楽器

「買わないなら試奏しないで下さい」について。

楽器マニア達の中で良く話題になるトピックがあります。
「買わないなら試奏してはいけない」という話です。

この点について考えてみます。
あくまで答えのない話ですので、個人の意見として読んで下さい。

私個人の経験談

私も一度だけ銀座の大手楽器メーカーのお店で「購入しないのであれば試奏しないで下さい」と言われたことがあります。
在庫が回転しにくい店舗のようで、楽器のラインナップに何年も変更がないため、それ以降は伺っておりません。

ギター専門店で「買わないなら弾かないでくれ」と言われたことはほぼありません。
「ほぼ」というのは、オリジナル塗装のエルナンデス・イ・アグアド(500万円?)に関しては購入者検討者限定の試奏となっていたことがありました。
私自身がアグアドに合うタッチを持っておらず、さほど好みでも無く、店主もそれを分かっていて試奏を断ったのだと思います。

楽器店は試奏を断ることが出来る

当然のことなのですが、楽器の所有権は楽器店にあります。
委託品の楽器も楽器店が管理を請け負っています。
ですので、お客さんが試奏を希望したとしても、申し出を断ることが出来ます。

楽器の取り扱いが悪い方には特に試奏して欲しくないと思われます。

買う可能性の無いお客様の扱いは?


楽器店としては、全く買う可能性の無いお客様を相手にする必要は無いと思います。
絶対に楽器を買わない人お金がなさ過ぎる人がそれに該当します。
(誰でも車を買える日本なので、そこまでお金がない人は中々いないかもしれません)

しかし、短期的には成約しないお客様であったとしても、将来の取引が見込めるなら試奏してもらった方が良いと思います。
楽器購入の意欲を育てるのも、購入までに必要な段階と思います。
(試奏したお店で購入するとは限りませんが・・・)

接客時間で売上が確保出来る訳ではない

高額な楽器販売は、時給労働ではありません。

商品を売り込むという点から考えると、営業マンと同じです。
「何件も営業をしても買ってもらえない」ことをお客様のせいにするのは、あまり良い営業マンとは思えません。
(お客様を選べないのが、店舗の辛いところですが)

楽器を販売する側が「この時間を接客に使ったのだから、買ってもらわないと困る」と考えるのは間違っています。
バブル期にお札を振ってタクシーを呼ぶような、売り手が有利な状況ではないからです。

気に入らなかったら買わなくて良い

「買わないなら試奏してはいけない」というのは、「弾く→買う」に移行する可能性が高確率であることに基づいています。

しかし、真剣に購入を検討しているとしても「気に入らなかったら買わない」ということを覚えておきましょう。
複数の店を回っても決められないなら、時間を空けて別の機会に購入しましょう。
(試奏した中に当たりがあったのかどうかは、詳しい人でないと分かりません)
何本も高額なギターを弾いたとして同じ100万円なら車を買ったほうが良い」と思うのも自由です。
「あんなに接客してもらったのだから」と負い目を感じる必要はありません。

正直なところ、程々の奏者であれば並の楽器を押し付けられてもそのまま使い続けるでしょう。
しかし、楽器にこだわりがある人は違います。
押し売りされた楽器は必ず手放しますし、楽器店への不信感も残ります。
「心から気に入らないなら買わない」、ただそれだけです。

買う側にとっても、売る側にとっても高額

高額なギターは買う側にとって大金です。
もしかすると1年間の稼ぎに匹敵するかもしれません。
一般的な会社員のフリーキャッシュフローに対して大きな金額であることは間違いないでしょう。

楽器店側からしても、高額な楽器が1~2本売れれば、小さな店なら月の売上が確保出来てしまいます。

そういったスケールで考えると、接客された全員が無理して買うべきものではないことが分かるはずです。
(負い目を感じたり、気を使ったりは不要)

ギター狂は買うと決めて買う訳ではない

私を含めた「ギター狂、ギターマニア」の人達は、購入すると決めて試奏しているケースは少ないと思われます。
(300万円以上の高額な楽器を指名して選ぶ場合は別です)

出会った楽器の中で、良いものがあれば購入するというスタンスが多いでしょう。
「買わないつもりで弾くが、良いものがあったら買ってしまう」のがギター狂の性質です。

そういった「ギター狂、ギターマニア」の方にとっては「買わないなら試奏しないでくれ」と言われると大変困ってしまう訳です。
異性に「結婚しないなら話しかけないでくれ」と言われているのと同じです。
話をしないと、婚約に至るかどうかも分かりません。

ギター狂になるような人たちは欲望のネジが緩い人が多いです。
(私を含めて)
試奏させておけば、勝手に本人の中で熱意が高まり、どこかで楽器を買います。
ギター狂の購買行動を理解している楽器店の方が、売上は大きいでしょう。

人対人の信頼関係が大事

私が楽器店の立場だったとしたら「長期的に良い関係が築けるかどうか」を緩めに判定して高額楽器の試奏の可否を判断すると思います。
「良い(太い)お客さんになってくれるかどうか」
「良い楽器をこの人に預けたいと思えるのか」
「自分が好きなギターの話が出来るのか」
ある一面では企業が将来を予想して社員を採用するのに似ているかもしれません。

上に挙げた要素を満たしている方であれば、楽器店にとっては良いお客様でしょうし、試奏も迷惑ではないでしょう。
お客さん側として求められているのは楽器そのものやお店への気遣い・誠意が重要だと思います。
試奏時の注意点もまとめておりますので、合わせて御覧ください。
楽器店での高級クラシックギターの試奏マナーをまとめる。|クラシックギターの世界

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。