古楽界の巨匠、今村泰典先生のマスタークラスを受講、聴講致しました。
11/9には赤塚のカフェラルゴでギター奏者向けのマスタークラス、
翌日11/10にはギターショップ アンダンテにてリュート等古楽奏者向けのマスタークラスが開催されました。
私はギター奏者向けのマスタークラスを2コマ受講しました。
当初は1コマだけ受講の予定でしたが、残念ながら体調不良で欠席の方がいた為、空いた枠に追加でレッスンを申し込みました。
私は2コマ違ったやり方で今村先生にぼこぼこにやられまして、当初、翌日はレッスンの復習をしようと思いました。
しかし、今村先生から直接お話を聞ける機会は限られていると思い、翌日の古楽奏者向けのマスタークラスも聴講しました。
2日間、土日の時間をほとんどマスタークラスの聴講に費やしましたが、その価値があったと思います。
自分のレッスン
私はアマチュアギターコンクールの本選で弾いたヴァイスのSW46より序曲で受講しました。
右足に置く滑り止めを自宅に忘れましたが、むしろ練習よりは良い演奏が出来ました。
今村先生から頂いた大まかな指摘としては以下の通りです。
- 序曲は二拍子で流れる音楽だが、四分音符で分断され、四角四面な印象である。
- 旋律の弾き方に根拠が無く、闇雲に弾いている。
- 和音の読み方を把握しておらず、緊張と解決が表現されていない。
- 3度以上の跳躍がある場合のノンレガートが全く行われていない。
ちなみに、アマチュアギターコンクールの講評でも同じご意見を頂いておりました。
坪川真理子先生には「全体的な音楽の大きな方向性を付けられれば」と書かれておりましたし、小川和隆先生からも現代ギター誌で「緊張と解決の弾き分けが無く平坦」との指摘がありました。
レッスンでは、曖昧な感覚で今村先生からの質問に答えると、全てに「どうして?」と追求を頂く厳しいレッスンでした。
私がテキトーに答えたことは全て先生に見抜かれ、晒されました。
「さっきと全く反対のことを言っているけれど、今回のレッスンは録画されているみたいだから、後で観てみて下さい。」と。
レッスン中は
「ここまで細かくやらないとダメなのか」
「仕事をしながらこのレベルはキツい」
と思いました。
しかし、私は受講した曲を9ヶ月位弾いている訳で、分析しようと思えばいくらでも出来たわけです。
今回のレッスンで音楽面においてもベストな学習が出来ていなかったなと思い知らされました。
今村先生は受講生に徹底的に質問をしますが、理不尽なことは一切聞いていなかったと思います。
楽典を読み、通奏低音(数字付き低音)を学んでおけば問題無く解答出来るような質問ばかりでした。
質問の答えが受講生の上達に必要であるからこそ質問している訳です。
楽典は、知識として分かった気になっているだけでは全く意味がありません。
自分が弾いている曲に当てはめることで、弾き方が分かります。
今回は不甲斐ない内容でしたが、自分が出来る最大限の準備をして、長期間習ってみたいと思いました。
ストラスブールに行くしかありません。
受講者に本当に必要なことを教えられる素晴らしい指導と思いましたので、自分ひとりで学習出来ることは後回しにし、翌日もマスタークラスの聴講に行くことを決めました。
他の方のレッスン
ギター奏者を対象としたレッスン(初日)
受講曲は下記の通りでした。
- トッカータ第3番/M.ガリレイ
- SW46序曲/S.L.ヴァイス
- ロジー伯のトンボー/S.L.ヴァイス
- BWV997 リュート組曲第2番 プレリュード/J.S.バッハ
- BWV997 リュート組曲第2番 フーガ/J.S.バッハ
- 魔笛の主題による変奏曲/F.ソル
- リチェルカーレ34番/フランチェスコ・ダ・ミラノ
魔笛の主題による変奏曲/F.ソル、BWV997フーガ/J.S.バッハを2名の方が受けていたのが印象的でした。
BWV997プレリュード/J.S.バッハは、過去に私も弾いたことがある曲で、跳躍がある際の音の切り方やアポジャトゥーラの弾き方、和声的な弾き分け方の指導が参考になりました。
ギターの運指では難しいアーティキュレーションもあったのですが、バロックリュートなら簡単に出来る訳ということは無いと思います。
BWV997フーガ/J.S.バッハは今村先生からの音楽的な要求が高く、技術面に縛られず「もっと音をレガートに」「「音を残して」という指摘が多かったです。
お二方ともコンクールで入賞するような凄腕のギタリストなのですが、めちゃくちゃしんどそうでした。
帰宅してすぐにBWV997フーガを通して弾いてみましたが、私のレベルでは完全にお手上げでした。
魔笛の主題による変奏曲/F.ソルは樋浦先生と高校生の女の子(コンクールで1位、2位のレベルの方)が受けており、これまた高度な指摘が多かったです。
どこまで自由に歌うのか、音の高さを変えて繰り返されるパッセージをどう弾き分けるのか、リピートの表現(エコー、2回目のみレガート、2回目を激しく、1回目を自由に弾き繰り返しを落ち着けて弾く)の付け方等、繊細かつ大胆なアドバイスでこちらも大変勉強になりました。
リチェルカーレ34番/フランチェスコ・ダ・ミラノでは、曲の調性や旋法が何かを問う場面がありました。
旋法を特定する方法は以下のステップです。
- 曲をフラットやシャープが無い状態に置き換えて考える
- ドミナントとしての留まりたい音(主音では無く)を探す
- 臨時記号が付いたり消えたりする音を探す
古楽奏者(主にリュート)の方を対象としたレッスン
(レッスン中の画像をお借りしております)
前日にギター奏者に比べて更に音楽に一歩踏み込んで演奏しているように感じました。
ギターよりも更にマニアックな世界で、充分に検討を重ねた演奏をする方が多いためと思われます。
音楽的な取り組み方は見習わねばと思いました。
左手の押さえは、充実した演奏内容を考えるとギター奏者に比べ不安定さがあったように思います。
受講曲は下記の通りでした。
- ソナタ No.49 変ロ長調よりアルマンド、プレスト/S.L.ヴァイス
- リチェルカーレ34番/フランチェスコ・ダ・ミラノ
- パッサカリア/ロベール・ド・ヴィゼー
- プレリュード/ロベール・ド・ヴィゼー
- Grief keep within/J.ダニエル
- シャコンヌ/ロベール・ド・ヴィゼー
- A Dream/J.ダウランド
プロ奏者の佐藤亜紀子先生や永田斉子先生は当然ながら曲に対する明確なイメージを持ってレッスンを受けており、大変勉強になりました。
アルマンド、プレスト/S.L.ヴァイスのレッスンは同一の様式であれば他の曲にも当てはまるアドバイスばかりで、連日聴講して本当に良かったと思います。
リチェルカーレ34番/フランチェスコ・ダ・ミラノは前日にギターで受講している方がおり、旋法の読み取り方を再度復習することが出来ました。
ここまで詳細なアゴーギクを学ぶことが出来るのも今村先生ならではと思います。
初中級者へのレッスンは以下のようなアドバイスがあり、こちらも非常に参考になりました。
- 曲を弾くにあたり、まずはフレーズを特定し、その単位でどう弾くべきかを磨く。
- フレーズの特定の為に、カデンツや導音を探す
バロックリュート、ルネサンスリュート、テオルボ、ビウエラの音色を聴き比べ出来た点でも、聴講しに来て大正解でした。
今回の記事は以上となります。
受講したS.L.ヴァイスの曲は、主和音でも属和音でもないコードが並んでいて、自分でも全く理解できておりませんでした。
厳しいレッスンでしたが、もしこれを受けていなかったら楽典から勉強し直そうと決意することもなかったと思います。
また来年、レッスンを受けるのがとても楽しみです。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。