演奏技術

演奏における集中力を考える。

当たり前の話でかもしれませんが、集中力はパフォーマンスに直結します。
「元々集中力がある」という方は、意識的に考える必要のない話題かもしれません。

先生に習ったとしても集中力は教わることが難しいように思います。

能力 × 緊張による係数 = パフォーマンス

というのはよく聞く話と思いますが、実際はそこに集中力が隠れているように思います。
(緊張と集中力の係数は影響を及ぼし合います)

能力 × 緊張による係数 × 集中力による係数 = パフォーマンス

このパフォーマンスは、本番と練習の両方での成果を指しています。

何故この話を記事にしたかというと、自分の中で多少は本番の緊張が克服でき、それでもミスの少ない演奏が出来ないことが分かってしまったからです。

これまでは「緊張のせい」でミスが多かったと言い訳していれば、心の平穏は保てていました(笑)

ところが以下の状態にふと気がつくわけです。
この要因は集中力不足にあると考えています。

  1.  練習と本番があまり変わらなくなり、そもそも練習でもミスをしていたことに気がつく。
    (練習の成果が上がっていない)
  2. 楽譜を見て練習する方がミスが少ない。
    (楽譜に集中した方が上手くいく)

演奏における集中力とは

演奏において「右手と左手、出ている音だけに注意を向けている状態」を良い集中とは呼びません。
それは、余裕がなくなり一部の感覚がシャットアウトされているだけです。
本来の集中とは、身体の感覚(腕はもちろん、首、体幹、呼吸、足、お尻)と音に対して幅広く注意を払っている状態にあります。

私は友人との会話では、前者の集中をイノシシ状態の演奏と呼んでいます。
この状態であっても、ある程度の演奏が出来てしまうのが楽器の厄介なところだと思います。

イノシシ状態のメリット・デメリット

この状態におけるメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

  1. 集中対象が少ないので、手っ取り早く集中しやすい
  2. 迫力があるように一見聴こえる

デメリット

  1. 技術的に限界がある
    感覚をシャットアウトしているので、上達の要素(身体からのサイン)を見逃しているわけです。
    指先だけに集中して腕や肩の力みを放置した状態ですと、体幹や腕の重みは使えません。
  2. 身体を壊す可能性がある
    同上です。
  3. 音と指の感覚が正しくリンクされていない場合がある
    (音ではなく、指の動きに快楽を得ている)

イノシシ状態を脱出すればそれで良いのか

私は大学生のときは完全にイノシシ状態の演奏をしていました。
身体能力に任せた客観性に欠けた演奏でした。

社会人になり、大学生の頃と比べ練習の仕方も工夫し、身体の様々な感覚に注意を払うようになりました。

しかし、力みの有無やフォームの完成度の違いはあるにせよ「当時の演奏を全ての面で上回っているか」と考えるとそうでないように思います。
いくら人から上手くなったと言われようと、自分ではそれがあまり納得出来ないわけです。
(ミスの数や迫力といった項目で比較すると、大学生の頃の自分に負けるかもしれない)
これは「年齢を重ねて熟成した」という言葉で片付けていいものではないと思います。

私は趣味でテニスをしていますが、必ずしもフォームが綺麗な方が上手なわけではありません。
打つボールが素晴らしい人が上手いのです。
本を沢山読んで知識を付けたら、それで偉くなれるわけではありません。
カルレバーロ奏法を使っていなくても、セゴビアやブリームは偉大な存在です。
フォームが汚かろうが、力んでいようが、良い演奏は良い演奏なのです。

今の自分に何が足りないか、考えました。

集中力が足りない!

自分に足りないものを考えた結果、集中力が足りないことに気が付きました。

大学生だった当時も演奏中に他のことが頭を過ることは多かったです。
それでも注意対象が少ないこと(感覚の遮断)によって何とか集中を保っていました。

演奏において観察すべき対象が増えたことで集中力が散りやすくなったことは言えるかもしれません。

しかし「そもそもの集中力が無かったこと、鍛えてこなかったこと」が根本的に演奏が向上しない大きな原因だと考えます。

「ごく一部に集中して周りが見えなくなる状態」へ今更戻ることとは意味が違います。

社会人になり集中力は恐らく減った

現代病であり、誰しもに当てはまるシチュエーションなのですが「複数の人が同じ部屋にこもってデスクワークをする」というのも、集中力の低下の原因として確実にあると思います。

要はマルチタスクの状態になってしまうわけで、下記の出来事がデスクワークでは起こります。
集中など出来るわけがなく、効率が悪いのは当然のことです。
真の静寂を手にするには、仕事をやめるしかありません(笑)

  1. 電話がかかってくる。
  2. 上司に声をかけられ、新しい仕事が振られる。
  3. 近くの席では誰かが電話をしている。
  4. 急な打ち合わせが入る。
  5. 近くを同僚が頻繁に通る。

とはいえ、私を含め多くの方は仕事をやめることは出来ませんので、集中力を鍛える(注意対象をコントロール)することが大事ではないかと思います。

集中力を鍛えるためには

集中力を鍛えるためには、普段から何事も集中して行う訓練をすることが重要だと思います。
メインの行動をしているときに、他のことが頭をよぎるのは至極当然のことです。
逸れた注意を戻す練習を普段からしておく必要があります。

集中力を鍛えるために、一般的に良いと言われるのは以下の方法です。

瞑想

「呼吸に集中する」という瞑想は随分前から知っていて「特殊な状態になれる」と思っていたのですが、私はこれが全く出来ませんでした。

瞑想に関する様々な情報に触れ、最もしっくり来たのが「他のことを考えないことではなく、
逸れた注意を戻すこと」でした。

演奏の際は「様々な情報に注意を向ける」わけですから「呼吸に注意を向ける」方法の瞑想にこだわらなくても良いと思います。

私の場合、仕事で頭の中がごちゃごちゃになったときに瞑想をすると凄くスッキリします。
空いている会議室に入って、椅子に座った状態で姿勢を正し、5~10分目を瞑ります。
(職場放棄)
その時聴こえてくる「隣の会議室からの声やドアが開く音、廊下を歩く足音」は情報としてでなく、その時聴こえてくる単なる音として何の意味も持たないよう処理します。
音と並行して身体の感覚に注意を向けます。
「身体の片方に体重が寄っている、どこかに力が入っている等」の状態であれば、それを解消していきます。
その結果、何となくボーッとした感覚になります。
脳はボーッとしているときの方が多くの情報を処理しています。

この方法で、私は瞑想の感覚を何となく掴むことが出来ました。
元々注意が逸れやすい人程、瞑想を続けることによる効果があります。

行動そのものを瞑想化する

逸れた注意を戻すことを瞑想と呼ぶなら、演奏を含めた行動全てを瞑想にしてしまうことが可能です。
演奏中に未来や過去のこと、例えば「入賞したときのことや終わった後の評判」を考えることがあっても、現在に注意を戻すようにしたほうが良いわけです。
別のことを思いつくのは人間の本能なので仕方がありません。

「今起きていること」に集中できることは、上達の面でも非常に重要だと思います。
「空調が効きすぎている、照明が眩しい」も今起きていることに変わりはないと思いますが最優先で注意を向ける対象ではないので、音楽に関係する要素に注意を戻したほうが良いでしょう。

今回の記事は以上となります。

「集中するには集中するしか無い」という結論になっているかもしれませんが、より良い演奏をするためには避けては通れない課題です。

「スマホをいじりながら歯磨きするのをやめる」等の簡単なことから始めて見るのも良いかもしれません。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。