以前より、太い音を出す方法について連続した記事を書いておりました。
前回の記事は以下のリンクです。
(続き③・完?)太い音を出す方法について。 – クラシックギターの世界
太い音を出すコツについて、私が発案者ではないため若干説明をぼかしていました。
もったいぶるのもどうかと思いますので書きますが、大事なのは表面板に対して弦を垂直に振動させることです。
前回の記事で(完?)と書いたのは、理屈の上でほとんどコツを網羅できたと感じたからです。
しかし、太い音を出すことについて、まだ続きがありました。
道のりは長く険しいです。
きっかけ→バッハのフーガでの指摘
少人数で公開レッスンを受ける機会があり、J.S.バッハのBWV998のフーガで受講しました。
難所にさしかかると特にギターが鳴らなくなります。
右手が強引になることで音楽が破綻するよりは、むしろ抑えめの方が良いと考えていました。
バッハのフーガはギターを鳴らしやすい曲では無いので、現時点の私の技術では仕方ないという妥協がありました。
私の演奏に対して、「低音が足りない」という指摘を先生と耳の肥えた方から頂きました。
バロック音楽では低音が最も重要であることは分かっておりました。
しかし、重要と感じた高音の声部に注意を向けすぎてしまった状態です。
バッハのフーガでギターが鳴らないのは「左手が難しく力みやすい」「楽器が鳴りにくい音の割合が多い」からだと思っていました。
しかし、強引にでも低音を鳴らしたところ、高音を含めてギターが鳴るようになりました。
低音で全体の音量をアップさせる
私は過去にギタリストの金庸太先生から「ギターの高音は限界があるため、低音を大きくすることで全体の音量が上がったと錯覚させる」ということを習いました。
私はこれを錯覚の話と思っていましたが、実際に高音も音量が増しているかもしれません。
低音で音量を稼ぐことについて、低音で楽器全体を振動させることにより高音も豊かに鳴るように感じます。
フォルテで弾く単音のメロディ(高音)であったとしても、曲のどこかで大きな低音を使い、事前に楽器を鳴るようにしておいた方が良いでしょう。
低音以外の声部を強調したい場面でも、求められる音量が大きければ低音も少し大きくする必要があります。
単純に「親指(p)」と「それ以外(ami)」で弦を挟んで弾くので、親指を強く弾くことで反作用としてそれ以外の指の音量が増すことも考えられます。
(金庸太先生の炎上しそうな動画があり、笑ってしまいました。)
アパート・マンションの弊害
私は一人暮らし向けの賃貸物件に住んでいます。
日中はがんがん音を出しますが、深夜・早朝は音量をかなりセーブします。
必要な場面になったらいくらでも音は出せると思っていましたが、マンションで音量を抑えて弾いている弊害がでてしまったかもしれません。
普段から訓練しておかないと、本番で最大音量は使えないと感じました。
繊細さが必要なのか、そうでないのか
素晴らしいタッチを持つ友人から以下のコメントを頂きました。
「車を例にするとそれぞれに動き方の特性があり、車が動きたい方向に走らせてあげることが重要です。ギターにおいてもギターが出したがっている音を出すように弾くと良い音が出ます。」
まだタッチを改善中の私にとって、これは非常にためになる意見でした。
しかし、私は右手のタッチにかなり神経を使っている方であり、これ以上に繊細に弾くことは過剰な気もします。
(力はまだ抜ける余地があるのですが)
リモートレッスンを受けた際にも「もっと強い音で!」という指摘を受けることが良くあります。
ヘッドホンをしながら弾くと音質は雑なのですが、レッスンでガンガン弾いた後のギターは良く鳴ります。
太い音に重要なのが「繊細さ」なのか、「強引にでも鳴らす」のか、難しいところです。
第1段階はしっかりと鳴らすことが大事で、その後は力を抜き倍音が豊かな音にするのが良いのではと思っています。
fffの低音弦の弾き方
力いっぱい弾けば、フォルテシモは出せます。
しかし、私は極めて凡人なので、本番でそれを使える気がしません。
再現性を高めるため、最小限の労力で最大の音量を出す方法を考えました。
この記事で最も重要なのはこの部分かと思います。
(ここまで読んでくださった方に感謝です)
表面板に対して「垂直+水平」を組み合わせる
表面板に対して弦を垂直に押し込むと、弦と表面板上のフレットが接触します。
この表面板に対して弦を垂直振動させた場合の音を100%と考え、mf~f程度の音とみなします。
この垂直に最大限の振幅を稼いだ状態に対して、水平方向の力を組み合わせます。
そうすることで、音量が120~150%になったff~fffの音を出すことが出来ます。
(実際には弦高による限界がありますが)
なるべく腕の重さで弾きたい
最大の弦のたわみを発生させるために指の力を使い過ぎてしまった場合、リリース速度が上がり、音色のコントロールも難しくなります。
親指は、関節を固定するようにしましょう。
弦をたわませるための力の大部分を腕により発生させます。
すると、指が極端に速く抜けることも無いので、リリース速度が遅くなり音も太くなります。
腕が持つ力に比べると、最大に弦をたわませてもそれ程大きな力を使っている訳ではありません。
このように腕で弾いてしまうと、手の動きが大きくなり弦の位置を見失いやすいです。
しかし、和音の場合も含めて低音をアポヤンドすると手が動きません。
低音をアポヤンドするタイプの奏者で音が大きい方は、皆このタッチを使っていると思います。
追記:親指の関節ロックと声部のコントロール
親指の関節をロックしてしまうと、他の指も動かしにくくなってしまいます。
親指は握るように動かしつつ、腕の重みを伝えるのが良さそうです。
ただし、全ての声部がフォルテなら全ての指の関節をロックすれば良いです。
(握らなくても、弦を滑らせるだけで指が抜けます)
低音のみ強調し、他の声部は抑える場合が難しいです。
親指をパワフルに使う分、上の声部のコントロールの難易度が上がります。
手を高音弦側(構えて下向き)に押すことで低音の音量が増え、高音の音量が減ります。
指だけで操作する場合と腕が介入する場合では、指先と音量の感覚が異なるため、これらをリンクするように練習しましょう。
追記)この記事で書いているほど、右手を押し込まないとフォルテが出ないのはタッチが悪いです。タッチを磨いてから気が付きました。
この記事は以上となります。
最後までご覧いただき、誠に有難うございました。