演奏技術

3つのギターのフォームを考える。(足台と支持具)

2019年東京国際ギターコンクールはJi Hyung Park氏の演奏が素晴らしく、
Xavier Jara氏の同コンクールでの演奏に勝るとも劣らない衝撃を受けました。

彼らのフォームをふと思い返してみると、
コンクールのレベルが上がるとギター支持具の使用率が下がり、
私が「カルレバーロ奏法」と思って使っていたフォームとも違う、
セゴビアやブリームに近い姿勢になっているように思います。

コンクールの様子を見て「自分と違うな」とはすぐに気が付きましたが、
何ヶ月もほったらかしにしていましたので、
改めてクラシックギター演奏における3つのスタイルのフォームを考えます。

足台を使った2つのフォームの違い

ギター支持具を使ったフォームは「椅子に座った状態」
イメージしてもらえば分かるかと思います。

足台を使った2つのフォームの違いについて、
カルレバーロ奏法のフォームを考えることで
ブリームやセゴビアの伝統的なフォームを合わせて学びましょう。

注意!
私は、アベル・カルレバーロの著書「ギター演奏法の原理」を読み、
高田元太郎先生にレッスンを受けたことがありますが、
厳密にカルレバーロ奏法の全てをマスターしているつもりはありません。
「それはカルレバーロ奏法ではありません!もっと完成された理論です!」
という部分があるかもしれませんが、ご了承ください。
あくまで「私が思う」カルレバーロ奏法です。

カルレバーロ奏法のフォーム

カルレバーロ奏法のフォームについて、下記のホームページが
非常に分かりやすいです。
ロジカルで網羅性があり、無料で読めるのが信じられないくらいです。
カルレバーロ/ベルッチのクラシックギター・テクニック

カルレバーロ/ベルッチのクラシックギター・テクニックより引用

伝統的なフォーム(WRONGの画像、セゴビアやブリーム)と
カルレバーロ奏法のフォーム(RIGHTの画像)の違いは、
乱暴にまとめると下記の2点です。

  1. 右足を引くことにより、上半身の捻りが発生しない
  2. 左足とギターの接点について、ギターのカーブを完全に足に密着させず、
    僅かに表面板を上に向ける

これを踏まえてJi Hyung Park氏のフォームを見てみますと、
ギターのカーブと左足は完全に接しています。
とはいえ、セゴビアやブリーム程は上半身を捻ってはいません。
東京国際コンクール本選出場者で足台を使っているプレイヤーは、
体格の異なる女性を含めてこのフォームでした。
(女性の奏者の方が上半身の捻りは大きかったです)

上半身の捻りは「悪」なのか

上半身の捻りが「悪」だとすれば、下記の順番がもっとも「楽」で
正しいフォームとなります。

  1. ギター支持具を使ったフォーム
  2. カルレバーロ奏法のフォーム
  3. 伝統的なフォーム

前回の記事「脱力と力の効率を整理する。(脱力の誤解)」にて、
「単純に楽な姿勢にこだわるのではなく、
 少ない労力で効率良く力を発揮できる姿勢を目指すべき」
と書きました。

上半身の捻りは、
全身の力(腕、肩甲骨、体幹)を効率良くギターに伝えるためには、
少しはあったほうが良い動作と考えています。
正直なところ、カルレバーロ奏法も右足を後ろに引いている時点で
下半身に対する上半身の捻りは発生しています。

ボクシング等の格闘技で右ストレートを打つ際に、
下半身の力や身体の捻りを使わない選手はいないはずです。
スポーツのように大きな動きではありませんが、
ギターにおいてもこのような動きの要素があると
右手から大きな力を効率良く伝えることが出来ます。
(芸術と格闘技は違う、的外れだ、と思う人もいるかもしれませんね)

そもそもの話ですが、腰を捻った状態で固めてしまうことが
腰痛等の怪我に繋がる原因です。
身体が自由に動く状態でなければ、力もギターまで伝わりません。
足台からしたら、批判は良い迷惑だと思います。

今回の結論「伝統的なフォームと身体の捻りを見直す」

大きな力を効率良く生むための捻りの動きを発生しにくいギター支持具は
腰痛等の身体に不調のある方だけが使えば良いのではと思います。
どうせ身体を捻るのなら、足台による足の高低差が有利に働きます。
(追記、これは言い過ぎなので、改めて足台とギター支持具の記事を書きます)

今回の結論は、
「伝統的なフォームやカルレバーロ奏法に見られる若干の捻りは
 クラシックギターの演奏に活用できる」です。
全ての場面でこの動きを使うわけではないですが、
フォルテ以上の音量が必要な場面では
体幹の力を使うために肩甲骨から力を伝える感覚が欲しいです。

足台への批判を読んでいると、
「楽器の演奏しか勉強してこなかった方が身体の使い方について考えるのは
限界があるかもしれない」と思います。
プロの演奏家を見ても、何かしらのスポーツ経験のある奏者や
他分野から学ぶ姿勢がある方がフォームや動作が美しいと感じます。
達人の動作を見て「格好良い、オーラがある」と思うのには理由があります。

今回の記事は以上となります。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。