ゲルハルト・オルディゲス(オウディゲス)を弾きました。

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Gerhard J Oldiges

日本国内にある某楽器店に行ってきました。
そして、念願叶いまして下記ブログの著者である、おうどん氏と初めてお会いすることが出来ました。
クラシックギターマニア おうどん

おうどん氏は、ラミレスの本やギターショップのブログの一節を、ゲーテの詩を読むが如くそらんずることが出来る方です。
おうどん氏の莫大な知識量に打ちのめされました。

おうどん氏が所有するゲルハルト・オルディゲス(オウディゲス)を弾かせてもらいましたので、レビューをまとめます。

この記事でわかること

ゲルハルト・オルディゲスの外観

おうどん氏のオルディゲスは製作から約20年が経過しております。
過剰な装飾はありませんが、凄みを感じる外観です。
少し焼けた木目からは、フリッツ・オベールやエドムント・ブレヒンガーと同じドイツ製であることが伝わります。

表面板・裏板共にとても綺麗な状態でして、おうどん氏が楽器の扱いを心得ていることが分かります。

表面板やロゼッタ

表面板にはジャーマンスプルースが使用されており、中心と外側で色が変わっています。
(重ねてですが、ドイツらしいです)

話は逸れますが、この楽器店での集まりの中でとある方から「表面板はこんな特徴のものが良い」という話もありました。
正直、目の前で材のタッピングをしてもらわないと、材料の見た目だけでは何とも言えない印象です。

マヌエル・ラミレスのデザインを落ち着かせつつ取り入れたロゼッタは非常に雰囲気・オーラがあります。

Gerhard J Oldige

ブリッジにはハカランダが使用されています。
余分な要素がなく、ぎゅっとまとまっています。

横板・裏板

横板・裏板もハカランダを使用しています。
ハウザー1世やM.ベラスケスを思わせるような木目です。
この見た目は所有していてかなり満足度が高いのではないでしょうか。

木目の見えるブラウンのハカランダです。
私が所有してきた楽器においても、黒々としたものよりはこういった色の薄い(濃すぎない)ハカランダの音の方が好印象でした。

Gerhard J Oldige

なんでもないデザインのヒール周りなのですが、心から美しいと感じます。

Gerhard J Oldige

ヘッド・糸巻き

ヘッドの形状は、マヌエル・ラミレスをベースにオルディゲス本人が僅かにアレンジを加えたものでしょうか。
(確証はありません)
遠くから見るとマヌエル・ラミレス風なのですが、近くで見ると均整が取れており、王冠のようなエレガントさを感じます。
洗練されており、距離を変えて2度楽しめます。

Gerhard J Oldige

堂々としたロジャースの糸巻きが搭載されています。
良く見ると根明なデザインをしています。
古い楽器とは異なる時代の息吹を感じるようで、この楽器にとても似合っています。

オルディゲスの音について

バランス・骨格は従来のオルディゲスのイメージ

おうどん氏のオルディゲスは、外観はマヌエル・ラミレスを思わせる要素があります。
しかし、私が試奏したことのあるマヌエル・ラミレスモデルのオルディゲスとは印象が完全には一致しません。
おうどん氏曰く、ブーシェ風の構造が採用されているとのことでした。
別の方曰く、トーレスのアイデアにも見えるとのこと。
複数のアイデアを試す時期だったのかもしれません。

私は過去にハウザーモデルのゲルハルト・オルディゲス(松・ローズウッド)を所有していたことがあります。
おうどん氏のオルディゲスの音のバランスと骨格は、私が所有していたオルディゲスと良く似ていると思いました。
マヌエル・ラミレス要素よりも、ドイツ的な要素が勝っている印象です。
ウルフがF♯であり、高音から低音までにしなやかさがあります。

通常のオルディゲスと異なる点は、重量感、音の強さを感じさせる点でした。
良く調整されており、音の芯や密度のある音となっています。

強靭な芯のある高音

おうどん氏のオルディゲスの最大の特徴は、強靭な芯のある高音です。

私はこれまで、オルディゲスの高音はしなやかさを活かして優しく弾くものだと思っておりましたが、そのイメージが覆りました。
極めて強く押し込んでもそれがエネルギーに変換され、極めて明瞭な輪郭を持つ強い音が飛び出します。
横・裏板のハカランダの影響もあってか、力強く弾いても、音が粗野になることはありません。

新たなオルディゲスの側面を見ることが出来ました。

オーガスチン・インペリアルは難しい

おうどん氏のオルディゲスにはインペリアルが張られており、音量をリニアに使うクラシックのタッチではコントロールが難しかったです。
強い音を多様しないタッチの方には、オーガスチン・インペリアルは相性が悪い弦と感じるかもしれません。

フォルクローレの強靭なタッチで弾くには、相性抜群の弦と思いました。
このタッチでは、クラシックのタッチで必要とされる楽器のバランスがあまり意味を成しません。
おうどん氏と私のタッチの違い(フォルクローレとクラシック?)については後述します。
オーガスチン・インペリアルを使っているプロの奏者は、こういった芯の強さを好んでいるのだなと納得しました。
(とても勉強になりました)

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タッチの良い友人の話

インペリアルは、毎回芯を鳴らしてあげないと弾きにくい弦だと感じていました。
弱音が芯の強さに阻まれて出しにくいです。

ところが、しばらく楽器から目を離した隙に、タッチに対する楽器の反応が極めて良くなっていました。
驚いて試奏に同行していたタッチの良い友人に楽器を持っていきました。
感想は「昨日からこの状態だったと思います。しばらく私が弾いていました。」とのことです。
最上級のタッチで弾くと、インペリアルのマイナス要素も目立ちにくくなると学びました。

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深く、柔らかく包み込む低音

オルディゲスはウルフトーンがF♯であり、包み込むような柔らかく深い低音を持っていました。
トーレスモデルのような音質の低音の重心を下げ、より機能的に仕上げた印象です。

広いステージにおいても良く飛ぶ音だと思います。
ホールで使ってみたくなりました。

おうどん氏はかなりの腕前

おうどん氏のギターの腕前は見事なものでした。
フォルクローレは私にとって異文化でして、見慣れたギターからこれまで知らなかった音が聴けました。

また、おうどん氏は、他の方が試奏で弾いている楽曲を耳コピし、ご自身が試奏する際に即座に弾いておりました。
耳の良さ・音楽能力の高さを感じました。

フォルクローレとクラシックのタッチの違い

おうどん氏がメインで使うタッチは明らかにクラシックの奏者のそれとは異なるものでした。
楽器の振幅の限界に近い範囲で鳴らし、楽器の個性を明瞭に引き出す弾き方です。
おうどん氏がニードルサウンドと読んでいる音だと思います。
(ギターによっては硬い音を記憶するようで、私のマリンを弾いた際は楽器の張りが強めになりました)
関節のロックや腕の重みを有効に使っているような気がします。(推測)

それでいながら、強く弾きすぎて楽器の音を潰すようなことはしません。
かなり強い領域で弾いているはずなのに、楽曲が持つニュアンスを明瞭に表現します。

クラシックの奏者においても、これに近い強いタッチで弾く方を見たことがあります。
しかし、全ての音が強く均等になっていて、和声を感じませんでした。
おうどん氏が持つタッチの完成度は、ただ強く弾くだけの奏者とは一線を画しています。

おうどん氏の音は、広いホールでの演奏で抜群に強く美しく通る音だと思いました。
クラシックの楽曲を弾いても良く合っていますし、ギター全盛期ではこういったタッチの方が多かったのではないでしょうか。

響き、余韻を大事にしていた

上記で強いタッチと書きましたが、音色は大味ではありません。
おうどん氏は強い音を出した後に残る余韻や響きをとても大事にしていました。
楽器の判断基準も音色や響きが大きなウエイトを締めているとのことです。

良い耳・感覚・タッチを持っていて、それらが良い楽器を嗅ぎ分ける嗅覚に繋がっているのだと思います。

タッチにより楽器の評価が変わる

上記のように、私とおうどん氏はかなりタッチが異なります。
良いと評価する楽器は概ね共通でしたが、欲しいと思う楽器は異なっておりました。
おうどん氏は古いスペインの楽器、私はハウザーやブーシェ等のクラシカルな楽器です。

一例として、私は一般的なアルカンヘルを全く弾きこなすことが出来ず、バランスも完璧でないと思っておりました。
おうどん氏のようなタッチにおいては、私が難しいと感じていたスペインの楽器から、最も良い音を引き出すことが出来ます。
こういったタッチの違いを考慮して読むことで、ギターのレビュー記事はより面白くなるでしょう。

ベラスケスの話

訪問した楽器店には古いマヌエル・ベラスケスがあり、その芯のある強靭な音におうどん氏も感動しておりました。
ウルフがF♯にあり、オルディゲスのバランスに通ずるところもあります。
(両者は良く似ていると思いました)

このベラスケスの特筆すべきは響きの良さです。
楽曲で表現した表情と同じ余韻(響き)が残ります。
無色なので響きを聴いていない人が弾くと空虚なのですが、方向性を持って弾くと無段階に響きが変化します。
私はこの良さに気が付くのに時間がかかったのですが、おうどん氏はいち早くその魅力を捉えていました。
楽器の良さを探るにおいて、多くを学ばせて頂きました。

今回弾いたベラスケスは、全ての弦において特定の音色が出やすい傾向がありました。
しかし、良いタッチで弾くと音色の変化は極めて多様です。
(おうどん氏のようなタッチでは、音は非常に安定していました)
音色の自由度が高く、タッチによってはむしろ楽曲の完成度を上げることが難しくなるかもしれません。

音色・響きの両方において、未熟な奏者が弾くと全く良さが見えないギターだと思いました。
良いタッチだけでなく、耳の良さも求められます。
また、良いベラスケスに出会うのは大変難しいと思っています。

今回の記事は以上となります。
最後、ベラスケスの話になっておりますが、おうどん氏が両者を弾きこなしているのを聴くと、オルディゲスと同じ路線にある楽器だと感じました。
最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

こちらは、私のヤコピをおうどん氏に弾いていただいた記事です。
ギター試奏 ホセ・ヤコピ 年不明 ダイレクトチャンネル | クラシックギターマニア おうどん

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