大学の後輩から、「サークルの部員がクラシックギターを購入する予定なのでいくつか見繕って貰えないか」と依頼を受けました。
そこで、メルカリ・ヤフオクを使って中古で程度が良いものを探し、5本の楽器を購入いたしました。
(画像は後輩の部屋です。)
最も高いもので2万円を切る値段です。
初めて楽器を購入する場合は、4~5万円以上出せるなら新品を買っても良いと思います。
しかし、どうしても1~2万円で安く済ませたいなら中古品(元値が4~5万円)をネットで買うことも選択肢に入ってきます。
知識があれば安く良いものを買えるケースもあります。
下記は買ったギターが入っていたケースです。
この記事では、以下の内容を説明します。
- ネットで買うならどこに注意して買えばいいか
- どのメーカーがおすすめか
- 買ったギターはどうだったか、どんな不具合があったか
どこに注意して買えばいいか
ヤフオクやメルカリの場合は、綺麗なもの、全ての状態が良いものを買おうとすると、みんなが欲しいものになりますので、必然的に値段は高くなります。
そのため、安く買いたい場合はどこかで折り合いを付ける必要があります。
私は、ナットやサドルの調整等の簡単な作業は自分で出来ます。
しかし、割れの修理や剥がれた力木の再接着、反ったネックの熱によるリセット等は出来ませんので、そういった条件は譲れません。
ネットで買う際にチェックしている点は以下の通りです。
割れがないこと
ブリッジの両脇、ギターの下、指板の両端、くびれの部分は特に割れがある可能性が高いです。
私は一度割れがある楽器を買ってしまったことがあります。
写真で、割れの線と貼られていた弦が重なって分かりにくかったためです。
こういった失敗経験があると、どんどんタフになっていきます(笑)
割れは、誰でも見れば分かるだろう、と思うかもしれませんが、見慣れていないと判別は難しいかもしれません。
木目に筋だけ入っているような、完全に割れきっていないヒビの状態は見分けにくいです。
量産品の楽器はウレタン塗装なので、塗装ごと割れることから比較的分かりやすいと思います。
管理状態が良さそうであること
これは各自が妥協できるレベルによります。
傷や塗装の荒れは音には影響しません。
しかし、管理状態が悪ければ、高温により音が悪くなっていたり、力木が剥がれていたりといった不具合がある可能性は高くなります。
力木の剥がれなど、ギターの内部の不具合は外観から判別不可能のため、管理状態でなるべく可能性が低いものを選ぶしかありません。
表面板の弦の下にばかり傷がついているのは、熱心に弾かれてきた可能性もあります。
しかし、演奏で付かないような場所に沢山傷がある場合は扱いが悪かったのでしょう。
また、量産品であればあまりに古い楽器は避けたほうが無難と思います。
1980年代等、古い方が良い材料が使われている可能性があるので、結局はものによりますが、悪い意味で経験豊富なケースも多いと思います。
ネックの反りが無いこと
理想はごく僅かな順反りです。
これは、誰もが気を使っている項目だと思うので、出品者側もしっかりチェックしている場合が多いようです。
量産ギターの場合は最初の弦高がかなり高いので、完全なストレート若しくは僅かな逆反りでも良いと思います。
初心者の方がネックの反り具合を判断するのは難しく、写真ではっきり分かるものでもないので、「かなり、極度の、大幅に」等の表現が使われていなければそれほど気にしなくて良いでしょう。
フレットが著しく減っていないこと
中古で買う場合は出品者の表記を信じるしか無いのですが、最低で7割くらい残っていれば良いのではないでしょうか。
フレットは音質と弾きやすさの両方に影響するので、あまりに減りが大きいものは避けたいところです。
弦と接する面は通常丸いので、平たくなっている場合はそれなりに摩耗していると思って良いでしょう。
安価な楽器ですと、フレットの打ち替えで楽器本体と同じくらいの値段が掛かってしまうので、フレットの打ち替えは行わないのが普通です。
妥協する点は?
私が妥協していることは、弦高の高さです。
ナットとサドルは後からどうにでも調整できるので、ネックの状態が良ければ弦高は気にしません。
新品で売られているものであっても、始めから完璧なものは無いですので、弾きにくさを感じたら調整するつもりでいた方が良いでしょう。
良心的なお店であれば、そのお店で購入した楽器でなくても対応してくれるはずです。
多少、ものいじりに覚えがある人なら、自分でやってみるのも手です。
サドルやナットは500円位で購入することが出来ます。
店頭(楽器店やハードオフ)で確認する場合は?
見た目では判断出来ない、楽器の機能面をチェックします。
音は勿論ですが、糸巻きの動作も確認しましょう。
ネット上で中古品を買う場合と異なり、傷や塗装の荒れはあまり気にしません。
楽器は音が全てです。
かまえてしまえば、自分の楽器の小さな傷は見えません。
良い音がする楽器は、割れや不具合があっても直して使っていきたいと思わせてくれます。
どのメーカーがおすすめか
定番なのですが、松岡、タカミネ、小平がおすすめです。
時期にもよると思いますが、小平は松ですと鳴りが渋いものも見たことがあります。
ヤマハは、古いものはかなりスパニッシュで、アクションが重いもの、指に力がいるものがあり弾き手を選びます。
最近のものはそう言った問題はなく、むしろ大手メーカーだけあって品質は良く扱いやすいです。
アストリアス、アランフェスも良いと思いますが、上で述べた楽器よりは高くなる傾向があるので、致命的な不具合があった場合に泣き寝入りしにくい価格になるかもしれません。
買ったギターはどうだったか、どんな不具合があったか
全てのギターを送料除き1万円~2万円で購入しました。
ほとんど1万円台前半でした。
購入した全てのギターに不具合(弦高を含む)があり、そのまま初心者に使わせたいと思えるものはゼロでした。
先に結論を言いますと、自分で簡単な調整が出来る人でなければ中古で買うのはおすすめしません。
複数買っても新品より安いので、ダメだったら2本目を買おう、と思えるくらいのポジティブさが必要かもしれません。
ジュニア用630mmスケールの松岡M30L
松岡のショートスケールは張りが弱く、弾きやすい、歌わせやすいと分かっていたので、購入しました。
M30LのLはレディースの意味でしょう。
ジュニア用と商品説明の欄に書いて売られていたのですが、タバコの匂いが染み付いていましたね(笑)
調整を手伝ってくれた後輩の献身的な清掃により、7割の匂いは落ちました。
有難うございます。
また、サドルが極端に低く、ほぼ全ての弦(特に6弦)のビリつきが気になりました。
これはハガキ等を切って下に敷いて調整しました。
この情報だけですと、良いところがないのですが、実は音質はこのギターが一番良かったです。
他の楽器に比べて音が太く、きめ細かい印象でした。
低い弦高からして、コード弾きで使っていたと思われ、前のオーナーが良い環境で保管していたのではと思います。
ヘッドの造形が面白く、河野ギターのマエストロを思わせる形でした。
この形は「高い加工技術を要する」と聴いたことがあるのですが、量産?ギターが真似出来てしまっているのはどうなんでしょうか(笑)
もちろん、実際の河野のマエストロはもっと繊細な形をしております。
タカミネNo.30
今回購入した楽器の中で、この楽器だけが表面板に松を使っています。
以前ヤフオクで購入したことがあったタカミネの印象がとても良かったのですが、この楽器は難点が多かったです。
打たれているフレットの高さが低いため、少し弾きにくく、鳴りもやや鈍い印象でした。(減っていたのではなく、恐らく元々低い)
また、5弦と6弦の糸巻きの軸が割れていました。
この割れは、恐らく出品者も気がついていないと思います。
錆びて黒くなった低音弦が糸巻きに沢山巻かれていたので、そもそも見えないでしょう。
自分のために1本だけ買うのであれば、説明がない不具合は返品すべきと思いますが、安価に購入したものですし、こういった不具合はある程度は仕方ないと思います。
あまり凸凹にならないように瞬間接着剤を流し込んで補修しました。
あとは、ブリッジの装飾が剥がれていました。
これも、出品者側では気がついていなかったのではと思います。
糸巻きの軸割れと同様、再接着すれば問題なしです。
松岡M25,裏板の白濁有り
この楽器は裏板の塗装が変色しているのを承知で購入しました。
この判断は失敗でした。
安い楽器のウレタン塗装はかなりしっかりしています。
触れにくい話なので誰もはっきりとは言いませんが、ウレタン塗装であれば、汗や雨で服が濡れた状態で弾いても、最悪水拭きしても影響はないのではないでしょうか。
そんなウレタン塗装がこういった状態になっているのですから、管理状態が余程悪かったと思うべきでした。
音は他の松岡と比べて少し鈍かったです。
今回、購入した楽器は全て弦を新品に張り替えていました。
この楽器でチューニングする際に、糸巻きのレスポンスがやや悪く、安価な糸巻きであればこんなもの、と思っていました。
しかし、途中から4弦の音程が変化しなくなり、チューニングの音程も聴き取れなくなったか、と自分を疑ったのですが、ペグ?が割れて空回りしていました。
これもペグ本体になるべく凹凸を残さないようにしながら、軸ごと接着しました。
思い入れのある楽器であれば、糸巻きを買って交換した方が無難です。
(高級な糸巻きはパーツ交換出来るものもあります。)
松岡M30
この楽器は1弦から5弦の弦高が高く、独奏でハイポジションを弾くは難しい状態でした。
ネックの状態は全く悪くなかったので、サドルを低くして調整を終えました。
(今回の楽器は全てネックの状態は良かったです)
調整をすることで、音質や音の抜けも明確に良くなりました。
今回購入した中では、この楽器が一番無難だったと思います。
弦を交換してくれた友人が糸巻きの動きが重い、と言っておりましたが、通常使う分には問題ないレベルでした。
音質は杉の楽器らしく上から下までしっかり鳴っており、機能上問題ないいわゆるマツオカの音でした。
松岡M25
これも、上記の松岡M30と同じく1~3弦の弦高が高い状態でした。
サドルを外して調整しようとしたのですが、この楽器はサドルが固定されていました(笑)
まあ、そんなこともあるだろうと思っていましたので、楽器に取り付けられたまま弦高を調整しました。
下げた弦高が分かりやすいように鉛筆で色を付けて作業をしていました。
この楽器も糸巻きの動きが重かったのですが、実用上全く問題ないレベルでした。
音質は上記の松岡M30と概ね同じです。
初心者が中古で買うのは厳しいのでは
今回の結果を踏まえると、安いからといって全くの初心者がネット上で中古の楽器を買うのはおすすめしません!
私も思っていたより不具合が多く驚きました。
今回は5本の楽器を調整しましたが、慣れていても面倒なことに変わりはありません。
いざ楽器を始めようとした方に、不具合のある楽器が届くとかなり萎えるのではないでしょうか。
また、楽器の健康状態は問題なかったとしても、弦高が高い場合は、難易度の高い独奏の曲を弾くことが大変になります。
私も大学時代に買った1本目の楽器は、弦高が高いまま在学中4年間ずっと弾いていましたが、そういった楽器で脱力を会得するのはほぼ不可能だと思います。
その楽器は、卒業後に後輩に譲るために調整したところ、弾きやすさも音質も格段に良くなりました。
初心者がネットで楽器を買う際は、新品の楽器を買う方が無難かもしれません。
ギターの先生や店員等、詳しい人が身近にいればベストです。
今後、店頭で楽器を買う際のチェックポイントも記事にしたいと思います。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。