました。
今井勇一
今回の楽器は表面板が杉でした。
今井勇一さんの楽器は杉の方が好きです。
今まで今井さんの楽器を聴いて良い音(音楽的に面白い)と思ったのは杉が多いです。
とはいえ私とは相性が悪く楽器でして、全く弾きこなすことが出来ません。
大西達朗
シュタウファーモデルの19世紀ギターです。
明るく粒が立っていて、優雅でいながらも充分音量があります。
オリジナルの19世紀ギターが持つ要素を理解して作っていることを感じます。
大西達朗さんの楽器は凄く好きなのですが、唯一の19世紀ギターということもあり、お気に入りの3本はモダンギターだけの構成にしました。
君島聡
表面板は杉です。
今までのギターとは全く違う工夫で作っているギターとのことでした。
確かに、これまで聴いたどのギターの音にも当てはめられません。
密度があって艶やかな音で、かなり音量もあります。
音色の変化はちょっと付けにくいと思いました。
気になって力木についても質問したのですが、立ち話では伝えきれない量の工夫があるとのことでした。
黒澤澄雄
表面板は杉で、真珠貝を使って装飾されていました。
アグアドコピーのヘッドが目を引きます。
見た目でアクションが重いタイプかなと思いましたが、そんなことはありませんでした。
ふくよかな音で非常に弾きやすく、音量と音質が両立しています。
求める音の傾向が合えば、非常にオススメの楽器です。
小林一三
しなやかさと硬質なクリスタル系の音質を兼ね備えた楽器です。
他の同一の傾向を持つ楽器に比べて音が太く、良い音を出しやすいです。
しばらく弾いていて音楽的な変化が少し付けにくく感じたため、お気に入りには含めませんでした。
桜井正毅
表面板が松のマエストロのRFモデルでした。
レイズドフィンガーとダブルホールによって、鋭く大きな音です。騒がしい弦楽器フェアの会場においても、抜群の音量を誇っていました。
最近、製作50周年記念の桜井さんのギターを弾いた時も、同様に音量があると感じ、RFモデルより柔らかい音でした。
他のギターと並べるとと大きい音なのですが、単独でステージで聴いた際どんな印象になるのかが気になります。
田邊雅啓
私は田邊さんの楽器はそれほどタッチが合わないようで、あまり弾きこなせません。
柔らかい音で凄く弾き易いのですが、弾いていて音量があるという実感が持てません。
音が前に飛んでいて、奏者にはあまり聴こえないというパターンなのかもしれません。
非常に高い評価を受けている方で、バックオーダーも沢山ありますので、素晴らしい楽器なのは間違いありません。
どちらかというとスペイン系の楽器に合うタッチの方が弾きこなせる気がします。
音質はきめ細やかで音楽的です。
茶位幸秀
弦長が長い楽器のようなおおらかさがありました。
反応が悪いという意味では無く、タッチで情報を入力する余裕があるということです。
反応はむしろ良いです。
はっきりとした癖のない音で、とても良い楽器と思います。
寺町誠
表面板が杉、レイズドフィンガーボードになっており、恐らくダブルトップの楽器と思います。
私がこれまで見た寺町さんの楽器はどれも好みだったのですが、今回の楽器はあまり好きではありませんでした。
フェイスブックの投稿を拝見して、いわゆるダブルトップ系の音か、寺町さんの音の感覚のままダブルトップの成分をいくらか加えた音を想像していました。
弾いた結果、そのどちらでも無いような感覚で、バランスが悪く、私には音が出しにくかったです。
ダブルトップ系の楽器と合うタッチであれば、評価は変わると思います。
(追記)
普段、杉のロバートラックを弾いている大変上手なアマチュアの方はこちらが一番弾きやすかったようです。
楽器との相性が本当に重要です。
長崎祐一
表面板は沢山のベアクローが入った松を使っていました。
当初、硬質で良く通る音と思いましたが、やや鋭さが目立ちます。
恐らくカーボン弦が張られており、尚且つダブルホールだったためと思います。
楽器自体は良いものだと思いますが、カーボン弦が張られた楽器をナイロン弦のものと比較することは私には難しいです。
中山修
材料として竹を使用したギターで、かなり特徴的な外観です。
どうやって竹を切り出せば表面板に使えるのでしょうか。
音自体は出し易いのですが、鈍く太い音で変化は付けにくいと思いました。
野辺雅史
芯があり重厚な音で、大変弾き易く音楽を作りやすいギターでした。
目の細かいロゼッタが渋く美しいです。
音に奥行きがあり、センスを感じました。
福手栄二
福手さんの楽器も、硬質でクリスタルな要素があるギターでした。
がっちりとした明瞭な音で、低音が6弦までしっかり出ています。
横板裏板はマダガスカルローズですが、横板にメープルを張って剛性を確保しており、それによりしっかりとした低音が得られているとのことでした。
自分のタッチとの相性も良く、非常に好きな楽器でした。
丸山利仁
表面板に奈良県産の吉野杉を用いたギターとのことです。
配布していた資料では「吉野杉はスプルースと米杉の中間の特性を持つ」と書かれておりましたが、個人的にははっきりと杉の音でした。
密度が低く、耳に痛いと感じました。
カーボン弦が張ってあったため、そう感じたのかもしれません。
丸山さんは木が元々持つ音を引き出す人だと認識しており、正統派でバランスが良い楽器を作っています。
こういった材料を使うのであれば「杉としての艶のある音を目指す」か「思い切って音量に方向性を向ける」方が良い気がしました。
山本篤史
ヘッドからロゼッタまで、猫がデザインされたギターです。
硬質でクリアな魅力のある音です。
何年か前の弦楽器フェアで弾いた際は、透き通ってよく通る音色で最も気に入ったギターでした。
その時の楽器に比べると、少し反応が鈍いと感じました。
横尾俊佑
塗装にカシューを使用しており、その塗装が音楽的な特徴となった音がします。
音の艶や粒立ち、奏者にも音量が感じられることは塗装によるものと思います。
しっかりとした作りであることが感じられ、弾きやすく演奏を組み立てやすい楽器でした。
横尾真人
父である横尾俊佑さんと同じく、塗装にカシューを使っています。
こちらの楽器の方がやや塗装が薄く(推測です)、より温かみのある音だと思いました。
弾いていて安心する楽器でした。
HIDEO SATO
ドイツ系のかっちりした音に明るさをプラスした音色の楽器でした。
上から下まではっきりとした音で機能性は抜群です。
最近の奏者はこういった楽器を使っているのだと思いました。
私が使っている写真アプリの認識不良で表面板の写りがおかしくなっております。
何卒ご了承下さい。
今回の記事は以上となります。
ギターの1本1本から製作家のメッセージを感じ取ることが出来、充実した時間を過ごすことが出来ました。
皆さんも是非弦楽器フェアに足を運んでみて下さい!
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。