1947年、弦のメーカーであるオーガスチン社(アルバート・オーガスチン)はアンドレアス・セゴビアと共にナイロンをギターに初めて使用しました。
ナイロンを使用したギター弦の始祖と言えるのがオーガスチンです。
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ギターの神様A.セゴビアもにっこり
オーガスチンの中で私が最も使用する頻度が高かったのが、今回レビューする「高音弦 リーガル・低音弦 レッド」の組み合わせです。
他のメーカーよりも安価で、音量と個性があるためおすすめの弦です。
弦のテンション
![augustine-regal-red](https://classical-guitar.jp/wp-content/uploads/2022/08/augustine-regal-red5.jpeg)
低音弦と高音弦が2本ずつ入っている
「オーガスチン リーガル・レッド(赤)」の張りは比較的強めです。
高音弦 リーガルが強め、低音弦 レッド(赤)が標準程度のテンションです。
後述しますが、鳴らしやすい弦のため、強烈な張りは感じません。
張力(kg) | 直径(mm) | |
1弦 | 8.53 | 0.75 |
2弦 | 6.40 | 0.85 |
3弦 | 6.25 | 1.05 |
4弦 | 7.21 | 0.75 |
5弦 | 6.93 | 0.89 |
6弦 | 6.68 | 1.08 |
合計 | 42.00 |
張った後の変化
弦を張ってから1〜3日は、低音弦に金属的で荒い成分があります。
これが落ち着くまでは、粗野な低音に感じます。
高音弦は特別には伸びませんが、太さがある分、伸び続ける時間はやや長い印象です。
数日経過させ低音弦の粗さが取れた時点で、本番で使える状態になるでしょう。
寿命は?
低音弦の膨らみ・金属感・暖かさが完全に無くなってしまったら弦の寿命だと思います。
力技で低音を鳴らしていると、低音がヘタってしまいやすいです。
それを弦がヘタったと感じて、寿命だと判断してしまうかもしれません。
私はオーガスチンの低音弦(赤)の寿命が短い印象を持っていました。
しかし、楽器を休ませつつ使っていれば、完全に輝きが無くなるまでは1ヶ月ほど持つ印象です。
うまく鳴らせば意外と長持ちします。
オーガスチン赤(低音弦)の特徴
暖かみのある音
低音弦 オーガスチン赤の最大の特徴は、暖かみのある柔らかな低音です。
楽器うまくハマると、これぞギターという太い芯を感じる鳴り方となります。
過去に「アルハンブラの想い出」を弾いていた際にこの低音を使ったところ、包み込むような音質が曲にとてもマッチしたのを覚えています。
ポリフォニーが優位な曲では少し音像のぼやけを感じるかもしれません。
不良弦はやや多い
沢山あるギター弦の中で、オーガスチン赤(低音)は不良弦が多めです。
不良弦だった場合、音程が悪かったり、異常な振動やビリつきが生じます。
「○回連続で不良弦だった」という嘆きを聴くこともあります。
しかし、私はガサツなので、全く使えない程に致命的な弦に当たることは稀だと思っています。
音質は軽い
オーガスチン赤の低音弦の音質は軽いです。
暖かさ・響きとして音が広がるため、密度は低くなるのかもしれません。
この音質の軽さによって、合わない楽器は低音の重量感が減ったように感じてしまいます。
また、弦を張って落ち着かない時期は、軽さと金属的な鳴りの両方を同時に体感することになります。
粗野で軽い低音になったと感じるので、本当に合う・合わないを判断するのは弦が落ち着いてからにしましょう。
相性の合う楽器は?
オーガスチン赤は低音の音質が軽くなっても気にならない楽器に合います。
マイナスに着目した表現になっていますが、相性だけで言えばこの表現です。
ハウザーやドイツ系の楽器のように元から重い低音の楽器は、低音が軽くなってもあまり気になりません。
最初から低音が軽い楽器に関しても、元々持っている個性と合うのでマイナスの要素は表れません。
弦が持つ倍音の性質は、日本の製作家の楽器にもそれなりに合うと思います。
(モデルによります)
私がオーガスチン赤を張った中では、ゲルハルト・オルディゲスとブーシェ風に魔改造したアントニオ・マリンには合いませんでした。
この2者はそこそこの低音の重さ(中途半端な)があるので、軽くなったかどうかの変化が目立ってしまいました。
(通常のアントニオ・マリンにはむしろ合いそうですが)
音色の性質も合わず、品が無いように感じます。
現在所有している中では、ホセ・ヤコピとオーガスチン赤(低音弦)の相性が良いです。
元々持っている暖かみのある低音と弦の性質がマッチし、音質の軽さも感じさせません。
ヤコピは恰幅の良い低音を持っているのですが、バルセロナ派の低音はそれほど重くはないのかもしれません
リーガル(高音弦)の特徴
艶と色気がある
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着色の紫が鮮やか
高音弦のリーガルは、音色に艶と色気があります。
多少わざとらしさがあるので、ビニール的という表現をされてしまうことがあります。
楽器に表情・色・音楽性を与えたい場合は、リーガルの持つ個性が有効に働きます。
太く豊かな音
リーガルは他の弦に比べて、物理的に弦が太く感じます。
音も太く、キンキンしにくいため、日本人の感性に合います。
他の銘柄に比べて特に1弦が太く感じるのは、大きなメリットです。
ギタリストの朴葵姫氏も、愛器フレドリッシュに1弦のみリーガルを張っていたかと思います。
(かなり前の情報ですが)
太いのに鳴らしやすい
リーガルは太さの割に鳴らしやすい弦です。
(相性が合う場合)
テンションは高いはずですが、太い弦特有の鈍さがなく、圧力を加えるとしっかり受け止めて音に変換します。
ただし、繊細に反応するとは言えず、弱音が得意な訳ではないです。
音の芯が太く、ビブラートもかけやすい印象です。
左手の引っ掛かりも程良くあり、豊かに歌わせる楽器に合う弦です。
不良弦は少なめ
高音弦 リーガルは、標準のオーガスチンの高音(黒・赤・青に付属)に比べて不良弦は少なめです。
私は、はっきりと分かる不良弦に当たった記憶は無いかもしれません。
相性の合う楽器は?
イタリアの楽器には、リーガルは抜群に合いました。
元々弦が持っている響きとイタリア的な響きが似ているため、相乗効果が得られます。
弦とギターの両方でたっぷりと歌わせることが出来ました。
日本の製作家や量産ギターにもリーガルは合います。
日本の楽器は、音の太さに重きを置いているギターが多く、音の太いリーガルがはまるケースが多いです。
響きの点で強烈な個性を持っているものも少ないため、リーガルの響きが程よい主張を加えてくれます。
私も量産ギターと邦人製作家のギターを使っていた頃は、リーガルを張ることが多かったです。
当時習っていた先生もかなり厳しい耳を持っていましたが、リーガルを良く使っており、高く評価していました。
(その先生も、国内製作家の楽器をメインに使っていました)
リーガルは響きの個性が強いため、いわゆる古名器には合わない印象です。
オリジナルのトーレス、サントス、エステソ、バルベロ、アグアド、フレタ、アルカンヘル、ハウザー、ブーシェ、ロマニリョス、ルビオ、ベラスケス等には合わない気がします。
ブーシェ風に魔改造したアントニオ・マリンにリーガルを張ってみましたが、楽器自体の響きと弦の持つ響きが渋滞していました。
元々、品の良い味を持っている素材に、濃い調味料をかけるのに近いです。
私が現在所有しているラインナップでは、リーガルが合う楽器は無いかもしれません。
とても気に入っていた弦なので、寂しさを感じます。
オーガスチン リーガル・レッド(赤)のまとめ
オーガスチン リーガル・レッド(赤)は、音量と音楽性・個性を持った優秀な弦です。
価格が安いのも、実用的で良いです。
ギターの弦はプロアルテが標準とされています。
しかし、弦選びで迷うような段階で所有しているギターにプロアルテを張ると無個性・無表情に終わってしまう印象です。
日本国内で弾かれているギターの内訳を考えると、①量産ギター ②国内製作家のギター ③スペインの製作家のギター が多い筈です。
この比率を踏まえると、オーガスチン リーガル・レッド(赤)がフィットする可能性は非常に高いと思っています。
(合わなかったら、変えましょう)
今回の記事は以上となります。
最後までご覧いただき、誠に有難うございました。