(続き⑥)太い音を出す方法について。

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太い音を出す方法を模索し始めて、まだ迷路の中にいます。
タッチの良い友人とやり取りする中でまた新たな発見がありました。
太い音に関する追加の発見をこの記事にてまとめます。

この記事でわかること

アントニオ・マリンがブーシェになった

12月にアントニオ・マリンを購入しております。
割れの修理、フレットの打ち替え、指板のすり合わせ、サドル・ナットの製作を行ったことで元の面影が無くなってしまいました。
このアントニオ・マリンをタッチの良い友人に弾いてもらいました。

弦を張り替えたのは1ヶ月前でして、だいぶ音もボケていました。
発表会に向けた練習では別の楽器を弾いていたので、マリンはかなり寝ぼけた音をしていました。
「この状態で良いタッチを入れたら、どのような変化があるか」も興味の対象でした。

当初、このマリンを弾いてもらい、「こういうブーシェ、ありますよね」という会話をしていました。
「こういう」というのは「音質は良いけれどやや鈍さがある」ということを指していました。
友人も当初はこの印象(共通認識)だったのではと思います。

タッチの良い友人にしばらくマリンを弾いてもらったところ、例によって音に劇的な変化がありました。
主に、低音の太さが2倍近くに変わりました。
私がこれまで見たブーシェの中で最良のものと比べて、音の太さだけならかなり近い状態に感じました。
(本家ブーシェはもう少し重心が低い)
友人の優れた右手のタッチによって、「こういうブーシェ」という表現が「合格点のブーシェ」から「最良の部類のブーシェ」に変化してしまったという話です。

強く弾いているようには見えない

友人のタッチを真近で観察しました。
弦のたわみ量を見る限りでは、それ程強く弾いているようには見えません。
また、弾いている隣に立って手元を覗き込んでいる限りではそれ程大きな音には聴こえません。
正面の離れた位置で聴くと、べらぼうに太く大きな音がします。

力みをゼロにする

私は最近「発声」に関するレッスンを受けております。

響かせる対象に関連する部分が力んでいると、振動を止めてしまいます。
弦を弾く右手はリラックスしていなければなりません。

私は一つ前の太い音に関する記事で「低音の押し込み量が足りないので、低音の音量が足りない」という考察をしていました。
弦を垂直方向に振動させる際の最大押し込み幅は「弦と19フレットが接触するまで」だと思います。
(下記の写真は5弦を押し込んでいます。6弦と重なっていますが)

18(19)フレットと弦が当たる

友人の演奏を見ていると、この最大押し込み幅に対して5割程度であってもかなり大きく豊かな低音がしていました。
私が垂直方向の限界の8割近く押し込んだ際と同じ音量かもしれません。
これによって「力みによって弦の振動を止めない弾き方をしていれば、限られた弦の振幅の範囲で充分に大きな音を出せる」ことが分かります。

「力み」だけでなく、「力」すら不要

私はこれまで「大きい音を出すなら、弦の振幅を大きくすることは必須」と考えていました。
そのため、人間の手の構造に沿った動きをすることで「右手に力みを生じさせずに大きな力で弦を押し込むべき」と考えていました。

しかし、「ギターを弾くにおいて、そもそも大きな力は全く必要ない」ということが分かりました。
(曲の中で1~2回のフォルテッシモ以外は)

他のスポーツでは、「力を入れないで大きな力を出す」ことがテーマである場合が多いです。
「そもそも大きな力が不要」というのは盲点でした。

私の場合、「楽器を弾き潰してしまうこと」について悩んでおり、「大きい音を出し過ぎ」が原因なのではと考えたことがありました。
直接の原因ではありませんが、「大きな音を使い過ぎる」人のタッチに「力」が有り過ぎるという可能性は考えられます。

手元で良く聴こえる倍音

タッチの良い友人が弾くと、強弱にかかわらず倍音が鳴ります。

私が弾くとこの倍音は鳴りません。
(低音の共鳴音は鳴りますが)
私は「余計な倍音が無い方が遠達性がある」といった表現を長年信じ続けてきてしまったため、無意識に倍音を鳴らさないタッチになってしまっている可能性があります。
倍音を音の中に閉じ込めてしまっているイメージです。

世間一般で良く言われることと真逆なのですが、私の場合は「音を遠くに飛ばす」ではなく、「手元で音をこもらせて響かせる」練習をした方が良さそうです。

「爪の長さ」の影響かとも思ったのですが、私は過去に爪がかなり短い状態で倍音豊かな奏者の音を聴いたことがあります。
爪の長さは無関係です。

高音の倍音に関しては、耳で聴いて無意識の好みによる調整が働いている可能性があり、改善が難しいかもしれません。

親指の先端を曲げる弾き方を多用しない

上に書いた話題は抽象的な内容です。
ここから1点、具体的な技術の話をします。

私は以前、「親指の先端の関節を曲げて弾くべき」という内容の記事を書きました。
タッチの良い友人から「その動きはあまり使いません」とアドバイスを頂きました。
(全く使わない訳では無いですが)
この動きをあまり使わない理由を以下にまとめます。

弦との接地面積が変化してしまう

タッチの良い友人が、親指の先端を意図的に動かすことをしないと言っていた理由が「弦と爪・指の接地面積が弾いている最中に変化してしまうから」でした。

実際に速いフレーズの練習で親指の先端の関節の動きを使っていましたが、ものの見事に引っ掛かりました。
私は親指のせいで引っかかっているとは考えなかったので、むしろ積極的に指を動かして弦を抜かなければいけないと思っていました。

親指は手のひらの中にある親指の付け根から動かして、先端の関節はニュートラルにするのが良さそうです。
ただし、反らせて固定してしまうとまた別の力みが生じます。

D.ラッセルはこの動きを取り入れている印象だったのですが、弾いた後に曲がっているだけに見えます。
弦と指が当たっている際はニュートラルです。

弦に対して力が大きすぎる

親指の先端を曲げるという動作は、人間の身体としてはおかしい動きではありません。
ものを握る際に自然に発生する動作です。

しかし、「弦をたわませるのに必要な力」と比べ遥かに大きな力が発生しています。
本人に「力み」の感覚は無くとも、弦に対してあまりに大きな力を伝えてしまっています。
フォルテッシモの和音で低音を強調したいときには良いのですが、「楽器の振動を力で止めない」ためには不向きと思います。

抜けの良い音を楽器に押し付けていた

私はヘルマン・ハウザー1世の音に長く傾倒していました。
そのため、「低音は抜けが良く、重心が低くあるべき」という思いこみを持っていました。
アントニオ・デ・トーレス(モデル)のような膨らんだ音が好きでないです。
(ギターを知る中で、膨らんだ音であっても充分通ると知るのですが)

親指の先端を曲げることで「力強く、タイトで抜けの良い音」が出ます。
しかし、これは楽器が持つ本来のキャラクターの音色を出している訳ではありません。
自分の好みを楽器に強要しているので、自然で豊かに鳴る音とは違います。

追記)脱力と指の抜けの良さが重要か

上記の親指の使い方を実践することで、音はてきめんに太くなりました。
(エドゥアルド・フェルナンデス氏の低音に似ています)
楽器の調子が良いと感じる状態を、意図的に作り出せる印象です。
ただし、まだ8割の完成度で、私が弾いてもマリンはブーシェになりません。
これにより、太い音を出すには以下の要素が重要と思いました。

  • 弦をたわませたときに、振動を止める力がかかっていないこと
  • 弦をリリースする際に爪の引っかかりが無いこと

「爪を番手の細かいヤスリでぴかぴかに磨く」のは、やった方が良いですが、必須の条件ではありません。
(タッチの良い友人も言っておりました)
爪の形の方が圧倒的に重要です。

まだまだ悩み続ける予定

「本人の個性(好み)で出てくる音色が決まる」というのは正しい意見だと思うのですが、工夫や思考の放棄と紙一重です。
私はギターを始めた年齢が遅く、天才とは程遠いので、感覚で無意識にベターな方法を選ぶということが出来ません。
(好みや感覚は当てにならない)
今回の「親指の使い方」に関しては、小さな工夫を適用しただけで音が大きく変わりました。
「無意識や感覚による調整」ではなく、「コツや工夫」で大きな改善が得られるのであれば、苦しんだとしても「コツや工夫」を求めて悩み続けるべきと言えます。

「太い音」の達成度は8割で、残る2割は改善の余地があります。
この2割が「無意識や感覚による調整」であれば答えは存在せず、悩み損になるかもしれないのですが、もう少し悩んでみようと思います。
(2割はけっこう大きいので、何かしらの答えはあると思っています)

今回の記事は以上となります。
まだまだ道のりは長そうです。
最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

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