そう悩む方は多いです。
かけた時間の割になかなか演奏が上手くならず、私も本番で悔しい思いをしました。
「なぜ時間をかけてもあまり上達しないのか」の理由は、練習に対する目的意識が欠如していることが原因です。
「目的を考えた練習」は4つのステップに分類されます。
自分が今「どのステップの練習をしているのか」意識することで、練習の目的が明確になり、大幅に効率が上がります。
今回の記事では最短で上達する「4つのステップ」を紹介します。
本番までの時間がない人であっても、短時間で曲が仕上がります。
- 譜読みと運指の決定
- 技術的なチェックポイントの確認・暗譜
- 曲の表現に必要なレベルへの技術向上
- 音楽的な表現の掘り下げ
「曲が弾ける」ようになるまでの4つのステップ
ステップ①「譜読みと運指の決定」
曲を弾くに当たり、まず始めに行うのが「譜読みと運指の決定」です。
まずは楽譜に指定されている運指で曲を最後まで弾いてみます。
「楽譜を読む」か、「技術的な練習をする」か、は明確に区別しましょう。
この区別ができていない例が「曲の冒頭は弾けるけれど、曲の途中からは譜読みが終わっていなくて弾けない」状態です。
「譜読みが終わっていないのに、無理やり弾こうとする」のはやめましょう。
「ダンスで足や手の動かし方がはっきり分かっていないのに、いきなり踊る」のと同じです。
演奏が止まってしまう部分は「演奏」ではなく「譜読み」の意識を持つべきです。
そもそも、譜読みの段階は「ゆっくり止まらず弾く」ことが重要です。曲の冒頭だけ速く弾いて弾けない部分でゆっくりになるのは避けたほうが良いでしょう。
弾きにくいところを遅くするのが癖になってしまうかもしれません。
楽譜に付けられた運指で弾き終わった後は、弾きにくい箇所や音楽的な要求に合わない箇所の運指を変更します。
私は運指をすぐに変えてしまうタイプです。
しかし、レッスンで先生から「そこは楽譜の運指のままの方が良い」と指摘をもらうこともありました。
タレガやセゴビア等のギターの達人が運指を付けている場合は、特に良く確認するようにしましょう。
セゴビアの運指は音色以外の要素が犠牲になっていることが多いですが、運指を変える場合でもセゴビアがその運指を付けた意味を理解するようにします。
ステップ②「技術的なチェックポイントの確認と暗譜」
ステップ①「譜読みと運指の決定」が終わったら、ステップ②「技術的なチェックポイントの確認・暗譜」に移ります。
ここで練習が必要なパートを絞ります。
自分の耳や身体の感覚を研ぎ澄ませて、「弾けない・苦手・やりにくい」を見つけます。
以下の感覚が手がかりになります。
- 音が出ない
- テンポが遅くなる・崩れる
- 左手・右手が力む
- 右手の運指に違和感がある
練習するにあたって、難しいフレーズはすぐに暗譜しましょう。
「日本語で1つ文章を覚える」のと同じで、楽譜も1~2小節ならすぐに覚えられます。
暗譜は機械的にするものでなく、以下のような要素を手がかりとして記憶していきます。
- メロディ
- 和声(和音の種類、構成音)
- 左手の形
曲によって異なりますが、「最小限のフレーズ単位を覚えたら、譜面を見ずに弾いてみる」のが良いでしょう。
「英単語を記憶する際に、覚えたと思ったら赤いシートで文字を隠して確認する」のと同じです。
ミニテストを行うことで、記憶に適度なストレスがかかり、情報が脳に定着します。
こういった意図的な記憶作業を行えば、「ラグリマ」「ヘンツェのノクターン」ぐらいなら1時間もかからずに覚えられます。
この方法で無理やり暗譜した場合、「曲のテンポよりも、脳から情報を取り出す方が遅い」こともあります。
まずはゆっくりの速度で弾き、技術を身に着けましょう。
ステップ③「曲の表現に必要なレベルへの技術向上」
ステップ②を終えた状態で「何となく通して曲が弾ける」ようになっています。
そこで、このステップ③では、「曲の表現に必要なレベルへ技術を向上」させます。
極論かもしれないですが、「既に弾ける部分=これ以上は上達しない部分」を練習する意味はありません。
最短で上達したいなら「苦手な部分」だけに絞って練習しましょう。
弾ける部分を目的なく繰り返し弾いてしまうのは、「上達のための練習」ではなくただ楽しくギターを弾いているだけです。
以下の「弾けない」を練習によって無くします。
- 和音が押さえられない
- 押さえ替えが出来ない
- ポジション移動でミスが多い
- 力が入ってしまう箇所がある
- スケールやアルペジオが弾けない
- 和音の右手のセットを間違う
「曲の上手く弾けない部分」がどうして弾けないのか、細かく分析してどの段階にミスに繋がる要素があるのかを考えます。
原因を分析して練習することで、大きな成果を上げることが出来ます。
分析して「弾けない原因」「弾けるコツ」が分かれば、ほとんど練習しなくても弾けるようになることがあります。
難しい左手の押さえ替えは、分析してポイントを掴むとすぐに弾けるようになります。
右手も無駄な動きを減らすことで弾けるようになることがあります。
(左手ほどではないですが)
本番までの期間が短く練習時間とれない場合は、「失敗の可能性が高い部分」を優先して練習しましょう。
「音楽表現で100点を目指すための上達」は後回しです。
本番までの時間がなく準備不足・実力不足なら、完璧な演奏はおそらく無理です。
仕方ないです。
「練習時間のコスパ」を考えて、効果の高い部分にしぼって改善をしましょう。
練習による演奏の変化によって「聴く人に与える印象がどう変わるのか」を考えると、時間をかけるべきポイントが分かります。
プラスアルファの要素よりも、大きな傷を直すべきです。
ステップ④「音楽の表現の掘り下げ」
ステップ③「曲の表現に必要なレベルへの技術向上」を行いながら、音楽の表現を磨きます。
技術の改善と同様に、練習して大きく変わる部分から手を付けましょう。
クラシック音楽は、本来は眠くなるものではありません。分かる人には分かる豊かな表情が隠されています。
これを伝えるのが演奏者の仕事です。
フレーズの前後で何かしらのコントラストが付くことが多いため、以下の要素を考えて改善します。
- リズムの変化
- 明るい・暗いなどの表情の変化
- フレーズの構成や長さの変化
- 和声の変化
- 全ての声部が繋がっているか(旋律としての機能を持っているか)
「表現の掘り下げ」においても、楽器を持たずに旋律や和声の分析をした方が練習のコスパが高いことがあります。
効率の良い練習は「楽しくない」が、上手くなれる
この記事で書いた練習方法は、はっきり言って「楽しくない」です。
しかし、確実に効果があります。
- 譜読みと運指の決定
- 技術的なチェックポイントの確認・暗譜
- 曲の表現に必要なレベルへの技術向上
- 音楽的な表現の掘り下げ
「自分の悪い・できないところ」に注意を向け、苦手だけに時間をかけて演奏を改善するため辛いです。
「自分が既にできる楽しい部分」は、練習の効率を考えると弾かない方が良いです。
現代のプロの音楽家は皆、限られた時間の中で効率的な練習を行っています。
「練習そのものが楽しい」よりも、「上手くなるのが楽しい」「人に良い演奏を聴いて欲しい」と思う方は辛い練習をしましょう。
以上で今回の記事を終わります。
上記のステップを最速で行うことが出来れば、本番前1周間前から曲を仕上げることも出来るかもしれません。
「曲を早く仕上げなければ」という気持ちに翻弄され、がむしゃらに練習すると、焦りで上達しにくくなります。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。