演奏技術

楽器演奏で怪我(腱鞘炎、ジストニア等)しない練習を考える。

私はクラシックギターを弾いていて大きな怪我をしたことはありません。

ギターを足で固定しようとしたためか、股の関節が痛くなったことはありますが、
演奏中というよりは冬の寒い時期に古傷が痛むような感覚でした。
フォームを見直ししたため、その痛みも今はありません。
(足台も使い続けています)

腱鞘炎やジストニアなど、怪我をした後のことは専門家でないので分かりませんが、
怪我をしないための自分なりの考え方を書きます。

身体の些細な感覚を拾うことが重要

演奏をしていて「ある日突然怪我をした」ということは有り得ないと思います。
何かしらの予兆は確実にある筈です。

もしも本当に「ある日突然怪我をした」のだとしたら、失礼を承知で言いますが
「演奏中の感覚を無視して練習に没頭した」か余程「鈍感」であるかだと思います。

怪我をした人の弾き方を見ていると「細かい感覚を無視して弾いている」ような印象を受けます。
「違和感や弾きにくさ」を演奏中に感じても、意識から払い除けて弾き続けています。

「違和感や弾きにくさ」は上達における重要なフィードバックであり、これを無視していては「練習量の割にあまり上達しない」という結果に繋がります。

私の場合、不必要と思われる細かい感覚に目を向ける時間を意図的に作っています。
例えば、以下の内容です。

  • 弦の太さや表面のザラつき具合の違いを感じる
  • 弦を押し込む量を感じる
  • 発音のしやすさ(3弦が鈍い、1弦は反応が速い)の違いを感じる

これらは、演奏中に必要のない情報ですが、これらに気が付く位に感覚を鋭敏にしておくことで他のよりはっきりした情報を感じやすくなります。

些細なことを無視した方が演奏に没頭しやすいとは思いますが、私は愚直な練習では上手くなりませんでした。
そもそも不器用で肉体的にも恵まれておりませんので、推進力と迫力をもって細かいことは蹴散らす演奏は無理でした。

自分の全ての感覚を動員して上達のための情報(フィードバック)を得て、改善のために何かしらの工夫をするというステップを踏むのが良いと感じています。

このように身体の感覚から情報を拾えるような状態にしておけば、「もう少しで怪我をするよ」と身体が教えてくれた声を聴き逃がすことはないのではないでしょうか。

かなり弾ける人でも「フォームに無理がある」「力が入っている」方は沢山います。
他人が傍から見ているよりも本人の身体はもっとはっきりサインを出している筈です。

演奏において、肉体的負荷はほぼ無い

大げさで語弊がある見出しを付けました。
賛否あると思いますが、何卒最後までお付き合い下さい。

私は「演奏は肉体的な負荷はほとんどない状態で行うべき」と思っています。
例えば、真似したいと思わせる動きをするプロ奏者は、非常に軽く弾いています

努力や根性の思想はどうしても我々の中に残っていると思います。
苦しい、負荷のかかる練習を長時間続ければ上手くなるという考え方です。

技術的に演奏を向上させるには、この「苦しい、負荷のかかる状態」を極限まで減らすように努力する必要があります。
(あくまで私の持論です)

例えば、脱力はある程度やったら終わりではなく、限りなく最小限の力を目指す必要があります。
力を抜けば抜くほど感覚は繊細になり、演奏は簡単になっていきます。
最近は脱力で以下のことを意識しています。

左手

  • 発音の瞬間は押さえに必要な力が大きくなるが、その後は小さな力で済む
  • 左手の移動の際の力を完全にゼロに出来ているか(グリッサンドしない場合)

右手

  • 発音する音をイメージして無駄なく力を伝える
    (ピアノの研究で、何となく音を出す場合に比べ、明確なイメージがあれば必要な力が減ることが分かっています)
  • それぞれの発音の合間で完全な脱力が出来ているか
    (どんなに短い音の間であっても脱力を心掛ける)

私はこれを心掛けた結果、「技術的には余裕がある」と言ったコメントを頂くようになりました。
まだまだ徹底して実践できていませんが、効果はあります。
本当は、本番の緊張下で少しでも負荷がかかると崩壊するので、余裕がある範囲で弾かざるをえないだけなのですが「余力を残して弾いている」ように見えるようです。

現在、私はフォルテを多用してしまう傾向があり、まだどこかで指先の感覚に抵抗感(努力や頑張り)を求めていると思われます。
それにより表現も狭くなっており、力を抜いた弾き方を要求されても即座に綺麗に出来ないため、脱力はまだまだ今後の課題として残っています。

話が逸れましたが、技術面での上達に必要なのは「演奏における身体や脳への負荷をなくしていくこと」だと分かっていれば、怪我に至るような練習の仕方にはならないのではないかと思います。

肉体的な負荷がかかる練習方法を意図的に設ける

散々「演奏ではなるべく負荷をかけない状態を目指す」と書きましたが、
「練習では肉体的な負荷がかかる方法を意図的に組み込む」のが重要と考えています。

肉体的な負荷がかかるケースの一部として以下の例が考えられます。

  1. 「自分の限界に近い速度で弾くとき」
    (以下、単純に速弾きとします)
  2. 「初めての動きをするとき」
  3. 「左手において、力を入れずに開く範囲以上に指を拡張するとき」

どれもコンフォートゾーンを超えた練習です。
これらの内容を含む練習をし過ぎると指を壊す可能性があります。

この練習をする際は、練習時間指の状態(動作、疲労度、筋肉の硬直)に特に注意して行います。
指の感覚に注意を向けるのは故障防止のためだけでなく、真の目的は効率の良い上達のためです。
(上で述べた通り)

この3つの中で最も指を壊す可能性があるのは「速弾きするとき」だと思います。

曲の中で速弾きが求められるとしたら、「ごく短いフレーズ」と「曲そのものもしくはひとつの楽章全体」の長さで登場する場合が考えられます。

陸上競技に例えると以下のようなものだと思います。

  • 「ごく短いフレーズ」→短距離走、50m走や100m走
  • 「曲そのもの若しくはひとつの楽章全体」→長距離走、10,000m走、マラソン

ギターの速弾きの場合、ごく短いフレーズ最大のテンポを伸ばすことで動きに無駄が無くなり、負担も軽くなることでより長く弾けるでしょう。

長距離走と短距離走のどちらの状態を練習するにせよ、理想的な右手の動きと状態で反復する必要があります。

コンフォートゾーンを超え、自分の限界に挑戦している以上、力んでしまったり筋肉が硬直することは当然ありますが、その状態では続けて弾かないことです。
力んだ状態で弾き続けたら、本番でもその状態のまま弾く癖が付きます
感覚を研ぎ澄ませ、僅かであっても手に力みやこわばりを感じたら間を空けて休む時間を作ることが大事です。
(普通の話ですみません)

曲の中の音と音の間にある僅かな時間で休めるようにすることも、練習の一つと思います。

速弾きのような技術的な基礎練習と曲の練習を分けることで、「音楽に集中し過ぎて身体の感覚が疎かになる」状況を防げるのではないでしょうか。
曲を弾く際には、ほとんど手に緊張が生じないまま通して弾ける状態を目指すべきだと思います。

結論として繰り返しますが、肉体的な負荷がかかる練習をする場合は、負荷により筋肉や関節が強張った状態で弾き続ける癖を付けないことです。

 

今回の記事は以上となります。

馬鹿正直に工夫もせず何時間も練習するのは、むしろ不真面目な練習方法であり、怪我を招きます。

今回も記事を書く中で自分の中でクリアになっていったことが沢山ありました。
(正直ここまで私はやれていないのですが、記事を書く中で気付いてしまったことも多いです)

私自身、楽器演奏における腱鞘炎やジストニア等の怪我に精通しているわけではありません。
にも関わらず「ここまでやったらそもそも怪我しようがないだろう」という内容の記事になっていますので、是非ご意見頂きたく存じます。
(私の経験では怪我をした方は「ここまで」やっていませんでした)

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。