楽器演奏において、本番で練習と同じように弾けないと感じる方は多いと思います。
震えたり、力んだり、と様々な症状が発生します。
しかし、よくよく身体の感覚に注意を払ってみると、分かりやすい症状が起きる前に2つの感覚が鈍っているように思いました。
緊張によって低下する感覚を考えてみます。
触覚が鈍る
緊張すると、触覚が鈍ります。
触覚の中では、右手・左手の指先の感覚が最も重要と思います。
その他、ギターと身体の位置関係や筋肉の状態をモニタリングする感覚も含みます。
緊張で触覚が鈍っているのを誤魔化して、「緊張で弾けない」や「今日は調子が悪い」等の曖昧な表現により本来の原因に蓋をしてしまうことが多いように思います。
「触覚が鈍っている」という原因を解消することで、より良い演奏が出来るかもしれません。
普段の練習から
毎日の練習の際にも意識を向けてみると、指先の感覚が良く機能している日とそうでない日があります。
寒い日は指先の感覚が鈍くなりますが、目立った悪材料が無い場合でも感度が低いときがあります。
こういった日に「指先の感覚を蘇らせる」ことが出来れば、緊張している場面でも同じアプローチが使えるかもしれません。
「指先の感覚」派と「動きを再現」派
演奏する際に、奏者によって指先の感覚を頼りに弾くタイプと練習した動きを忠実に再現するタイプがあるように思います。
これらは綺麗に2つに分かれる訳ではなく、どちらが良い・悪いもありません。
速弾きの場面であれば、指先の感覚を脳が処理していては間に合いません。
練習した動きを再現する比率が増すでしょう。
どちらかというと「動きを再現」するタイプの方が、指先の感覚が鈍ることの悪影響を受けにくいかもしれません。
(私は練習の度に、弦の硬さの違いや楽器の鳴りの違いに振り回されています)
聴覚が鈍る
「触覚が鈍る」ことよりも更に自覚しにくいのが、「聴覚が鈍る」ことです。
聴覚と触覚が鈍ることがお互いに悪影響を及ぼし合って、演奏がドツボにハマっていくように感じます。
レッスン等で緊張した状態でいると、普段どおりに弾いているつもりでも見落としが多々あります。
私の場合は以下の状況になりやすいです。
- 声部が聴こえなくなる(内声が多い)
- 無意識に行ったアルペジオ(和音をばらす)に気が付かない
以前、発表会において2重奏した後に独奏を行ったら緊張しなかったという体験がありました。
聴覚が鈍ることを避けることで、緊張の悪影響を緩和出来るかもしれません。
良く感じて、良く聴くしかない
触覚と聴覚の機能低下に対して出来ることは、「普段から感覚を研ぎすます」ことと「本番では特に注意を向ける」位しかないかもしれません。
出来ないことがあった場合、理屈で改善することは重要です。
このブログでもそれを大事にしています。
しかし、「そもそもやろうとしていないこと」や「本気で出来ると思ってやっていない」ことに関しては、一度全力でやってみることが重要です。
無意識な「難しい部分だから、自分ではどうにもならない」という心のブレーキがあるかもしれません。
何かのメディアで「先生に習ったが、全然曲を弾けるようにしてくれなかった!」というクレームを見たことがあります。
楽器演奏の上達は、「病気に対して薬を出して治す」ことと違います。
現実には、身体の病気であっても本人の生活習慣や心持ちによるところが大きいです。
ギターの先生や医者が責任を取ってくれる訳ではありません。
言葉では伝えにくい意識の向け方に、上達の秘訣があるように思います。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。