フレットの打ち替え(幅・高さ・硬さ)に関して、考察する。

PR〈景品表示法に基づく表記〉

私は所有するギターのフレットの打ち替えをしたことがありません。
フレットの打ち替えを行うことで、音や弾きやすさにどういった変化があるのかは未確認です。

私が持っている知識・経験により、フレットの打ち替えに関する条件と変化を考察します。
(やったことがないのに、無責任ですが)
あくまで考察なので、間違いも多々あると思います。
私の考えを叩き台にして、より深い理解が進めば良いと思っています。

この記事でわかること

フレットの幅

フレットの幅による変化は、「サドルの面接点 or 点接点」の違いに近いのではないかと考察します。
つまり、フレットの幅により、弦と接する面積が増減し、それにより音が変わると思われます。
なお、19世紀ギターにはかなり細いフレットが使われています。

このことから、細いフレットを使う場合は、以下の変化があると予想します。

  • 音が細く、明瞭になる
  • 音が明るくなる(この点は自信無し)
  • 音の立ち上がりが良くなる

太いフレットを使う場合は、以下の変化があると予想します。

  • 音が太くなる
  • 音に艶が出る
  • 音が鈍くなる

この変化はあくまで一般論としての予想です。

どのように選択すべきか

ピアノやチェロのような音の太さをイメージして作られた楽器は、太いフレットが合いそうです。
粒立ちの良いスパニッシュな楽器や細くてしなやかな楽器にあまり太いフレットを使うと、個性が薄れるかもしれません。
楽器ごとに、変化がどのような形で現れてくるかが異なります。
現状のものを基準にどちらの方向性に変化させたいかで選択すれば良いと思います。

フレットの高さ

フレットの高さは、弾きやすさと弦高に影響してくるように思います。

フレットが高ければ弦高を高く、フレットが低ければ弦高を低くセッティング出来ます。

ギターは、弦高により音が劇的に変化します。
最近、ナットの下に紙を挟み、ナットの高さを上げることを行っていました。
0.21mmの紙と、0.24mmの紙で全く音が違いました。
紙自体はどちらも同じような感触(名刺程度の厚み)で、クッション性にそれ程違いは感じません。
そのため、0.03mmの弦高の違いにより、大きく音は変わります。

弦高で音が大きく変わる理由は、ナット・サドルに対する弦の角度が考えられます。
「糸巻きからナット」と「ブリッジからサドル」の弦の角度の変化で音は大きく変化します。

弾きやすさの変化

上記に書いた「ナット・サドルに対する弦の角度」により、右手・左手に感じるテンションの感覚が大きく変わります。
ナット・サドル寄りになるとテンションの強さを強く感じるため、特にフレットが高い方が押さえやすく感じるでしょう。

音色と弾きやすさのバランスを取ることが重要です。

弦と指板はほぼ当たらない

「フレットの高さ」と「弾きやすさ」を考えるとき、弦を押さえた際の指板と弦の距離を考慮しているケースがあります。
弦は、極端に力を加えない限りは演奏中に指板に当たることはありません。
演奏中に弦が指板に当たっていたら、相当な力が加わっていることになります。
(古いギターでたまに指板が削れているのを見ますが)

弦と指板が当たるという説明をしている記事は、信頼性が怪しそうです。

スキャロップ指板は無意味?

(画像は島村楽器のHPより引用)

弦は指板に当たることは無いので、私は弾きやすさの面ではスキャロップ指板は無意味だと考えています。
音は確実に変化があるでしょう。

下記のリンクの記事で、エレキギターの指板をスキャロップした実験を行っています。
スキャロップ加工でギターの音と演奏性はどう変わるのか?|連載コラム|デジマート地下実験室【デジマート・マガジン】

こちらの記事は、最後のまとめ部分は執筆者のバイアスが強く、主観が入ってしまっているように思います。
プロの奏者が指板をスキャロップしたギターを弾いた感想については、シンプルで率直な感想になっており、個人的にも同意出来ます。
以下の通り抜粋します。

──ケリーさん、いかがですか?

「スキャロップというと速弾きに効果があるというイメージを持っている人もいますが、スキャロップの最大のメリットは、指の腹が指板に触れないことによってビブラートやチョーキングがスムーズに行えるという点にあると思います」

 

──サウンドについては?

「明るく、立ち上がりの速い音になる傾向があると思います。若干、ローが削れるのでそれをどう捉えるかですが、軽いタッチで粒立ちの良い音が出せるので、速弾きに適した音になると言うことはできると思います」

 

──サステインはいかがですか?

「指の腹が指板に付かないで弦にだけ触れていますから、指先を通してサステインを体感することができます。軽いタッチでのチョーキング&ビブラートもしやすいので、スキャロップにしたからサステインが伸びるのではなく、スキャロップにすることでサステインをコントロールしやすくなります」

「ローが削れる」と回答している通り、音の重量感を求めない19世紀ギター等であればスキャロップ指板は効果を発揮する可能性があります。
重い指板(黒檀やメイプル)を削れるので、楽器の重量も軽くすることが出来ます。

フレタ等のネックが太い名器では指板のスキャロップはやらない方が良いでしょう。
(やらないでしょうが)

フレットの材質

フレットの材質には柔らかいニッケル硬いステンレスがあります。
(硬さは相対的な話です)
フレットの材質に関してもエレキギター界隈の方が遥かに深く理解している印象です。
詳細は下記のサイトを御覧下さい。
リペアマン遠藤の仙台リペアブログ~その53~ステンレスフレット交換の巻! – ギターリペアブログ – 島村楽器のリペア

私が所有している楽器のラインナップは年代の古い音がまろやかな楽器が多いです。
そのため、ステンレスのフレットを選んで音が明るすぎ・硬すぎになるのは心配です。
アントニオ・マリンだけは中間位の硬さのフレットを試せるかもしれません。

ステンレスフレットの硬さによるすり減りにくさは魅力があります。
「チョーキングしやすい」と言われていますが、クラシックギターの場合はむしろ弦がずれない方が有り難いでしょう。
ステンレスフレット推し方の場合は、「ステンレスフレットが合う楽器を使っている」か「明るめの音が好み」のケースが多いように感じます。
自分のギターの個性と好みを考えて材質を選ぶのが良いと思います。

ステンレスフレットは高音の成分が増えるということで、もしかしたら19世紀ギターに合うかもしれません。
ステンレスが実用化されたのは1910年代です。
オリジナルの尊重とはかけ離れたアプローチですが、一度確認してみたいです。
オリジナルの19世紀ギターはかなり柔らかいフレットが付いているので、全く合わないかもしれません。

フレットの打ち替えに関するまとめ

当てずっぽうでフレットの打ち替えに関する考察を書きました。
ギターの他の部分での経験を元に書いているため、7割位は当たっていると思います。

「弦はしっかり押さえる」という時代ならまだしも、「音が出る最小限の力で押さえる」ようになってからは、フレットの減りを中々感じません。
(楽器も複数持ってますし・・・)
次にフレットの打ち替えをするのは、15年以上先になると思います。
本当は色々試してみたいので、フレットが減らなすぎるのは寂しいです。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。

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