難曲の左手を短時間で仕上げる方法をまとめる。

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「左手が難しい曲を、短時間で仕上げるためのコツ」をこの記事にまとめます。

久しぶりに人前で演奏する機会があり、武満徹編曲の「ギターのための12の歌」から以下の3曲を準備していました。

  • オーバー・ザ・レインボー
  • イエスタデイ
  • 早春賦

1ヶ月くらい前から譜読みを始め、2週間前に焦って仕上げました。
(良くないのですが、毎回準備が遅い)

武満徹編曲作品は、数あるクラシックギター曲の中でも左手が最上級に難しく、難儀しました。
早春賦は、私の大学のサークルの同期が2重奏に分割して弾いていた思い出があります。
「今の自分ならソロでもいける」とイキって挑戦しましたが、全く簡単ではありません。

難曲を仕上げるにあたって、発見した気付きをこの記事に整理します。

この記事でわかること

記憶を整理する

難しい曲をがむしゃらに練習しているだけでは、短時間で曲を仕上げることはできません。
「指をどのように動かすのか、正確に理解せず弾いている」という例は、左手に関しては良くあります。

練習において、左手の動きを正しく整理・理解するようにします。
この内容は過去の記事にまとめております。

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左手だけで弾く(右手は弾かない)

左手の難所を練習するにおいて、非常に役立つのが左手だけで弾くことです。
これは過去の記事には書いておらず、新発見だと思いこんでいました。
しかし、現代ギターにも掲載されているメジャーな方法でした。

左手に情報を記憶させるにおいて、以下のように右手の動きが邪魔になることがあります。

  • 右手で弦がミュートされる
  • 左手で発生した雑音に気付かない
  • 左手の音が切れたことに気付かない
  • 右手の情報(感触)により、左手の情報に集中できない

左手だけで弾くことで、弦を押し下げる量や指のどの位置に弦が触れているか等、細かい情報を感じることが出来ます。
右手の存在しない、左手だけの澄み切った情報に浸りましょう。
この練習により、難所を短時間で習得可能です。

力を入れる指、入れない指を整理する

難しい部分だけが弾けるようになったとしても、曲が弾ける状態にはなりません。
難所が連続した際に疲れてミスする可能性があります。
ミスを減らすには指先の感覚が鋭敏であることが重要で、そのためには手を脱力した状態に保つべきです。

脱力をするために必要な練習は「力を入れる指、入れない指」を整理することです。

「力を入れる指」の整理に関しては、音が出ない部分に対し、押さえ方(指の形や押さえる位置)が正しいことを確認した上で少し力を強めます。
これは「音が出ない・出にくい」という症状が現れているため、対策は簡単です。
セーハで出にくい弦や、押弦の位置がフレット寄りにならない部分は、どうしても力が必要になります。

「力を入れない指」の整理については、「音が毎回出ている箇所」に対しなるべく指の力を抜いていきます。
「音が毎回出ている箇所」は語弊があるのですが、要は「どうしても力を入れるべき部分(セーハ等)以外」です。

これを行うことで、難所の部分に備えて指の体力を温存しておくことが可能です。
指が疲れておらず感覚が研ぎ澄まされていると、ミスは減ります。

音の減衰に応じて力を調整する

「左手で弦を押さえるのに必要な力」は、発音のタイミングが最大であり、その後はそれほど大きくありません。
一度音が出てしまえば、かなり弱い力で弦を押さえるだけで済みます。

「音が大きい=右手で弦をたわませる量が大きい」場合、より強い力で弦を押さえる必要があります。
音が大きい場合でも、発音した後は力を抜きます。

これを踏まえて発音のタイミングだけ大きな力を入れると、あまり疲れずに押弦できます。

よく言われる練習方法として「音がビリつくギリギリの力で弦を押さえる」というやり方があります。
この方法は有益ですが、音量が変わると「弦を押さえるのに必要な力」も変わります。
あまり小さい音量で弾いてしまうと、練習と本番で条件が変わってしまいます。

精神と時の部屋ではないけれども

上に書いた練習のコツは、上達する過程で自然にやっていることです。

無意識にやっていることをあえて意識して行うことで、練習で得られる情報の密度が5~10倍くらい変わってきます。
上達のスピードも3倍くらい違います。

「あまり考えたくないから、私は3倍練習します」という人もいるかもしれません。
人は、上達しなくなると練習しなくなります。
結果が目に見えない努力は、モチベーションが消えていくということです。

練習は、短い時間で効果を感じることが重要です。

追記:音も良くなりそう

脱力すると、音も豊かになるような気がします。
「倍音が増える」ような印象です。(科学的でない表現ですが)
振動を押さえる力が減ること、フレットでの弦の変形が小さくなることが理由と思われます。

「ある程度以上は、脱力しても意味がない」とも思いましたが、音が変わるのであれば脱力を追求してみるのも良さそうです。

「しっかり強く押さえる(歯を食いしばって!)」ような教え方は、左手の面では全くメリットがなさそうです。

「守破離」を目指す

スポーツ・武道・ビジネスで「守破離」という言葉が使われます。
まず教えを「守」り、自分の方法を確立して型を「破」り、最後にはそのものから「離」れていく、ことを指します。

ギターの左手も、守破離に近いところがあると感じています。

ギター初心者のうちは手が開かないため、フォームを重視して左手を押さえます。
フォーム通りに押さえると見た目は美しいのですが、綺麗な状態を維持するのに力を使います。
上達した後の段階では、フォームに囚われずに脱力した手で演奏すべきです。

脱力した手は「赤ちゃんの手」のようなものだと思っています。
力が入っておらず、広がっていないので見た目も小さく頼りなく見えるのですが、実際は俊敏かつ正確に動けます。
演奏の負荷を減らすために、この状態の時間を長くしたいです。
ある程度手が大きい人・柔軟性がある人の方が、「赤ちゃんの手」状態を長く保てます。

指を広げる場面など、難しい押さえが登場した場合は、「赤ちゃんの手」状態を解除して基本フォームを守った押さえにより対応します。

本番は「冷静さ8割、本能2割」

興奮してアドレナリンが出た状態で左手に力が入っても、ほとんど良いことはありません。
押さえ間違い、弾き間違いに対処できるよう、本番の演奏は冷静さを保つべきだと考えています。

ギターにかぶりついて、本能で一心不乱に演奏する様子に憧れるかもしれません。
「あの奏者は憑依型だから」という評論を目にすることがありますが、そういった批評に対しては「違うのでは?」と思うことが多いです。
陶酔した状態では、身体感覚が疎かになる面があるため、むしろ乱暴な演奏になりがちです。

「とっさのトラブルに自然に身体が動く」ぐらいの少しの本能・野性味を持ちつつ、指先の感覚に神経を張り巡らせて冷静に演奏するのが良いと思っています。
(天才でない限り)

今回の記事は以上となります。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

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