- 初心者で、チューニングの仕方が分からない・・・
- 耳で音を聴いてチューニングしてみたい!
- 音の響きの「良い・悪い」が分かるようになりたい!
ギターのチューニングが合っていることは、響きの美しい演奏をするために必要不可欠です。
チューニングが合わない状態で弾き続けるのは「常にミスしている」のと同じくらい悲惨です。毎回の練習でチューニングが合わないまま弾いていると、テクニックが成長しても「音を聴く力」が伸びません。
この記事では「初心者向けのチューナーを使った調弦」と「耳で音を合わせる調弦」の2つのチューニング方法を紹介します。
私はクラシックギターを始めて1年ほど経った頃、「耳でチューニングする」トレーニングを開始しました。その結果、半年で「耳でチューニング」ができるようになりました。
同じ時期にギターを始めたメンバーの中で、私は1番音を聴く能力がなかったです。
才能のない私でも音感が身についたので、この記事の内容でトレーニングすれば「耳でチューニング」は誰でもできるようになります。
コンクール会場の2階席で腕を組み、「さっきの演奏、3弦の音が高かったな・・・演奏は良いのに惜しいな・・・」と玄人っぽいひとり言もつぶやけるようになるでしょう。
チューナーを使ったチューニングの方法
最初に「チューナーを使ったチューニング方法」を解説します。
チューニングに使用するのは、クリップチューナーがおすすめです。
周囲が騒がしい環境やステージ上などでスマートに調弦できるため、人前で演奏する奏者はみんな持っています。
ギターの各弦の音の高さは、以下の表のとおりです。
1弦 | 2弦 | 3弦 | 4弦 | 5弦 | 6弦 | |
---|---|---|---|---|---|---|
音名 | E(ミ) | B(シ) | G(ソ) | D(レ) | A(ラ) | E(ミ) |
周波数 | 329.628Hz | 246.0942Hz | 195.998Hz | 146.832Hz | 110.0Hz | 82.407Hz |
チューナーで音の高さを確認し、糸巻きのペグを回して音程をチューニングをします。
糸巻きのペグは「左ねじ(左手の人差し指が向いている方向)」に回して、弦を巻き上げます。
左ねじの方向に巻くと、弦のテンションと音程が上がります。
逆向きにペグを回すと、音程は下がります。
チューニング時は、初心者は「巻き上げすぎ」に注意!
初心者が調弦でもっとも注意すべきなのは「巻きすぎてテンションが上がり、弦が切れてしまう」ことです。
奏者と楽器の両方にとって、大変危険です。
- 弦が切れる
- 切れた弦が飛び、顔や手を傷つける
- 弦が切れない場合、楽器が壊れてしまう
音楽において、音の高さは「ドレミファソラシド」で一周します。
この「1周分の音の高さ」を1オクターブ(8度)と言います。
チューナーは「A」などの音名しか表示されない場合が多いです。
イタリア語 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ |
英語 | C | D | E | F | G | A | B |
日本語 | ハ | ニ | ホ | ヘ | ト | イ | ロ |
ドイツ語 | C (ツェー) | D (デー) | E (エー) | F (エフ) | G (ゲー) | A (アー) | H (ハー) |
ギターの1弦と6弦は、音名は同じ「E(ミ)」ですが、2オクターブ離れています。
6弦の「82.4HzのE(ミ)」に合わせようとしたら、既に越えてしまっていて、もう1オクターブ上の「164.8HzのE(ミ)」を目指していたという危険な状況が起こるかもしれません。
危ないので、初心者は巻き上げすぎに注意してください。
ペグの操作は「狙う音程へ、低い音から上げていく」
糸巻きを巻いてチューニングする際は、必ず低い音から上げていき目標の音程に合わせます。
高い音から下げて調弦してしまった場合、ナットの角に弦が引っかかるため、調弦した後に音程が変わってしまうことがあります。
コンクールで優勝するプロの奏者は「低い音程から上げる」ことを徹底しています。
優秀な奏者は基本を守っています。
耳でチューニングして「耳を鍛える」
ここからは、初心者でなく中級者以上に向けた解説をします。
本気でクラシックギターを上達したい人は「耳でチューニングする」ことをおすすめします。
練習で毎回チューニングを耳で行っていれば、そのたびに音を聴く能力が磨かれていきます。以下のことができるようになります。
- 和音の響きの良し悪しが分かる(適切に響きを作れる)
- 複数のメロディを同時に聴く(ソプラノ・アルト・テノール・バス)
耳でチューニングする能力は「相対音感」に分類されます。
2つの音程の差と濁りを聴いて調弦します。
相対音感は絶対音感と違い、大人になってからでも獲得できる音感です。
「やったもん勝ち」なのです。
相対音感の会得スピードは人それぞれ
私は大学のサークルでクラシックギターを弾いていた際、耳でチューニングする練習を多くのメンバーに試してもらいました。
「初期状態で音をどれくらい聴けるか」「聴く能力が身に付く早さ」は千差万別でした。
- 最初は音を聴けないが、少しずつ上達する人
- 最初からある程度音を聴けるが、あまり改善しない人
- 楽器経験者でもないのに、最初から耳でチューニングできる人
「音のズレを聴きとる感覚」は、初期段階では分かりにくいです。心が折れそうになるかもしれませんが、「集中すること」が大事です。
耳でチューニングする方法
ギターを耳でチューニングする方法を解説します。
まず、音叉やチューナーを使って5弦(A=ラ)を合わせて下さい。
「チューナーを使ってるじゃないか!」と思うかもしれませんが、調弦には基準となる音が必要です。
仮に絶対音感の持ち主であっても、1〜2Hzの僅かな音程差を聴き取ることは難しいのです。
チューニングした5弦の音程に合わせて、他の弦を合わせます。
耳でチューニングするには、以下の音程を使います。
- ユニゾン(まったく同じ高さの音程)
- 5度(基準音を1と数えて5番目の音、「ラとミ」、「ミとシ」など)
- オクターブ(8度、1弦のミと6弦のミ)
同じ音程の「ユニゾン」は、相対音感がなくても聴きとれるでしょう。
「オクターブ」は、注意して聴かないと分かりにくいです。
「5度」は相対音感がなければ、合っているか・ズレているか判断できません。
調弦は以下の手順で合わせます。
調弦の手順は複数ありますが、初心者向けとして簡単な方法を載せています。
- 5弦の開放弦と1弦の開放弦を合わせる(ラとミの5度)
- 1弦の開放弦と6弦の開放弦を合わせる(ミのオクターブ)
- 6弦の開放弦と2弦の開放弦を合わせる(ミとシの5度)
- 5弦の開放弦と3弦の2フレットを合わせる(ラのオクターブ)
- 2弦、6弦の開放弦と4弦の2フレットを合わせる(ミのオクターブ)
耳でチューニングする際のチェックポイント
耳でチューニングする際に気をつけるポイントは以下のとおりです。
「チューニングして音程が合っている弦」を先に弾き、その後に「音程がズレている弦」を弾きます。
合っている基準の音程に対して、音が合っていない弦の音程が「低いか・高いか」を聴きとります。
音程が合っていない場合は、音程差の他にうわんうわんという「うなり(ゆれ)」が発生します。これがなくなるまでチューニングします。
音程が合っているか・ズレているかが分からない場合は、「これから合わせる弦」を「ズレている」と分かるところまで音程を下げてみましょう。大きくズレている場合は、誰でも音程が合っていないと分かるはずです。
音程を下げ、あえて音がズレている状態から、うなりがなくなる正しい音程までチューニングします。
耳でのチューニングは、できない人にとっては本当に難しいことです。(ここまで、なるべく言わないようにしていました)
「成長している」という感覚が分かりにくい人もいます。
毎日「5〜10分で良い」ので、地道に取り組んで下さい。絶対にできるようになります。
ギター弾きが最低限覚えたい「音程・音律」の知識
チューニングの話から更に踏み込んで、「音程・音律」について説明します。
「音程・音律」をきちんと説明すると複雑になるため、「ギタリストはこれだけ知っておけばOK」という部分に限定します。実践で使える話しかしません。
先に結論です。やることはこれだけです。
ギタリストが注意すべき音程
- 曲に登場するオクターブ(8度)と完全5度は、チューニングでキレイに響くようにする
- 曲の終わりなど、とどまる時間が長い音の「長・短の3度」にも気を使う
- 「長・短の3度」は左手で音程を調整する
曲のテンポが速い場合、音程の僅かなズレは問題になりません。
ゆっくりな曲やフレーズの終わりの和音では、「響きを聴きとる時間」が生まれるため、音程に注意します。
下からド・ミ・ソ・ドで構成される「Cメジャー」のコードを弾く例を考えます。
オクターブの「ド」と完全5度の「ソ」はチューニングの段階でキレイに響くようにします。
長3度の「ミ」は、音程を低く取りたいです。
音程が下がる方向に、弦を押さえている指で引っぱります。
4弦2フレットの「ミ」はローポジションなので、残念ながらブリッジ側に弦を引っぱってもさほど音程は下がりません。
「響きが良くなった」実感は分かりにくいです。(5〜7フレット以上になると、左手で音程を変えやすい)
逆に、「響きが悪くなる」ことを実感するため、Cメジャーのコードで4弦2フレットの「ミ」をチョーキングしてみます。(フレットと平行に弦を引っぱる)
チョーキングして「ミ」の音程が上った際に、和音の響きが悪くなったことを確認しましょう。
次の例は、Aメジャーの和音で、有名なトレモロ曲「アルハンブラ宮殿の想い出」の終わりの音です。
構成音は「ラ・ド♯・ミ・ラ」となります。
この和音も、根音のラに対しての長3度「ド♯」の音程が下がる方に弦を引っぱります。
「ド♯」は5弦4フレットなので、音程は強めに引っぱれば変わります。
5弦以外は音程が変わらないように、引っぱらないよう注意します。
曲の終わりなので、涼しい顔をしつつも、左手の薬指だけは力を入れてください。
やることはこれだけですが、以下の疑問が発生します。
- 3度がキレイに響くようにチューニングしたら良いのでは?
- オクターブ(8度)と5度は、何もしなくて良いのか?
この点を深く掘り下げます。
和音が美しく響く「純正律」と、ギターが採用している「平均律」
適切なチューニングをするには、「純正律」と「平均律」について知る必要があります。
- ギターが採用している「平均律」とは?
- ギターは「平均律」という音律(音程)を採用しています。
「平均律」は、1オクターブを均等に12音で割ったものです。
定規の1メモリのように、各音の間隔は均等です。
ギターの1弦を見ると、開放弦の「ミ」から12フレットの「ミ」まで、12の音があります。
ギターのフレットは決まった比率で均等に打たれています。(比率が均等であり、長さが均等ではないことに注意)
「ドミソ」「レファラ」「ソシレ」のような3和音は、平均律では完全にキレイには響きません。
また、音の間隔が全て同じなので、「同じ音程差の和音」は全て同じ響き方になります。
どの和音も完璧にはキレイに響かないが、どの和音でもそこそこの響きになるのが平均律の特徴です。
- 最も美しく響く「純正律」とは?
- 和音は、音の周波数が整数比である場合に最も美しく響きます。
根音(和音の最下音)に対して、完全1度(ユニゾン)であれば、比率が1:1です。
長3度は「4:5」、完全5度は「2:3」、オクターブは「1:2」です。
基準の音から、最も美しく響くように整数倍の周波数で音階を取ったものが「純正律」です。
オーケストラや吹奏楽などで和音を演奏する場合は、「純正律」の高さの音程を狙います。
フレットのない楽器は、音程の調整が可能です。
純正律の欠点は、「基準音を根音とする和音」以外の和音の響きがとても汚くなることです。
ギターはフレットにより音程が決まっています。
もし純正律でフレットを打ってしまうと、特定の和音(Cメジャー、Cマイナーなど)しかキレイに響かないギターが完成します。
その他の調の曲を演奏することは、響きが汚いため不可能です。
ギター演奏で「音程が良い状態」を目指すには、平均律の音程を調整して「なるべく純正律に近づける」ことが重要です。
平均律の音程を、「どれだけ調整すれば純正律に近づくか」の表を貼っています。
数字が大きい箇所ほど、平均律の音程を調整する必要があります。
例として、基準音(根音)を「C」としました。
表の単位はセントです。「平均律の半音」の音程差を100セントと表します。1オクターブで合計1200セントです。
完全1度 | 短2度 | 長2度 | 短3度 | 長3度 | 完全4度 | 減5度 | 完全5度 | 短6度 | 長6度 | 短7度 | 長7度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 11.7 | 3.9 | 15.6 | -13.7 | -2.0 | -9.8 | 2.0 | 13.7 | -15.6 | 17.9 | -11.7 |
C | D♭ | D | E♭ | E | F | G♭ | G | A♭ | A | B♭ | B |
ギターの場合は、長三和音・短三和音がキレイに響くことが重要です。
そのため、気にすべき音程を赤字にしています。
オーケストラや吹奏楽では、協和音以外の音程でも純正律の音程を狙います。
しかし、ギターでは、協和音以外の音程にはこだわりません。どうせ響きは濁るので、「音程が僅かにズレているのが和音の表情になる」という意見もあります。
表のとおり、完全5度の響きを良くするには、平均律から「2.0セント低くする」必要があります。
この「2セントのズレ」は、気になる程のズレではありません。「2〜3セントを越えたら、ズレが気になってくる」と言われています。
完全5度の音程は、チューニングが正しくできていればほぼ合っているように聴こえます。
問題は「長3度・短3度」の音程です。
- 長3度は平均律から13.7セント低くする
- 短3度は平均律から15.6セント高くする
この上下で約15セントの調整は、音程においてかなりの幅です。
「長3度・短3度」で高・低が逆であり、チューニングで調整することが不可能です。
そのため、和音を押さえる左手の指で音程をコントロールします。
この「音程の調整」は、ピアノなどの他の平均律の楽器にはできない方法です。
(ピアノは平均律の欠点と共存せざるを得ない)
誰でも演奏中にできる訳ではありませんが、音程を調整できるのはギターの強みです。
全ての弦をハーモニクスで調弦してはいけない理由
調弦で5度を使うというのは、「純正律の5度でチューニングした」ことになります。
耳で聴いて5度がキレイに響くという状態は「純正律」です。
実は、ハーモニクスを使った調弦も「純正律の5度」を使っています。
ハーモニクスを使って、5弦の5フレットの「ラ」と4弦の7フレットの「ラ」をユニゾンで合わせるとします。
4弦7フレットの「ラ」は、開放弦の音「レ」に対する純正律の5度音程です。
「5弦→4弦→3弦→2弦→1弦」の順でハーモニクスで合わせると、合計−7.7セントズレます。(5度でない音程も「3弦→2弦」」で混ざる)
「ハーモニクスだけで1弦まで合わせる」のはデタラメなチューニングです。
5度をチューニングで使う場合は、基準の音から1つまでにしましょう。
この記事で紹介したチューニング方法においても、「5弦と1弦」「6弦と2弦」のように5度を2回使っています。
つまり、この調弦方法も2弦が4セントズレますので、注意して下さい。
「5弦と1弦」で5度を使い、1弦が2セント高くなります。
「6弦と2弦」で5度を使い、2弦は4セント高くなります。
あくまで「試しやすい・やりやすい調弦方法」として例にしています。
5弦2フレットの「シ」と2弦開放弦の「シ」などで再確認をするようにしましょう。
「クラシックギターのチューニング方法」まとめ
「ギターのチューニング」ははっきり言って地味ですが、「音程の正しさ」は音楽において非常に重要です。
響きをコントロールできなければ良い演奏はできません。
かんたんな例を挙げます。
何かのスポーツで活躍していて運動神経に優れた人が、2〜3年でプロのギタリストと同じレベルのテクニックを会得することは可能です。
ただし、「音を聴く能力」は2〜3年では身につきません。
いくら指が動いても、耳が良くなければ「プロレベルの演奏は不可能」ということです。
本当に上手くなりたいなら、音を聴く習慣を身に付けましょう。
今回の記事は以上となります。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。