楽器

ハウザーモデル、ハウザーコピーのレビュー、感想をまとめる。

私はハウザーモデルのギターが好きで、
ハウザーモデル、ハウザーコピーと名の付く楽器を
手当り次第弾いてきました。

楽器と奏者には相性が存在します。
どんなに上手いプレイヤーであったとしても、
相性が合わない楽器を正しく評価するのは不可能です。

私のタッチはハウザーモデルと相性抜群なので、
この種類のギターに関しては正しい評価が出来ると思います。

ハウザーコピーと言えども、
アンドレアス・セゴビアが愛用したハウザー1世のコピーなのか、
ハウザー2世のコピーなのか、
幅広く定義がありますが、この記事では細かい部分は問いません。
また、ハウザー2世、3世については比較対象から除外します。

持っていた楽器

エドムント・ブレヒンガー

エドムント・ブレヒンガーは今回比較する楽器の中で
最もハウザー1世に近い楽器です。
耳の肥えた信頼できる楽器店の店長さんが、
「ラベルを張り替えたらハウザー1世だね」と仰っていました。

ハウザー1世程ではないですが、同じベクトルの気品があり、
1弦の筋ばった高音と充実した内声、金属的な低音は
イメージされるハウザーそのものです。
ペペ・ロメロが現存する最高の製作家と言うのも納得できます。

私がこの楽器を持っていた頃は
まだナットやサドルの調整に精通しておりませんでしたので、
思い返せばもう少し調整の余地があったかなと感じます。
演奏の後に「楽器は何をお使いですか」と
聴かれる頻度が非常に高かったです。

フリッツ・オベール

エドムント・ブレヒンガーと同じ工房で
フリッツ・オベールはギターを作っていた製作家です。
2020年9月に逝去されました。

音の根底にあるハウザー的な要素や骨格は
ブレヒンガーと同じですが、
フリッツ・オベールはトーレスモデルの要素を持っていますので、
ドイツ的・ハウザー的な芯とトーレス的な色や膨らみを持っています。
6弦は特にトーレス的に膨らみます。

オベールの音が持つふくよかさは「音の芯が纏うもの」ではなく、
「膨らみそのものが音の芯」です。
透明感がありながらも、少し色があります。
良く「色気」とか「スペイン的」と言われていますが、
ミントのようなほんのりした甘さと思います。

適度に膨らみがあることによって音楽が作りやすく、
遠達性も抜群なので、最高クラスの機能性を持っています。

ゲルハルト・オルディゲス

ゲルハルト・オルディゲスは上記2人のドイツ人製作家とは
大きく印象が異なります。

弦高の高低や裏・横板の材料でもイメージが違うのですが、
全てに共通しているのは
「しなやかでコントロールしやすい」という印象です。

ドイツ的な硬さが少ないため、
リニアに音量を調整しやすく、
抜けてしなやかに伸びる音です。
(ハウザーモデルは)
6弦は膨らむタイプですが、トーレス的だからではなく、
ウルフトーンの低さによって6弦の鳴り方の属性が決まっています。

他者と競争せずに純粋に音楽の美しさを求めるのであれば、
最高の選択肢の1つかと思います。
(音量も充分ありますが)

ブライアン・コーエン

ブライアン・コーエンも横・裏板の種類によって
印象が大きく変わります。
共通しているのは、芯の太さと肉感のある音です。
この肉感はドイツ系ハウザーモデルとは違う印象です。

ハカランダの個体の印象は、肉感があるのに音は澄み渡っていて、
右手や左手で表現したごく小さなニュアンスまで届きます。
良く通る音ですが、なるべく雑音が無い環境で映えると思います。
ローズウッドに関しては、
美しさを保ったままバランスが良く音に生命力があり、
純粋に楽器に対して求められる機能(音量や音の伸び)に優れています。
タッチのしっかりした方でも飽和しないため、
コンクール等で使用するにはベストの楽器と思います。

試奏した楽器

マヌエル・ベラスケス

密度のある、乾いた、琥珀色、シルキーな音です。
強靭な芯と弾性を感じます。
高音のみを単独で切り取ったら
ハカランダのブライアン・コーエンの方が艶はあるかもしれません。

現代でも通用する機能性と年月を経過した楽器故の強さを持った
憧れの楽器です。
現在私はベラスケスの工房品(本人作でない)を使っていますので、
いつかは本物を、と思っています。

サイモン・アンブリッジ

乱暴に言いますと、
「ハウザー+ポール・フィッシャー」です。
ポール・フィッシャーにも色々な音があるので、
あまりに乱暴な表現なのですが、
イギリス的な無骨・骨太な要素を感じます。
ドイツ系のように抜けるというよりは、
ギターの箱で鳴った音が骨格のはっきりとした形で伝わります。

他のハウザーモデルに比べてクリアで太い音が出しやすく、
ステージ上でも存在感があるかと思います。
タッチが強く、荒い方でもまとまってくれるでしょう。
機能性溢れる楽器ですが、色の変化には少し乏しいと思いました。

ゲイリー・サウスウェル

エドムント・ブレヒンガーとはまた違ったベクトルで
もし新作でハウザーが存在したらこういった音なのでは
と思われてくれる楽器です。

ハウザー的な気品のある荒々しさがあり、
同じイギリスでもアンブリッジの骨太さとはかけ離れています。
高音の芯のある成分は同じイギリスのブライアン・コーエンと
似ているかもしれません。
横・裏板はローズウッドでしたが、
目隠ししていたらハカランダと間違えたと思います。
音色の魅力に溢れた、飽きのこないギターでした。

デヴィッド・ホワイトマン

こちらもイギリスの楽器ですが、
サイモン・アンブリッジやブライアン・コーエンと比べると
やや柔らかさを感じるタイプの楽器です。

強烈な個性は無いのですが、その分厚化粧とは対極で
音楽の表情を自然に作りやすい楽器でした。
他の舶来品の楽器と比べて安価な値付けがされているのに対して、
所有感のあるクオリティになっています。

ウラジミール ドゥルズィーニン

ハウザーモデルとしての骨格やパワーを充分に兼ね備えた楽器で
とても近年に作られた楽器とは思えないような
貫禄と簡単にはヘタらないタフさを感じました。

音の骨格はハウザー的ですが、
音色が見せる表情は今までに見たことが無いものでして
ロシア的なドライな音色を感じました。
(明るいとか、鋭いとか、そういったものとは違います)

エンリコ・ボッテーリ

音の骨格はハウザーモデルだと思うのですが、
音色は完全にイタリア的ですので、
ハウザーらしいハウザーモデルではありません。

他のイタリア産のギターのように艶があるというよりは、
ハウザーのハスキーさにイタリア的な伸びが乗っています。
低音も伸びに特化している分、音質は軽めです。
(軽いのが悪いという話ではありません。
ハウザーと比較すると、一般的なスパニッシュ・ギターの
低音は全て軽いです。)

気品、音量、音のバランス、伸び等素晴らしく、
最高の機能を持っています。
この楽器を使った素晴らしい演奏をいくつも聴いていますが、
伸びを発生させることが出来るタッチかどうかで相性が決まります。
相性が合うなら、高額な古い銘器よりも
この楽器を使ったほうが良いでしょう。
(私は芯を鳴らすタイプ、あまり倍音を作れないタッチなので、
弾きこなせませんでした。)

尾野薫

肉感のあるふくよかな音が特徴のハウザーモデルです。
優しく、気品のある音で伸びが良いです。
ステージで良く通る音だと思ったら尾野さんの楽器だった、
ということが良く有りました。
他の楽器と比較すると、自分で持ったことのある
ローズウッドのブライアン・コーエンに近いです。
音の伸びや明るく木質的な音色を持ちながらも
機能性抜群ですので、間違いの無い一本だと思います。

西野春平

私が弾いたのは30万円前後のグレードだったと思うのですが、
しっかりとハウザーモデルの音がすることに驚きました。
30万円クラスのギターを新作で買う方は、個性に魅了される場合が多いと思いますが、
松井、桜井、黒澤、川田ギターあたりの売れ筋に並ぶ良さを感じます。
(安価なグレードに個性を持たせる難しさを理解しております)
高額なギターを始めて買う方は、
「気品」という物差しがまだ無いかもしれませんが、
是非手にとって欲しい楽器です。

山野輝慈

音の骨格はしなやかで、無理やり近いものを探せば
ゲルハルト・オルディゲスのハウザーモデルに近いです。
山野さんの楽器は究極にしなやかで、発音の際にストレスを感じません。

音色はしゃぼん玉が虹色をまとって飛んでいるような音です。
他に同じ音を聴いたことがありません。
強いて言えば、ジャン・ピエール・マゼのような音を煮詰めたような感じです。
濃密なのに爽やかでクドくない、ロマニリョスやブーシェ、ルビオと違う濃さです。
音量が抜群にあるわけではないですが、天上の楽器です。

川田一高

私は川田さんの楽器を一時期使っていたのですが、
ハウザーモデルの気品や骨格と川田さんの粒立ちの良い明るい音が
良いバランスで両立しています。
大学のサークルで同期がこの楽器を使っておりましたが、
気品のある音で万能な楽器でした。
音の分離が良く、どの時代の音楽にも合います。
出来れば、定番で作り続けて欲しいなと思います。
私を含め、川田さんの個性でハウザーモデルのギターを求める方は多い気がします。

廣瀬達彦

オリジナルのハウザー(2世?)を良くコピーしている楽器です。
「余計な音が鳴らない」「しっかり弾かないと鳴らない」「芯がある」は
鳴りすぎの楽器が多い中で、こういった楽器の存在は嬉しいです。
ヨーロッパ的な響きや暗さが加われば、完全にハウザーギターです。
目覚めるまでに時間がかかる楽器ですが、
タッチに自信がある方は是非弾いて欲しいです。

今回の記事は以上となります。

ハウザーモデルをベースとして
コピーした製作家本人の個性やお国柄が楽器に表現されており、
私は随分楽器に勉強させてもらいました。
人生をやり直してギターを買うとしたら、この中から選ぶと思います。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。