M.ジュリアーニの120のアルペジオを解説する。

PR〈景品表示法に基づく表記〉

アルペジオの達人であるマウロ・ジュリアーニが教本「STUDIO per la CHITARRA」の中で120のアルペジオのパターンを紹介しています。
(中には、これはアルペジオか?というものもあります)
これは右手の強化のための特効薬と思っています。

先日、速弾きに関する投稿をしました。
しかし、速弾きに特化した練習をするよりもこの「120のアルペジオ」を行った後の方が指は速く動くようになっています。
これは「120のアルペジオ」に対する初期段階の順応による効果が大きいと考えており、頭打ちになれば速弾きに特化した練習も必要になるでしょう。

先日、マリア・エステル・グスマン氏のマスタークラスを聴講した際にも「120のアルペジオは上級者であってもやっておくべき」と指導されていました。

(追記)
「120のアルペジオ」は、パターンの数が多いだけあって多くのメリットが潜んでいます。
その全てを学習者が見つけ切れるものではないと思いますので、安易にこの練習をやめるべきではありません。
(練習効果を発見し、意識した方が高い成果が得られます)

この記事でわかること

私の個人的な使い方

始めは左手を押さえない

この「120のアルペジオ」はハ長調で主和音と属七の和音が繰り返されています。
ほとんど同じパターンの運指を120回繰り返すことになります。

邪道なのですが、始めは左手を省略し右手のみで練習しても良いと思っています。
私の場合、120パターン全てを検証したところ、指がその場に居着いてしまい力の入れ具合が麻痺してしまいました。

バッハのフーガやバリオスの大聖堂は全く力まずに弾ききれますが、「120のアルペジオ」での同じ押さえは感覚が鈍化して「力んだ状態」が平常状態になりそうなので避けています。

しかしながら、左手を省くことで強弱や旋律を繋げる等の音楽的な要素が無くなってしまうデメリットもあります。

慣れてきたら、自分でカデンツを当てはめて毎回違う左手のパターンにして練習するつもりです。

抜粋する

120パターン全部のアルペジオを行っていると、1つ1分だとしても2時間かかってしまいます。
そのため、自分が練習したいパターンを考え、いくつかを抜粋します。

私は最大で55パターンを練習するように絞っています。

もっと絞ることも出来なくはないですが、最終的にはこの「120のアルペジオ」はパターンの省略が出来なくなると考えています。
その理由は、「弾けるようになったパターンを更に練習すべきか」という問いの答えが「Yes」であるためです。

練習の段階

はっきり分けられるものではないですが、練習のステップも2段階あると思っています。

混乱を無くす練習

頻繁に曲に登場するパターンでは問題ないのですが、あまり使わない右手の運指が登場すると指先に迷いが生じます。

これは上達に繋がるサインですので「特定の右手の運指による脳の混乱」を感じたら徹底的にそのパターンを練習しましょう。
弦に対する指の位置感覚のマッピングを行い、混乱を無くすことが重要です。
この意識で練習していれば、自然と無駄な動きも減るでしょう。

速度を上げる練習

上記の混乱が生じるパターンを潰していくと、一旦はストレスを感じるパターンが無くなると思います。
その状態に到達したら、練習している各パターンの速度をメトロノームで測りましょう。

恐らく、maが入ってくるパターンは苦手で、弾ける最大のテンポも遅くなりますので重点的に練習する必要があります。
また、他のパターンに比べて充分速く弾けるパターンであっても、自分が弾く可能性がある曲で要求されるテンポを大きく上回っていなければなりません。

速度を上げる練習をする中で指先の混乱を感じたら、そのまま闇雲に練習するのでなくテンポを落とすことが大事です。

個人的にやっておきたいパターン

自分で書きながら思いますが、有益なパターンばかりで全く抜粋になっていません。
それでも、全部やるよりはマシだと思います。

No.3とNo.5


No.3はimを①弦、②弦に固定させpが動くパターン、No.5は並んだ弦でmipで弾いた後、pのみ離れた弦を弾くパターンです。

私はpimよりもmipの順に弾くのが苦手なので採用しています。

ジュリアーニの大序曲でも使うパターンですので、高速で弾けるようにしたい形です。
こういった簡単なパターンでも、最終的にスピードを上げたければ除外することは出来ません。

No.7とNo.8

No.8の1拍目の3つ目の音はGと思います。
時間がないときはNo.8のみ練習します。
mとaが交互になっているだけで一見簡単なのですが、速度を上げると私のスペックですと処理落ちが発生します。
No.7と合わせて練習すると良い意味で脳が混乱してくれるのではないでしょうか。

No.9とNo.10

実はこの2パターンは、1弦にaを置いたまま弾く練習になります。
No.9と10共に3拍目でaをセットし、弾くまで置きっぱなしにします。
パターン自体は簡単なので、スピードを上げると良いでしょう。

No.11

拍の頭のpiがアルペジオ(バラして弾く)になりがちと思うので、良く聴いて練習します。

No.14とNo.15

あまり登場しないimaの並び替えにpで弾く低音が付いたパターンです。
普段使わないパターンは伸びしろがあるため重要です。

No.16

既に登場したパターンの複合に見えると思いますが、1小節の中でmaが隣接した「3弦と2弦」を弾く場合と「3弦と1弦」を弾く場合の2つが含まれています。
pimを456弦に移せば、4弦と2弦、4弦と1弦の開きのパターンの練習になります。

No.17

ジュリアーニの指定した運指ではなく、ヴィラ・ロボスのエチュード1番のような運指で弾くのがオススメです。
「pipmiapmpipm」となります。

No.25~No.35(No.33を除く)

最早、抜粋でも何でもありません(笑)
全て重要だと思います。
番号が一桁のパターンの複合になりますので、時間が無いときは一桁のパターンを省略してこちらを練習すれば良いでしょう。
最小単位の速さを追求して練習したいときは1桁のパターンが有効です。

No.33はNo.7の速度が倍になっただけですので、不要です。

No.48~No.50

アルベルティバス上で1弦を弾く形です。
あまり沢山やってもどうかと思うので基本的には省略するのですが、私はこの3つだけは弾きます。
1弦の弾き方はジュリアーニの運指ではなく、No.48ならaam、No.49ならamm、No.50ならamamの順に弾きます。

また、逆の運指としてmamaを当てはめて弾きます。
普段使わないパターンなので、脳に効く感覚があります。

No.81~No.100

こちらも飛ばせるものがなく全て重要と思います。

特筆すべきはNo.89、No.91でしょう。

ジュリアーニの運指ではなく、逆指の練習として
「pimamami」で弾きます。
始めは中々落ち着かないと思いますが、徐々に慣れます。

No.94、iは弾いた一つ上の弦をpで弾くパターンです。
スケールを思わせるNo.95等、面白いパターンが多いです。

No.101、No.104

No.101~108はアルベルティバスが展開したパターンが並びます。
ここで登場する全てをやる必要はないと思っており、私はNo.101とNo.104の2つを選びました。

No.109、No.110

miをmaやamに置き換えて練習しても良いでしょう。
No.109は低音を弾くpに上声部が影響されないように、均一かつ一定を意識して弾きます。

 

不要なパターン

(追記)
しばらく「120のアルペジオを」使ってみましたが、
ここで不要と書いたものでも、弾きにくいと感じるものならば使ったほうが良い
考えを改めました。(すみません)
1度の練習で何度もやらなくても良いので、毎日多くのパターンに触れるのが良さそうです。

No.1

No.1は和音の紹介なので不要です。

No.13

同じ指を連続して使う練習は日課としてやらなくても良いのではと思います。

No.18~No.24

和音の練習に近くなりますので、アルペジオに特化して練習する場合は不要と思います。
私は後半の16分音符のパターン(No.48~50)から抜粋して練習することをオススメします。

No.36~No.80

必要なパターンで述べたように一部は抜粋して使いますが、全部をやる必要はないでしょう。
この練習を否定している訳ではなく、限られた時間で効率良く上達を目指すには大幅な省略も致し方ないと思っています。

No.111~No.120

非常に有益なパターンと思います。
が、右手に特化した練習と捉えた場合には省略してかまわない内容と思います。
このパターンが登場した曲を弾く際に練習すれば良いと考えています。

下はNo.112の後半の譜面です。
現代では低音を3連符、上の声部を付点と捉えると思います。
しかし、ベートーヴェンやディアベリの時代では上の声部もバスに合わせて弾くことがあるようです。
この場合、譜面上で縦が並んでいますので、3声を同時に弾くのかもしれません。

今回の記事は以上となります。

物事の上達には「成果を観測する」ことが非常に重要です。
「左手、右手が難しい速い曲」を弾けるようになった等の明らかな上達であれば観測も簡単です。
しかし、「弾けるようになった」というのも何%の確率で成功するのかによって定義が異なります。
また、「技術的な難易度は高くない曲」で既に弾ける状態から上達を測るのはもっと難しいです。
ジュリアーニの120のアルペジオを使って、テンポという明確なものさしで継続して練習するのはモチベーションの維持にも繋がるでしょう。

19世紀ギターを弾いてジュリアーニが作り上げたメソッドと考えるとそれ程歴史が無いように思えますが、私には撥弦楽器としてリュートやビウエラ、バロックギター等の時代から積み上げてきたノウハウを感じます。
歴史の長い時間をかけて磨き上げてきた上達方法はクラシックギターにとって重要な財産であると思っています。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

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この記事でわかること