クラシックギターの定番曲である「愛のロマンス」は、1952年にルネ・クレマン監督の映画「禁じられた遊び」にてナルシソ・イエペスが採用したことで一躍有名になりました。
作曲者は長年に渡って不詳とされてきましたが、アントニオ・ルビーラによるものと判明しています。
こちら、フリー素材の10弦ギタリストです。
本家のナルシソ・イエペスを知っていると、顔が日本人にしか見えなくてちょっと面白いです。
(イラストなのでしょうがない)
愛のロマンスは難所が多々あり、腕に自信がある方でも綺麗に弾くのは中々難しいです。
今回は技術的な課題に焦点を絞って愛のロマンスを解説します。
右手
旋律を弾くaの指をアポヤンドすることがよく言われていますが、初心者は慣れるまではアルアイレで良いと思います。
曲が手の内に入ってきたらアポヤンドの練習を始めましょう。
アルアイレの場合であっても、旋律を良く聴き、aの指の音を強調するようにします。
プランティングをしてみる
プランティングとは、音を出す前に弦の上に指を置いておく技術です。
置ける右手の指を全て置いてしまうことをフルプランティングと言いますが、この曲でpimaの全てを置いてしまうと音が途切れてしまいます。
ゆっくり弾く練習の中で、次に弾く音だけをプランティングしてみると良いでしょう。
「1弦のaを弾いたらすぐに2弦にmを置く」「2弦のmを弾いたら3弦のiを置く」といった具合です。
これを行なっておくと頭の中に「右手に対して弦が空間上のどの位置にあるか」が正しく記憶されていきます。
左手
よく言われることですが、長調(明るい)になってからの難易度は全く初心者向けではないと思います。
単純なアルペジオで曲が進行するので大きな工夫はしにくいのですが、少しでも弾きやすくなる方法を紹介します。
アルペジオは順番に押さえる
この曲でいいますと、旋律と低音(aとpで弾く音)を先に押さえて、内声(mとiで弾く音)は後から押さえましょう。
最初はしゃらくさいと思うかもしれませんが、これを丁寧にやっておくと後の上達に繋がります。
良質な情報を少しづつ脳に入れた方が学習速度が早まります。
セーハの押さえ方
複数の弦を同じ指(基本的にはi)で押さえることをセーハと呼びます。
バレーと言ったりもします。
バレーは英語では「bar-棒」の意味ですが、人間の指は棒ではありません。
指は力を入れる箇所を調整することが出来ます。
簡単な曲でしたら、棒のような指でも演奏可能かもしれませんが、難易度が上がれば力んで曲を最後まで弾き切ることが出来ないかもしれせん。
力みは指先から得られる情報を妨げますので、効率良く上達することも難しいでしょう。
音を出す弦のみ大きく力を入れるようにします。
詳細な解説、前半!
1小節目
冒頭は左手が4ポジションからスタートします。
4ポジションとは写真の状態です。
(1の指が4フレットにある形)
この状態が出来ていれば、1弦にただ指を下ろすだけで正確に弦を押さえられます。
初心者の方は指を1本ずつ置いていくような弾き方になりがちです。
(ポジションの意識がないので)
一見遠回りに思えるかもしれませんが、ポジションを意識した方が上達が早いです。
また、旋律には左手でビブラートをかけても良いでしょう。
ビブラートをしやすいところとそうでないところ(例えば難しいセーハの部分)で極端に差があるとあまり綺麗でないかもしれません。
2小節目
ラーソは2の指で弦の上を滑って移動します。
4での移動は初心者は安定に欠けると思います。
(すぐに出てくるのですが)
これにより、2ポジションに左手が移動します。
4小節目
左手を全く押さえない開放弦の部分がありますので、そこで3ポジションに左手を移動させます。
ソーシの部分が適当に処理しがちだと思うのですが、4の指を伸ばしてシを取るのは推奨しません。
3ポジションで1の指でビブラートをかけつつ、miを弾く間に1ー2を拡張して4ポジションに移動するのが良いでしょう。
何も考えずに弾いてもこれくらいは弾けてしまうのですが、コンクールに出るレベルを目指すならこういったポジションへの意識が重要になります。
5小節目
4の指を滑らせて9ポジションへ移動します。
小指が12フレットに移ること、左手が9ポジションに移ることの両方をチェックしましょう。
6小節目
レードは2ー4で取りましょう。
ドを4で取る際は、5ポジションに左手を移動させます。
レを取った2の指を6フレットに弦上をスライドして移動させ(赤丸)、その結果として4の指が8フレットにある状態を目指します。
4の指単独で8フレットを狙うのはやめましょう。
それをするのであれば、レードを4-4で取った方が良いです。
7小節目
低音のラを開放弦にするのか、6弦5フレットで押さえるのか、意見が分かれるところだと思います。
両方やってみてどちらも同じくらいの音の切れ方で弾けたのですが、セーハの深さを調整しながらの移動は難しいと思いますので、6弦までここでセーハしておくことを推奨します。セーハした際も、始めは6弦にだけ力を入れ、2弦3弦と順に押さえていきます。
9小節目
セーハを5フレットから7フレットへ移動させます。
移動中は完全に力を抜き、移動後すぐに1弦と6弦だけ(赤丸)音が出る状態まで押さえます。
他の弦は後から置いていきます。
10小節目
シ♭を小指の拡張で押さえます。
11小節目
再び4ポジションに左手を移動させます。
3弦8フレットにあった2の指を5フレットにスライド移動してポジションの目安とするのもありでしょう。
(3弦を弾く前に離してください)
13小節目
違う弦の同一フレット上に123の指を並べる押さえが登場します。
この際は指で何とかしようとするのではなく、左手を回転させましょう。
15小節目
ミーシーソは音は重ねなくてかまいません。
ソはどの指で取っても良いですが、13小節の回転とは反対の手の回転で弦を押さえるようにしましょう。
(指だけを伸ばさない)
後半!
17小節目
1ポジションが綺麗に取れることを意識しましょう。
初心者にはこの段階で難しいですね。
19小節目
初心者には少し難しい移動だと思います。
1と4だけを最初に押さえることに専念します。
前の小節の3弦のソ♯とこの小節の2弦のミが切れないことを聴きましょう。
4の指は2弦上に待機させておき、1の指を手の回転によって6弦上に移動させる方法が良いのではと思います。
練習の時は「4の待機、1を押さえるための回転量の調整」を意識しましょう。
20ー21小節目
この移動がこの曲の中で最も難しく、嫌がられるのではないでしょうか。
個人的な対策としては、3拍目のレ♯ーラーファ♯を4ー1ー2に押え替えして、3の指を開けておきます。
この後、余裕があれば1弦に3の指を置いても良いです。
(そこまでの余裕は無さそうです)
移動したら、6弦と1弦の音を出すことに集中して、2弦3弦の指は後から置きましょう。
22小節目
レ♯は4の指の拡張です。
23小節目
4の指から左手は順番に置いていきましょう。
シを押さえるのはルート(指の根元で押さえる)が良いでしょう。
24小節目
レ♯は4の指の拡張です。
この後、4の指を立てるので、始めから少し立てて押さえましょう。
25小節目
先程置いた4の指を立てて9ポジションに移動します。
27小節目
こちらもかなりの難所です。
5ポジションで、3ー4の間を拡張させてド♯を押さえます。
低音のラは開放弦です。
以下に押さえ方を3パターン載せます。
4の指をネック側に引っ張ってしまい、音程が上がることに注意しましょう。
(私は載せた順に成功率が高かったです)
- 25小節の部分セーハをガイドフィンガーとして滑らせるパターン
- ルートで2弦5フレットを押さえるパターン
- 普通に押さえるパターン
ここを乗り切ればゴールまで後少しです。
29小節目
1ポジションを意識して4の指を押さえます。
(17小節と同じです)
30小節目
4の指をガイドフィンガーにして移動します。
31小節目
前半の最後と同様、低音は重ねません。
ソ♯を4の指で取る際に指を伸ばさずに手を回転させて押さえるようにしましょう。
まとめ!
以上で愛のロマンスの技術的な解説は終わりです。
工夫でどうにもならない難易度の箇所が多く、初心者向けの曲と言いながらかなり難しい印象です。
演奏のリクエストも多い曲だと思いますので、是非レパートリーにしておきたいところです。
(私は今回の記事を書いていて嫌でも暗譜してしまいました)
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。