ギターでよくある誤解をまとめる。

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筆者はギターを15年以上弾いております。
その中で長い間、誤解していたことがいくつかあります。

私がギターを開始してから、ずっと誤解していたことを記事にまとめます。

「100%そうである」と言い切れない事項も混じっております。
納得できないことも含まれているかもしれないことをご了承下さい。

この記事でわかること

誤解「ギターの音はサウンドホールから出る」

ギターの中心には、いかにも音が出そうな穴が開いております。
「ここから音が出ているのだ」と思いがちです。

しかし、「ギターの音はどこから出ていますか?」という問いに対する答えとして適切なのは「表面板」だと考えています。

実際、サウンドホールからも音は出ます。
それは表面板で鳴った音が裏板・横板に当たって跳ね返って出てくるものです。
表面板から鳴る音と比べると、サウンドホールから出る音は小さいと考えられます。

実際に「サウンドホールから音が鳴っているように感じる」ことはあるかもしれません。
録音でサウンドホール付近に向けてマイクを立てることは多いです。
(サウンドホールとブリッジの間かもしれません)

音の高さによって、表面板の振動のモード(振動の仕方)は違います。
サウンドホール部分は固定されておりませんので、振動の固定端になりません。
サウンドホール付近の表面板から多く音が出ることはありえます。

結論です。
「ギターはサウンドホールから音が出ている」は、正しい回答(音が出る主の要因)ではないと思われます。

リュートのようなラウンドバックの楽器等では、サウンドホールから出る音の量が増えることも有り得るかもしれません。

横板に穴を開ける意味はあるのか?

ギターの音は表面板から発しているため、指向性(方向)があります。
この指向性はギターの個体によって変わります。

上で書いた通り、サウンドホールから全く音が出ていないという訳ではありません。

そのため、指向性の高いギターに対し、「横板に穴を開ける」ことで音をモニターしやすくすることは意味があると思います。
意味はあるとしても、「横板に穴を開ける」べきかどうかはケースバイケースです。

「既に横板に開いている穴を塞ぐ」ケースも見受けられます。
「内部で跳ね返った音が正面のサウンドホールから出るように」という考えと思います。
この状態に対して、個人的な意見を書きます。

  • 横板に穴を開けた時点で剛性が低下し、表面板の振動を受け止めるという意味で僅かに不利になる
  • 塞ぐことの効果よりも、剛性の低下による影響が大きいのでは
  • 塞いだ素材によっては、より振動を阻害してしまう
  • 横板から漏れる音は限られるのでは

これらは完全な推測で、実際に実験した訳ではありません。
横板の穴を塞いで、音が前に飛ぶ可能性はあります。

別の話です。
マグネットをギターの内側に貼るタイプの支持具で、音が著しく悪くなった体験をしております。
(振動を波形にしたとして、振幅最大の部分が押さえつけられたような鳴り方)
楽器に余計なものを取り付けることには、私は否定的です。

誤解「ナットを高くすると、弦を押さえた状態の弦高が上がり、主にローポジションがビリ付きにくくなる」

ギターのナットを高くすると、音はビリつきにくくなります。
この理由を「弦高が上がるから」とするのは、正確ではありません。
(部分的には合っています)

ナットの高さを上げて、弦を押さえたときに音がビリつきにくくなる理由は「テンションが上がる」からです。
フレット・サドル・指板で形成される三角形での弦高(三角形の角度)は、ナットを変えたとしても変わりません。

先に「左手から見た弦高(弦とフレットの距離)」の話をします。

  • ローポジションでは、ほぼナットの高さで弦高が変わる
  • 12フレットは、ナットとサドルの中間のため、弦高に対するナットとサドルの影響が半々
  • 12フレット以降は、弦高に対するサドルの高さの影響割合が増えていく

次に、「弦を振動させる場合の弦高とテンション」を考えます。
弦はすでに左手でフレットまで押さえた状態とします。
ここでいうテンションとは、張力ではなく、演奏で感じる張りの強さです。
また、弦高は「ビリつきの有無を決定する弦とフレットの距離」を指します。

サドルの高さを上げた場合、以下の変化が発生します。

  • 弦高が上がる(フレットorナットとサドルの角度が大きくなる)
  • 演奏時に感じるテンションが大きくなる(ブリッジの穴とサドルの弦の角度が急になることによる)

ナットの高さを上げた場合、以下の変化が発生します。

  • 開放弦(0フレット)の弦高が上がる
  • 弦を押さえた際のフレットとサドルの角度は、ナットを上げても変わらない(結論)
  • 演奏時に感じるテンションが大きくなる(糸巻き~ナット、ナット~フレットの弦の角度が急になることによる)

前置きが長くなりました。
ナットの高さを上げた際に音がビリつきにくくなるのは、上記の「テンションが上がる」ことが理由です。
テンションが上がると、振幅が小さくなり、張りのある音が得られます。
(リュートのように、ペグボックスが大きく曲がっていれば、テンションは増えます)

「振動としての弦高」はナットを変えた場合、開放弦(0フレット)しか変わりません。
フレットを押さえた際の「振動としての弦高」は、サドルを上げた場合のみ変わります。

誤解「弦が指板に当たりにくくなるので、スキャロップ指板は弾きやすい」

私は「弦が指板に当たる」のは、よほど力を入れたときだけと考えています。
試しに、お手持ちのギターで2フレットを押さえてみて、弦と指板の距離を確認してみて下さい。
無視できないくらいに距離があると思います。

この話を製作家の方にしたところ、「実際に古いギターで指板が削れているものはある(だから、弦は指板に当たる)」というコメントを頂きました。
これに関しては、「弦が指板に当たる」訳ではなく、「左手の指・爪が指板に当たる」ことで指板が削れたのではないかと考えています。

昔の方が今よりも弦を強く押さえていたのは事実でしょう。
(良く言えばパワフル、悪く言えば力任せ)
とはいえ、「弦が指板に当たって、指板が削れる」ほど弦を強く押さえていたら、音程の変化は無視できません。

ここまで書いていて気が付きました。
フレットがかなり減った状態であれば、「弦と指板が当たる」ことはあるかもしれません。
ただ、力を抜いた現代の奏法ではフレットは減りにくく、指板がえぐれた楽器をお目にかかることは早々ないと思います。

クラシックギターでスキャロップ指板は意味がなさそう

指板と弦が当たることがないとしたら、それを目的としてスキャロップ指板にすることは意味がないと言えます。

指板を削ると、ネックの質量・剛性が変化し、音色も変わります。
低音から高音の幅を求められるモダンのクラシックギターでは、プラスの変化ではないと思われます。
19世紀ギターでしたら、ネックが軽くなることによる良い変化もあるかもしれません。

エレキギターは、指板にラウンドが付いており、チョーキング等のクラシックギターと違う奏法があります。
そのため、スキャロップ指板にすることに弾きやすさの面で意味があるようです。
「指板と指が当たりにくくなる」とも言われています。
エレキギターは編成の一部を担当する楽器のため、スキャロップで音が軽くなったとしてもマイナスではないことも考えられます。

「ギターでよくある誤解」まとめ

ギターでよくある誤解を紹介しましたが、難しい内容が多かったと思われます。
これらの内容は、私が自分でサドル・ナットを作って気が付いた部分が多いです。

「加工技術」と「変化を感じ取る能力」の両方がある方でしたら、ナット・サドルを作ってみることで一気にギターに詳しくなれます。
店頭に並んでいる楽器を弾いたとしても、「ナット・サドルがおかしい」「調整でこの欠点は治るだろう」という要素が分かりますので、楽器選びにもプラスに働くことでしょう。

私は当初は製作家にナット・サドルを作ってもらっていました。
しかし、製作家は作業内容による音の変化が分からない方が多く、自分で作った方が好みの結果が得られました。
(「上げる・下げる」等のリクエストは出来るが、「この方向に音色を変えて欲しい」という言い方をしても通じにくい)
こだわりがある方は、ナット・サドルを自作してみることをおすすめします。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

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