楽器のこと

ルイジ・ロカットを弾きました。

クロサワ楽器様にて、イタリアの製作家「ルイジ・ロカット」のギターを試奏いたしました。

福田進一さんも所有している製作家で、頻繁にギタリストの方々から良い楽器だというお話を伺っていたので、ずっと気になっておりました。
楽器店に並んだとしても、すぐに売れてしまうので、これまで一度もお目にかかったことがありませんでした。

ルイジ・ロカットは1953年イタリーのチューリンで生まれ、アレッサンドリアの音楽学校クラシックギター科を卒業した。 その後数年はコンサートギタリスト、そし てギターの教授として活躍した。1970年代にはオスカー・ギリアのマスターコースで習ったこともある。

ロカットは子供の頃から木工を手がけることが好きで、16歳の時に初めてギターを製作し、その後もギターの製作を続け、プロの製作家になった。

1984年にホセ・ラミレスIII世の許しを得て、ラミレスギターの修理、製作を短期間であったがさせてもらったのが、大きな勉強となった。

ギターを作り始めた頃は、伝統的な1800年代後半のスペインギター製作家を勉強したり、イタリーの伝統的なギター、バイオリンの構造を研究した。

今日ではスペインの伝統的なギターの構造、音を研究しながら、有名なルイス・パノルモ、トーレスなどの復元ギター、オリジナルギターを製作している。音では、スペインのエンリケ・ガルシアを愛し、その音を目指している。

ロカットのギターを使用しているコンサートギタリストは多いが、ステファーノ・グロンドーナ、フレデリック・ジガンテ、最近では福田進一が使用しており、2006年冬のフランス、パリの演奏会でロカットギターを使用した。

荒井貿易hpより

こちら、フローリアンがロカットを弾いている動画がありました。
しなやかで素晴らしい音です!

 

今回、ようやく機会に恵まれ試奏出来ましたので、感想を書きます。

イタリアのクラシックギターとは

イタリアのクラシックギターは1990年代から大きなムーブメントになっているように思います。
19501980年代までは、これといった製作家がいなかったように思いますが、近年ではルイジ・ロカット、ガブリエル・ロディ、アンドレア・タッキ、エンリコ・ボッテーリ、ロレンツォ・フリニャーニ、パオロ・コリアーニ、ルカ・ワルドナー等の素晴らしい製作家が揃っています。
私はいまのところフリニャーニだけ弾いたことがありません。

19世紀ギターにおいては、ジェンナロ・ファブリカトーレのような名工もいましたし、古典、ロマン派の時代においてはイタリアはギターにおいて主流の国であったと思います。
ベートーベンのオーケストラでチェロを弾いたこともある、作曲家マウロ・ジュリアーニもイタリア人ですね。

 モダンギターがスペインの製作家アントニオ・デ・トーレスにより作られ、一度は主流から離れたように思いますが、オペラや職人の国であるイタリアから沢山の素晴らしい楽器が作られるのは自然なことと思います。

イタリアの楽器の特徴は、バイオリンを思わせる気品のある良く歌う高音と、筋肉質でふくよかな低音が特徴と思います。

ラティスブレーシング、ダブルトップは伝統的な音色と違った方法で音量を獲得していますが、イタリアの楽器はオーソドックスな構造でありながらとても音量があります。
倍音の多い、かなり明るい音でありながら耳障りには聴こえません。
実際の音量も大きいのですが、大きく聞こえやすい音質も相まって堂々とした演奏に貢献します。

 大雑把に特徴を書きましたが、製作家による個性が大きくことなるのも特色の一つかもしれません。
きっとイタリアの北方、南方でも違うのでしょう。

 外観について

ヘッド

この楽器のコピー元であるエンリケ・ガルシア(スペイン)を思わせるヘッドの形です。
トーレス・ハウザー系とはまた違ったバランスになっているところがチャーミングです。

糸巻きはアレッシーです。
良く似合っていますね。
このクラスの糸巻きは機能的には文句の付け所がないので、好みの世界と思います。

ボディ、表面板

オリジナルのエンリケ・ガルシアのシェイプと比べて洗練されているように見えます。
スプルースの種類は不明とのことです。

とても綺麗なロゼッタです。
フランス、イタリア製のギターはすごく凝って作っているように思います。
最も綺麗なものの一つではないでしょうか。

裏板

柾目のハカランダです。
最近お目にかかることは少なくなりましたが、あるところにはあるのだと思います。

ネック、ヒール周り

標準よりごく僅か薄い印象で、大変弾きやすかったです。
ヒールが丸く、高さが低くなっており、ハイポジションのプレイアビリティを考えて作られております。

音について

ルイジ・ロカットはイタリア的な要素を感じさせながらも、ギターらしさを大事にした楽器でした。
上記に書いたイタリア系ギターの特徴はある面での癖でもあり、音が伸びすぎてしまったり、バランスの悪さにつながる一面があります。
ロカットは本人がギター科の教授であったこともあり、コンサートホールで武器となる、あらゆる音楽に対応できるオールマイティな楽器となっています。

程よく締まったしなやかな音で、弾き初めは明るさの割に鳴りがやや渋かったのですが、しばらく弾くと音が抜けてきてバランスが良い本来の状態となりました。
始めから鳴りすぎると、軽く鳴りすぎたり、音が緩くなるので、丁度良い締りと思います。
あまりに勝手に鳴ってしまう楽器は、意図した声部のバランスで弾けないことがあります。

高音は、ギターそのものが持つ木質的な良さを活かして、耳に心地良い明るくシルキーな音色でした。
また、音の抜け、通りを感じやすい音質でした。音量が大きいというよりは良く伸びて遠くまで届く音です。
太すぎる音ではなく、しっかりと引き締まっています。

アントニオ・マリンのようなグラナダ系とは、音の伸びと明るさの面では共通ですが、音質がよりきめ細かい印象です。

低音は軽めの暖かみのある音質で高音と良くバランスが取れておりました。
音の重心はスペインのオーソドックスな楽器よりは軽め、グラナダ系よりも少し軽い位と思います。
同じ軽い音質の低音でも、フレタ等と違いレスポンスが良く、適度に広がりを持った鳴り方です。

こちら、ルイジ・ロカットの息子のピエトロ・ロカットによる演奏です。
もちろん楽器はルイジ・ロカットの手によるもので、特別素晴らしい出来だと聞いたことがあります。

私も広いステージ向けの楽器が欲しいと思っておりましたが、私個人のタッチの相性の問題で、どうしてもラティスブレーシングやダブルトップの楽器は弾けません。
ですので、非常に悩ませてくれる楽器でした。

他のイタリア系楽器と比べると繊細な表現が可能で、演奏会場の大きさ、楽曲を問わず、対応できるギターと思います。
伝統的な楽器でコンクール等の広い会場でも活躍したい、という方には大変おすすめです。

最後までご覧頂き、誠に有難うございました。