クロサワ楽器様にて、カナダ出身グラナダ在住の製作家「ジョン・レイ」のギター(サントス・エルナンデスモデル)を試奏いたしました。
最近弾いた楽器の中では「一番良いかも」と思いました。
私は同じふくよか系の音の楽器を既に持っていたので、購入はしていません。
が、割と本気で考えてしまいました。
新品で欲しいと思わせる音の良さです。
硬めの音の楽器をお使いの方なら、
こういったたっぷりした音の楽器は非常に魅力的でしょう。
以下、製作家「John・Ray」の解説(引用)です。
カナダ出身のジョン・レイは1989年にスペインに渡り、現地でアントニオ・マリン・モンテロやロルフ・アイヒンガーにギター製作の指導を受け、そのままグラナダの地で工房を開きました。
彼の工房での製作過程の写真集の刊行、さらにグラナダのギター文化を研究し主要製作家を紹介した書籍の出版などの活動も行っています。2007年にはコルドバで開催されたアントニオ・デ・トーレスの展示会にて、1892年(SE153)の復元モデルを発表し、高い評価を得られました。クロサワ楽器店より
お店による公式の楽器紹介動画がありましたので、貼っておきます。
(試奏させて頂き、誠に有難うございました)
本記事で試奏の感想を書きます。
サントス・モデルとは
「ジョン・レイ」の楽器はトーレスモデルを良く見かけるのですが、
サントスモデルは初めてお目にかかりました。
サントス・モデルの特徴は、
「表情豊かでたっぷりとした高音と重厚で太い低音」ではないでしょうか。
特に⑥弦の鳴り方(重心が低く太い)に特徴がある場合が多い気がします。
あまり良くないコピーですと、この太さや重厚さが楽器としての鈍さに繋がってしまう
ことがあります。
また、オリジナルの「サントス・エルナンデス」の音はコピーモデル程
極端に太い音とは思いません。
音が枯れている分、しまっていてすっきりしていながらもより重厚に感じます。
この聴き疲れしない気品はオリジナルのサントスならではではないかと思います。
100年近い月日によって音が枯れていることも影響しているでしょう。
外観について
ヘッド
オリジナルのサントスを模したヘッドです。
トーレスモデルの研究にも熱心であり、コピー元のソースを大事にしていることが伺えます。
糸巻きはロジャースです。
サントスモデルの源流であり頂点であるというイメージに良く似合っているように思います。
ボディ、表面板
グラナダ在住で制作活動を行っているためか、
どことなく爽やかさを感じるような気がします。
(オリジナルのサントスのようにまだ焼けていないのもあるでしょう)
クラシカルで品のあるロゼッタです。
主張し過ぎないデザインでスパニッシュな伝統とこだわりが現れており、
所有者を満足させてくれるでしょう。
裏板
撮り忘れました。
公式の画像を参照下さい。
師匠の「アントニオ・マリン・モンテロ」とはまた違った模様に見えます。
ネック、ヒール周り
ネックの形による弾きやすさも文句なしの楽器でした。
違和感は何も感じません。
音について
サントスモデルの特徴「表情豊かでたっぷりとした高音と重厚で太い低音」が高いセンスで再現されています。
スペイン系の楽器ならではの表現の幅の広さがあります。
それだけではなく、ステージ演奏での高い戦闘能力を持っていることが
「ジョン・レイ」のサントスモデルの特徴ではないでしょうか。
音が僅かに「伸びてくれる」ことにより、奏者は格闘せずに表現力を獲得出来、
聴き手も音色に生命力を感じます。
この「伸び」の理由は、「アントニオ・マリン・モンテロ」の弟子であることが
要因だと思います。
「アントニオ・マリン・モンテロ」の楽器は音がよく伸びて広いステージで抜群のパフォーマンスを発揮するのですが、
全ての音が自然に伸びてしまうので、やや表現の幅が狭くなるかもと思うことがあります。
(伸び過ぎないマリンもありますし、私の偏見です)
「ジョン・レイ」の場合はこの「伸び」の要素が絶妙なのです。
数字化出来るものではありませんが、「マリン」を10割とすれば
「ジョン・レイ」は1~2割ではないでしょうか。
この1~2割の「伸び」によりサントスモデルの表現力をスポイルすることなく
楽器に戦闘力がもたらされているわけです。
「スペインの伝統的な楽器が良いのだけれど、
ハイテクな楽器と渡り合えるパワーが欲しい」
という方には、誇張でなく最高の楽器だと思います。
(私もそうです)
ナウなヤングにはこういうギターを使って欲しいです。
硬めの音のすっきり系の楽器をお使いの方には、2本目としてベストでしょう。
「伝統的な楽器でないと駄目だ」というこだわり派も太鼓判を押してくれること
間違いなしです。
今回の記事は以上となります。
最後までご覧頂き、誠に有難うございました。