バッハのフーガを毎日弾くつもりです。

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最近、アマチュアギタリストの友人のバッハのフーガの演奏を聴く機会がありました。
ポリフォニーが全て聴こえる極限まで研ぎ澄まされた雑味の無さでした。
プロギタリストのであってもこの完成度はお目にかかれません。
(タッチの性質で「音が拡散する」タイプの奏者ですと、技術があっても分離して聴こえません)

演奏そのものも勿論素晴らしいのですが、「ギター演奏における上達とは何か?」に対する答えを見せつけられたように感じます。
私が感じた要素は以下の通りです。

  • クリアな音色でポリフォニーを表現しているのに、素晴らしくギターらしい音色
  • ポリフォニーとしての旋律が語る・歌うことを重視しており、表現が音量依存ではない
  • 3~4声で動く場面でも全ての音を聴き取っている
  • 左手の脱力が出来ている

私も影響を受けて、バッハのフーガをゆっくり弾くことから毎日の練習を始めようと思っています。
(三日坊主おじさんなので、いつまで続くか不明です)
その理由をまとめます。

この記事でわかること

右手「音色・音量を緻密にコントロールする」

フーガを弾く際の右手の注意点をまとめます。
このポイントを意識することで上達に役立つはずです。

忘我のフォルテを多様しない


楽器演奏において、大きな音で弾くことはアピール度が高く効果的です。
ただし、コントロールの範囲外のフォルテを多様してはいけません。

ff(フォルティッシモ)、fff(フォルティッシッシモ)を使う場合は極限の感情(怒り・喜び等)があった場合です。
我を忘れる程の感情があったときに使うものであって、常用するものではないです。
自らコントロールの手綱を手放しています。

大きな音を出すことは技術が必要です。
しかし、一度会得してしまった後は上達の余地は多くないと思っています。
(弱音に比べて!です)

コントロールの精度を上げ、範囲を広げる


ギター中級者以上が右手の上達を目指す場合は、弱音でのコントロールの精度(確率)を上げることが重要です。
ppピアニッシモから練習を始めて、完全にコントロール出来る範囲の音量・音色を拡大していくべきだと思います。

バスケットボールでいきなりスリーポイントシュートを練習しないのと同じです。
近い距離へのシュートがコントロール出来ないのに、ボールを遠くへ飛ばそうとするとフォームがガタガタになってしまいます。
逆に、サッカーでは初心者から全力でボールを飛ばす練習をすると思います。
それは、ギター初心者が大きな音を出すべき理由と似ています。

音量の「大きい・小さい」どちらからでもアプローチは可能です。
「曲の表現の掘り下げ」「緊張した際の挙動」を考えた場合、弱音から極めていくべきと思います。

プランティングとリリースを大事に

音量や音色を緻密にコントロールするにはプランティングとリリースが重要です。
(もう、この2つはセットで考えるようにしましょう)

プランティングはその重要性が語られるようになりましたが、リリースも非常に重要です。
むしろ、リリースのためにプランティングが存在すると思っています。
以下の項目をコントロールしましょう。

  • 音量(弦のたわみ量)
  • リリース速度
  • 爪の角度や接地面積

フーガ等のポリフォニーの曲を緻密に弾くことで右手の感覚が開発されるように思います。

左手「柔軟性と脱力を身につける」

バッハのフーガを弾く際は、高い左手の技術が求められます。

左手のストレッチ(荒療治)

元々ギター曲でないこともあって、バッハのフーガを弾く際は左手の柔軟性が求められます。

私はギターを始めて1年くらいでバッハのフーガを(無理やり)弾きました。
そのため左手の拡張にはあまり苦労しません。
(手はとても小さいですが)

左手の能力開発のためにバッハのフーガは役に立ちます。
ただし、左手が痛む場合はすぐにやめましょう。
(基礎練習は少しずつ練習出来るのでリスクが低いです)

左手の脱力

複雑なポリフォニーを弾く際は、左手が脱力していることが求められます。
難しいからといって力むと、指先の感覚が鈍くなり、処理落ちして弾けなくなります。

拡張や柔軟性が求められる場面でも、すべて脱力した状態で弾きます。
一度柔軟性を身に付けてしまえば、ほとんどの場面で頑張らなくても指は開きます。
他人から見るとすごい運指に見えても、弾いている本人にとっては何でもない状態を目指しましょう。

力まずに弾ききれない場合は、まだ上達の過程ということです。

ポリフォニーを表現する

右手・左手の他、フーガでは耳も能力開発が必要です。

耳で聴く・追いかける


ポリフォニーを表現するには、弾いている側が音をモニタリング出来ていることが重要です。
過剰にコントロールしようとしなくても、聴こえてさえいれば無意識に音をコントロールするようになります。

以下の点に気をつけましょう。

  • 音価の長い音も聴き続ける
  • 1声ずつ取り出して弾いてみる
  • 聴こえやすい音は捨てて、聴こえにくい音を拾う(練習時)

声部として成立していないと弾く意味がない

バロックのフーガのような楽曲の場合、ポリフォニーの1声として成立していないと音を出す意味が無くなってしまいます。
同時に4つ音が流れていても、そのうちの3つしか横の繋がりで捉えられていないのであれば、残り1つの音を弾く意味が無くなってしまうということです。

初心者がフーガを弾こうとすると、技術的には弾けたとしても出している音数の割には効果が薄いという結果になります。
(耳を鍛えれば問題なし)

フーガの主題の強調

フーガを弾く際は「主題(テーマ)を強調しましょう」と言われます。
どこまで強調するかも議論が分かれるところですが、人前で弾くにはやり過ぎる位で丁度良いと思います。
「音楽の構造に影響がない範囲で、しっかり強調する」が個人的な結論です。

ピアニストのリヒテルによるBWV998フーガはやり過ぎというか、ピアノならではの表現に思います。
ギターでこれをやると、他の声部が貧弱に聴こえます。

声部の弾き分け方

声部の弾き分けに必要な要素は以下の通りです。
この何れかで表現します。

  • 耳で聴き、旋律を語る・歌う(最重要かつ毎回行う)
  • 音色をコントロールする
  • 音量(大・小)をコントロールする
  • 他の声部を押さえる(音量・倍音・音価を短くする)

注意点は、横に複数流れる声部の弾き分け・強調で「力む」という選択肢が無いということです。
1声だけ音量を変えるとしても、「弦を押し込む量を増やす」だけです。

声部の弾き分けをしようとして、誤って力んでしまうと、力みは左手にも伝染します。
弾き分けをしようとしている位の場面ですから、恐らく左手も難しいはずです。
「力み」があると、指先の情報(触感や位置情報)が失われミスの原因になります。

特定の声部を強調しようとして力むのは、手段と目的が一致していません。

「バッハのフーガを毎日弾く」まとめ

私はギターという楽器はポリフォニーの表現で魅力を増す楽器だと思っています。
(F.ソルの曲のように)

バッハのフーガを弾くと、右手・左手・耳の成長に著しく役立ちます。
ギターのためのオリジナル曲ではないにせよ、バッハのフーガはギタリストに必要な能力を伸ばしてくれることは間違いないでしょう。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

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この記事でわかること