「バランスの良いギター」とは何かを解説する。

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ギター選びをする中で「このギターはバランスが良い」という言葉をよく聞きます。
「バランスが良い」ギターとは何なのでしょうか。

ギターのナットやサドルを沢山調整してきた経験から「ギターのバランス」を解説します。
「バランスが悪い楽器が魅力的」という言葉の真偽に関しても説明します。

この記事でわかること

バランスが悪いギターとは

バランスの悪さについて、2つの要素に分けて解説します。

最低限のバランスが悪いのは「ナット・サドル」のせい

ギターのバランスが悪いのは「ナット・サドル」の接点が乱れていることが多いです。

外国で作られた楽器が特にそうなのですが、ナット・サドルの接点の削り方に癖があります。
個人個人の違いによるもので、これは理屈では説明出来ません。

海外から持ち込まれた時点ではじゃじゃ馬な楽器でも、日本人が調整するとバランスが取れるようになり、全体にまとまるように思います。
ナット・サドルの調整においては、日本人が調整したからつまらない音になったと感じることはありません。
この分野では、細部にこだわる日本人の良さが発揮されるようです。

ギターの構造によるバランスの悪さはどうにもならない

バランスの悪さがギターの構造によるものなら、それはどうにもなりません。

構造とは、具体的に以下の通りです。

  • 表面板・裏板の面積
  • 表面板・裏板の厚さ
  • 表面板と裏板の材料
  • 力木の位置
  • サドルの位置
  • ギター内部の容積

これらの項目により、楽器の鳴り方・個性やウルフトーンが決定します。
つまり、表面板や力木を内側から削ることで音とバランスを変えることは可能です。
しかし、製作家を超える「音を聴く能力」「手の器用さ」が無い限りはおすすめしません。

ウルフトーンは楽器のバランスに大きく影響

ウルフトーンの位置は楽器のバランスに大きく影響します。

ウルフトーンとは、「ヘルムホルツの共鳴筒」という定理により、楽器が共鳴する音を指します。
これは、楽器の容積によって計算されます。
(弦のテンションや、材料の経年変化による剛性が変わることでも変動します)

特に6弦のミ(E)とウルフトーンが被っている楽器はバランスが悪く感じやすいです。
6弦だけでなく、2弦開放弦のシ(B)も突出して聴こえる場合が多いです。

ウルフトーンがファ♯(F♯)の楽器も、ソ♯(G♯)の楽器に比べるとバランスは悪いように感じます。

バランスが悪い楽器は魅力がある?

一概にはそうは言えませんが、そう表現出来る場合があります。

低音と高音の音質差が大きい楽器はウルフトーンが強く、バランスが悪いように感じる。
というのが私の意見です。

「低音と高音の音質に差がある」という特徴は、ソロギター演奏では魅力に繋がります。
鉄弦のアコースティックギターは、「高音と低音の差」が狭いことが多いです。
伴奏のために作られている楽器だからです。

19世紀ギターやトーレスモデルの楽器は、あまりウルフトーンに対して配慮が無いように思います。
もちろん、意識はしていたでしょうが「何としてでもウルフトーンを目立たなくしたい」とは思っていなかったでしょう。
これらの古いギターは、現代のギターに比べて「高音と低音」の差が非常に大きいです。
19世紀ギターやトーレスモデルは、誰が聴いても音に魅力があるギターと言えるでしょう。

モダンギターであっても、ウルフトーンがミ(E)やファ(F)にある楽器は表面板が薄い可能性があります。
そういった特徴を持っていると、19世紀ギターに少し鳴りが近付きます。
「低音と高音の差」が広がるので、魅力があるように感じるかもしれません。

バランスの良さは自在な表現をするためには必要な要素です。
しかし、あまり求めすぎると本質である「音の魅力」を見失ってしまうかもしれません。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

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